第五話 2
美豊は、逸る気持ちを抑えながら、コンビニに行き、中に入って、「オーナーにお訊きしたいことがあるので、会わせていただけますか?」と店員に訴えた。しばらく経って、出て来たオーナーは、なんだか見たことがあるような男性だった。よく考えたら、ここは、東京に着いて、初めて面接を受けたコンビニだった。オーナーは美豊の顔を見るなり、「あれ? また来たの? もしかして住所が決まった?」と言った。
「あ、はい! 決まったんです!」
「そうなんだ! 良かったね! じゃあ、履歴書を見せて!」
「あ、今日は違うんです。話せば長いから話しませんけど、色々あって仕事はもう決まったんです。それで、今日は、あそこのパチンコ屋に昔住んでた人のことを訊きに来たんです。ちなみにオーナーさんは、何歳ですか?」
「はぁ、僕?」
「ええ」
「三十一歳だよ」
「二十年前は?」
「十一歳」
「どう考えても子供ですよね?」
「そうだね」
「あそこの交番のお巡りさんは、ここのコンビニのオーナーはお年寄りだから、何か知ってるかもしれないよって言ってたんですよ」
「ああ、うちの祖父ちゃんのことを言ってるのかな」
「じゃあ、お祖父さんに会わせてください」
「ごめん、祖父ちゃんね、認知症になって、今、施設に入ってるんだよ」
「えーっ、そうなんですか……」
「親父もお袋ももう亡くなったし、ごめん、役に立てないや」
「そうですか……。残念です……」
「でも、良かったね。ちゃんと仕事に就けたんだね。これでも心配してたんだからね、アンタのこと」
「ありがとうございます。おかげさまで、住むところもあるし、働けてます」
「まぁ、また、何かあったら来なよ。東京に知ってる人はいないんでしょ? これも何かの縁だから」
「はい! ありがとうございます!」
何だか、気分的には明るくなったが、結局何も分からなかった。美豊は、がっかりしながら、小早川愛の会社へ向かった。