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第六話 7

 授業とゼミを終え、帰宅すると、また美豊と隼人が、バカ猫と家で格闘していた。バカ猫は、味を占めたのか、美豊が玄関ドアを開けたと同時に、家の中に侵入してきたらしい。しかし、フランス窓は既に修理した後だったので、バカ猫は逃げ場を失い、虫取り網を持って追いかける隼人によって、リビングの隅に追いやられていた。


 しかし、運悪く、ちょうどそこで玄関の呼び鈴が鳴り、同時に、ずかずかと荘子と時雄と、あろうことかアレックスまでもが侵入して来た。そう言えば、隼人が喜ぶだろうから、アレックスを連れて行くと昨日の電話で荘子が僕に言ったのを思い出した。当然のごとく、リビングはバカ猫とそれを追いかけるアレックスのおかげでぐちゃぐちゃになり、そこから逃げようと時雄が不用意にも隣の書斎のドアを開けたので、その隙にバカ猫とアレックスが入り込んで、またもや書斎が悲惨な状況に陥った。


 どうせこの間の騒動で色んなものが傷だらけになっているし、もうどうにでもなれと思い、しばらくの間、僕は書斎のドアを締め切ったのだが、少し経ってドアを開けて覗いてみると、バカ猫がまた魚のミイラを咥えて本棚の上でくつろいでいた。その様子を見て、時雄はびっくり仰天し、荘子は爆笑しながら、「だから、このゴミ部屋をなんとかしろってことじゃないの?」と言った。


「ゴミじゃないって言ってるだろ!」

「でも、持って死ねないからね。兄貴にとっては宝物でも、誰もこんな物、欲しがらないわ。兄貴が死んだら、全部捨ててお終い」

「お前、本当に血も涙もないヤツだな……」

「事実を言ったまでです」

「でも、おばちゃん、僕が貰うんだよ」

「え?」

 隼人が急に口を挟んだので、荘子は驚いた。

「先生が僕にくれるって言ったんだよ」

「そうなの?」

「いや、隼人はエジプト文明に興味があるらしくて、この間もヒエログリフを教えてたんだよ。この子は、頭が良い。物覚えが良くてびっくりする」

「えーっ、そうなの! 良かったじゃないの!」

「まぁ、そうだな」

「だったら、おばちゃん、安心だわ」

 荘子は、そう言いながら隼人に微笑んだ。


 荘子と隼人とそんな会話をしていたら、書斎がまた騒がしくなったので、ドアを開けて覗いてみたら、美豊が焼いた干物でバカ猫をおびき寄せ、鈴の付いた首輪とリードを付けていた。僕は、呆れ果てるやら感心するやらで、流石、新人類はやることが違うと心の底から思った。



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