表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/107

第五話 4

 荘子と時雄は、愛犬のアレックスを連れて、東京湾に面する海浜公園にオートキャンプに来ていた。ここは、学生時代から荘子が生前の豊子とよく釣りに訪れたところだった。他にも神奈川や千葉にも足をのばしたものだが、今日はアレックスがいるので、ドッグランがあって自宅から近いということで、この公園に落ち着いたのだった。バーベキューコンロには、あらかじめ用意してきた肉や野菜の他に、先程、釣り場で連れたメジナやクロダイが並べられ、焼けるのを待ちかねたアレックスが、コンロの周りをウロウロしていた。そんなアレックスを横目に、荘子と時雄は、話し込んでいた。


「この間、ハンバーガーを持って、美豊ちゃんに会いに行ったって言ったでしょ」

「うん」

「美豊ちゃん、十五歳で隼人君を産んで、今、二十歳なんだって。詩織より年下だって聞いて、びっくりしたわ」

「へぇー! 十五歳で子供を産んだのか! 詩織とは大違いだな」

「そうだね。詩織はいつになったら大人になるのやら。でも、一人暮らしを始めてから、だいぶ逞しくなったとは思うけど」

「可愛い子には、旅をさせなきゃいけないんだな」

「そうね。美豊ちゃん、兄貴が位牌の前で暗い顔をしてるって心配してくれてた」

「そうなんだ……」


「船の事故のことも話してあげたの。兄は、自分だけ生き残ってしまって、自分を責めてると思うと言ったら、私もそう思いますと美豊ちゃんが言ってたよ」

「そうか……」

「ねぇ、この間パパが言ってたじゃない? 猛さんに嫌がらせされてるって。どんな嫌がらせをされてるの?」

「親父がエジプト考古庁に発掘申請しているギザ周辺に、黒木が介入して邪魔しようとしてるんだよ。この間も、親父の発掘現場に偵察に来たらしくて、リモートで蘇生介と親父が話してたら、 『こんな腑抜けには何を頼んでも仕方がない、いい加減見限ったらどうですか?』と言い捨てて帰って行ったよ」

「また横取りしようとしてるの!? もう諦めたのかと思ってたのに。でも、お義父さんの邪魔をしてるってことは、すなわち兄貴の邪魔をしてるってことになるのよね」

「まぁ、そうだろうね」

「猛さんの豊ちゃんに対する執着心は、今も全然衰えてないってこと? それにしても、あの時は、本当にぞっとしたわ。まるで、ホラー映画みたいだったもの」

「そうだったな。あれは酷かったな」


 荘子と時雄は、そんな話をしながら、二十二年前に起こった事件を思い出していた。

 そして、時雄は、自分に近寄って尻尾を振っているアレックスに向かって、「お前のお母さんのケムが大活躍したんだよな」と言い、アレックスの頭を撫でた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ