表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/107

第七話 7

「先生、さっきの電話、誰からの電話だったんですか?」

 いつも、僕のプライベートには首を突っ込んでこない美豊が、珍しく僕に訊ねた。

「いや、ちょっと……」

「先生、隠したってダメですよ! 荘子さんが言ってた黒木猛という人なんじゃないですか?」

「えっ」

「ほら、やっぱり! 先生! 私、教養のないバカだけど、勘は鋭いんですよ。だから、バカにしないで貰えますか?」

「別にバカになんかしてないよ」

「どうして断らなかったんですか? 土曜日に行くって言ってましたよね?」

「そ、それは、そのぉ……」

「理由を言わないんだったら、今から荘子さんに電話しますよっ!」

「分かった、分かった、それだけは勘弁してくれ。実は、ツタンカーメンに関するものを手に入れたそうなんだ。それを別荘に見に来ないかと誘われたんだよ」

「ええっ?」

「君には詳しく話したことがなかったが、黒木猛は亡くなった豊子の兄なんだ。ツタンカーメンは、豊子が一番好きなファラオだった。彼女は、生前、熱心に研究してたんだよ。それに、黒木はきっと、ツタンカーメンに関する大発見をしたに違いないんだ」

「それって、もしかして凄いことなんじゃないですか?」

「うん、おそらくそうだ。だから、俺もそれを見届けたいというのはある」

「でも、それが罠だったりして」

「そうかもしれないけれど、一目見られたら、後はどうなってもかまわないと思っている」

「そんなのダメに決まってるじゃないですか! 先生に何かあったら、私はこの先どうやって暮らして行けばいいんですか! 隼人と二人で野宿しろってことですか!」

「そっちか!」

「違うに決まってるでしょっ! 荘子さんに私が殺されるってことですっ!」

「それはあり得るかも……」

「そうでしょ? だから、そうならないために、私と隼人もついていったらダメですか?」

「はぁ?」

「だって、隼人も見たいだろうし、先生も心配だし……。流石に三人だったら、黒木さんも手の出しようがないと思うんですよ」

「だめだ! 俺一人で行く!」

「先生は、そういうところが頑固ですよね? いいんですか? 今から荘子さんに電話しますよ?」

「分かったよ……、降参だ……。黒木は、誰を連れて来てもいいと言ってたし……」

「だったら、何も問題ないじゃないですか」

「まぁ、そうだな……」


 僕がそう言うと、美豊の顔がパッと明るくなり、階段の下から二階にいる隼人に向かって、「隼人ーっ! お泊りのお出かけをするから用意してー!」と大声で声をかけた。

 土曜日まで、後三日もあるのに、美豊は本当に変わったヤツだなと思った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ