第七話 11
昨夜飲んだテキーラに睡眠薬が入っていたのだろうか、目が覚めたのは、おそらく次の日の昼前ぐらいだったのだろうと思う。目を開けても何も見えず真っ暗だった。そうだった、僕は猛との勝負に負け、木棺の中に入って寝たのだった。
しかし、さっきから、木棺全体が妙にゆらゆら揺れているのが不思議だった。僕は、木棺から出るために、中から蓋を押し上げようと手を伸ばしたが、びくともしなかった。しばらくの間、格闘していたが、やはり蓋は開かない。耳を澄ませてみると、水の音もしている。時折、石にぶつかるような音もして、その度に木棺はガタンと揺れた。もしかしたら、これは緊急を要するような事態に陥っているのかもしれない。でも、考えてみたら、僕も豊子や隼と同じように川で死ねるのだったら、それでもいいかと思い、僕は悟ったようにゆっくりと目を閉じた。
けれども、次の瞬間、わぁわぁと騒ぐ大勢の人達の声がし始め、木棺は川底を引きずられてゴロゴロと大きな音を立てた。どうやら、川から引き上げられているようだった。そして、いきなりパッと視界が明るくなり、眩しさに目を細めた。
「先生っ! 生きてますかっ!」
泣き叫ぶ美豊の顔がすぐそこにあった。