第七話 4
気を取り直して、三人でテーブルにつき、美豊はゆっくりと握った手を広げた。そこには、美豊が言ったように、金色のカルトゥーシュがあった。
「これ、昔、パパが私にくれたんです。元々、本当のお祖母さんが身に付けていたもので、これしかお祖母さんのものがないから、大事にしなさいと言ってました。でも、パパがずっと身に付けてたから、やっぱりこれもパパの形見だと思います」
「そうか……」
僕は、差し出されたカルトゥーシュを手に取り、良く観察した。そこには「George」とヒエログリフで書かれていた。
「君のお祖父さんの名前は、ジョージというのか」
「へぇ、ジョージって書いてるんですね」
そして、カルトゥーシュを裏返したら、「5th Earl of Carnarvon」とアルファベットで書かれていた。
「え? 第五代カーナヴォン卿? カーナヴォン卿って、まさか……」
「どうかしたんですか?」
「どうして君がこれを持っているんだ!?」
「どうしてって、さっき説明したじゃないですか。お祖母さんのものだったものをパパが私にくれたんです」
「じゃあ、君のお祖母さんがカーナヴォン卿から貰ったものなのか……」
「ねぇ、先生、カーナヴォン卿って、ハワード・カーターの発掘を応援してた人だよね? 本にそう書いてあったよ」
「そうだよ、隼人! もしかしたら、隼人の曽お祖父さんは、カーナヴォン卿かもしれない」
「ええっ! ほんとにっ?」
「うん……」
「それってそんなに凄いことなの?」
「当たり前じゃないか! カーナヴォン卿は世界的にも有名な人なんだよ! ハワード・カーターとカーナヴォン卿の出会いは、特別なものであったかもしれないけれど、エジプト考古学を通じているから彼らが出会ったのは、まぁ、分かるよ。だけど、俺達は、普通なら絶対に知り合わないだろうかけ離れた環境に生まれて、たまたま東京で巡り会ってるのに、その俺達の先祖が両方ともイギリス人で、しかも近い関係にあっただなんて、こんな偶然は考えられない! 普通じゃあり得ないことなんだよ! とにかく、君達のお祖父さんと俺の祖父さんは親しい顔見知りだったってことだ!」
僕と隼人が大騒ぎしている横で、美豊だけが、訳が分からないという風に、ポカンと口を開けていた。