第六話 6
時雄は、研究室で作次郎教授とリモートで話をしていた。
「時雄! 大変なことになった! 発掘費用が全然足りない。クラウドファンディングで募ってくれ! 黒木猛がJICAに手を回したらしい。支援を打ち切ると言ってきた」
「ほんとに? まさか、そこまでするなんて!」
「黒木猛は、本気でこっちを潰そうとしているのかもな」
「そうかもしれない……」
「おい、時雄、私の代わりにテレビで宣伝してくれないか」
「無理に決まってるだろ。俺の専門は、考古学じゃないんだから」
「私に出演依頼が来ているが、どうしても都合がつかないんだ。緑川に頼みたいが、無理だろうな」
「無理だろうね」
「困ったもんだ」
「全く」
「しかし、このままアイツを放っていくわけに行かないんだよ。今までアイツのおかげでどれだけ発掘できたと思ってるんだ! ナスカの地上絵が空からしか確認できなかったように、人工衛星をもっと活用したほうが良いと言ったのは、アイツだったんだからな。電磁波地中レーダーやGPSもそうだし、発掘場所の選定にもアイツの意見を聞いて、何度も成功してきたんだ」
「そうだね、全くアイツは宝の持ち腐れだと思うよ。とにかく、ちょうど今日の夜、荘子とアイツの家に行って、黒木猛のことを話そうと思っていたところだから、テレビのことも話しておくよ。でも、あんまり期待しないでくれ」
「そうか! 期待しないで待ってるぞ!」
「だからぁ! 待たなくていいから!」
「分かった、分かった」
八十歳になっても、相変わらず元気な父親に閉口しながらも、時雄は笑いながら返事をしていた。