第六話 1
僕は、美豊と隼人と一緒に、朝食を食べながら話していた。今日も美豊は、朝食作りに失敗し、黒焦げの食パンと黒焦げの目玉焼きを作った。自分の寿命は、美豊のせいで縮むだろうな、でも、それならそれでいいかと思った。
「そうか、それでお前は一体何をしていたんだ? 昨日も歌舞伎町をウロウロしていただろう?」
「きもっ。何故知ってるんですかっ? もしかして私のことをつけてたんですかっ?」
「つけたんじゃない。俺がそんなに暇だと思ってるのか! GPSで確認しただけだ!」
「GPSってなに?」
「それは、そのぉ……」
僕が言い淀んでいると、美豊は携帯を駆使してGPSが何かを調べ、僕を睨みつけた。この間まで、携帯も持っていない原始人みたいな生活をしていたのに、美豊はあっという間に携帯の操作を習得し、僕は置いてけぼりを食っているような有様になっていた。若者はやっぱり凄いと感心せざるを得なかった。
「まさか、家政婦を辞めようと思ってるんじゃないだろうな」
「違いますっ!」
「じゃあ、どうして歌舞伎町をウロウロしていたんだ?」
「人を捜していたんです」
「誰を捜していたんだ?」
「ママです」
「ママ?」
「私のお母さんです」
「えっ? どうしてお前の母親が東京にいるんだ?」
「私の母は、歌舞伎町生まれなんです!」
「ええっ! そうなのか! それで、長崎から出て来たのか……」
「そうです。でも、母の実家があったところは、今はパチンコ屋になっていて、誰も住んでいませんでした」
「前は何だったんだ?」
「スナックだったらしいです」
「そうか……」
それから、美豊は、自分の母と父がどうやって知り合い、どんな暮らしを長崎でしていたのか語り始めた。