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第九話 3

「おはよう」

 僕が時雄に声をかけると、時雄は、まるで恐いものでも見たかのように目を見開き驚いた。


「な、何故、蘇生介がここにいるんだ!?」

「何故って、お前、本当はその理由を知ってるんだろう?」

「……」

「この間、美豊がお前に会いに行ったそうじゃないか。何故、会いに行ったんだ? 何の話をしたんだ?」

「……」

「おい、答えろ! 美豊と隼人がいなくなったんだよっ!」

「ええっ!? 本当にいなくなったのか!」

「本当にいなくなったって、やっぱりお前、知ってるんじゃないか!」

「分かった、分かった。お前には絶対喋らないと彼女と約束してたんだよ。でも、いなくなったんだったら、教えてやってもいいか」

 時雄は、そう言うと、二週間前、美豊と自分が何を話していたのか、語り始めた。




「時雄さん、私、イギリスに行きたいんです」

「え?」

「カーナヴォン卿の子孫に会いに行きたいんです」

「会ってどうするの?」

「貴族だから、今もお金持ちなんでしょうし、ハワード・カーターの子孫である先生の奥さんとお子さんのことを調べて欲しいと頼みたいんです。先生は、今でも苦しんでいるんです。遺体が発見されていないから、今もどこかで生きているんじゃないかと思ってると思う。だから、事情を話して、カーナヴォン卿に協力して貰いたいんです」

「でも、二十年も前のことだから、難しいんじゃないかな」

「そうかもしれないけれど、どうしても協力して欲しいと言うつもりです。だって、私だってカーナヴォンの一員なんですから」

「そうだね……」

「時雄さんしか頼める人がいないんです! お願いです! 力を貸してください!」

「わ、分かった。ちょっと待って。うちの父親の伝を辿ってみるから」


 時雄は、まず父親に電話し、父親の伝を駆使して、現在のカーナヴォン家の当主の居場所をつきとめた。


「美豊ちゃん! 分かったよ! カーナヴォン家の当主は、今、イギリスじゃなくて、エジプトのルクソールにいるそうだ。今のカーナヴォン卿も資産家らしいけれど、さっきも言ったように、イヴリンのお兄さんはカーターとの結婚を反対してたんだよ。だから、カーナヴォン卿に会えたとしても協力してくれるかどうか分からないよ」

「でも、私はカーナヴォン卿を説得するつもりです」

「そうか……」

「きっと、大丈夫ですよ。カルトゥーシュがあるし、いざとなったら、DNA鑑定してくれって言おうと思ってますから」




 時雄がそこまで話すと、僕は、「それで、美豊は隼人を連れて、エジプトに行ったのか……」と呟いた。

「おそらく、そうだろうね。でも、飛行機のチケットの手配とかどうやったんだろうね?」

「アイツ、ああ見えて、本当は賢いんだよ。携帯を持たせてやってから、なんでも一人でできるようになったんだ」

「そうなのか……。だったら、心配ないな」

「美豊ちゃんて、本当に良い子なんだね。兄貴にとって、女神みたいなもんじゃない」

 荘子が言った。

「本当にそうだな」

 時雄がしみじみとしながらそう言った。



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