偉大な皇帝の生まれ変わり
これは私が作っているもう一つの物語です。皆さんが楽しんでくれることを願っています。
アレクサンドロスは、死の床にあった。
病に侵され、意識が遠のいていく中、彼の脳裏に浮かんだのは、忘れがたき過去の記憶だった。
母は、裏切り者アーバトスの謀略により命を落とした。
父・フィリッポス二世はその報復として、アーバトスを鉄でできた玉座に縛りつけ、生きたまま焼き殺した。
アレクサンドロスには二人の兄がいた。ヘラフィニオスとアキマネス。
二人は知恵にも力にも優れ、弟である彼を常に圧倒していた。
このままでは、自分は忘れ去られた王子に過ぎなくなる。
そう悟ったアレクサンドロスは、若き日の戦に乗じて、己の手で兄たちを闇に葬った。
誰もその真実を知らず、人々は兄たちが戦場で名誉の死を遂げたと信じていた。
王位を手にするため、彼の手は血に染まった。
――そしてその時が来た。
最後の呼吸を終えた瞬間、意識は暗闇に沈んだ。
だが、次の瞬間――彼は目を覚ました。
見知らぬ空間。
彼の姿は変わっていた。白、赤、青の奇妙な鎧を身にまとっているようだった。彼は気づいていなかったが、メカロボットアニメをモチーフにしたおもちゃの体に転生していたのだ。
身体は動かず、視界には奇妙な物体が立ち並んでいる。
その中の一つ、道化師のような姿をした玩具が、彼に声をかけた。
「おい、どうしたんだい?」
アレクサンドロスは戸惑いながら口を開いた。
「……ここはどこだ?」
その瞬間、彼の脳裏に、数分前まで死に瀕していた自分の姿がよみがえった。
「ここは……冥界ハーデースか?」
道化師の玩具は、くすくすと笑いながら言った。
「ハーデース? なんだいそれ。ここは“トモちゃん”の部屋だよ」
アレクサンドロスは、「トモちゃん」という名を、異国の魔術師か神の名前だと誤解した。
この奇妙な部屋に彼を閉じ込めた張本人に違いない――そう思ったのだった。
ほどなくして、部屋の扉が開き、一人の少年が入ってきた。
彼こそが、トモであった。
トモはランドセルを置くと、テレビをつけて、歴史ドキュメンタリーを見始めた。
アレクサンドロスは、それを「魔法の鏡」か「賢者の知恵が詰まった神託装置」と見なした。
しかしそれ以上に、彼の目は、映像に吸い込まれるように釘付けになった。
そこには、自分の死後に続く人類の歴史が描かれていた。
古代ギリシャ、ローマ帝国、ビザンティン帝国、カロリング帝国――そして近代。
さらに、彼と肩を並べるほどの英雄たちの偉業が語られていた。
アレクサンドロスは悟った。
自分は未来の世界に転生したのだ、と。
この地が「日本」と呼ばれる国であることも知った。
やがてトモが眠りに落ちると、道化師の玩具――名をワラウキという――が再び語りかけた。
「他の仲間たちに会いに行こう」
アレクサンドロスは静かに頷き、ワラウキと共に部屋を抜け出した。
「“ニホン”とは、どういう意味だ?」
そう問うアレクサンドロスに、ワラウキは答えた。
「“日の出ずる国”って意味さ」
アレクサンドロスは天を見上げ、微笑んだ。
「ならば、私はこの国を“再び昇る太陽の国”と呼ぼう」
神々は、自分にもう一度世界を征服する機会を与えたのだ――そう確信していた。
彼の新たなる征服は、ここから始まる。
皆さんがこの最初のエピソードを楽しんでいただければ幸いです。次のエピソードをすぐにアップロードします。