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第三話 10
美豊は、公衆電話から、小早川愛の携帯に電話を架けていた。
「はい、小早川です」
「お姉さん?」
「え?」
「一条美豊です」
「み、美豊ちゃん、どうしたの? こんな夜更けに? 何かあったの?」
「ちょっと事情があって、今、先生の家を出て来たんです」
「ええっ! 出て来たって夜じゃないの! 隼人君も一緒なの?」
「はい。それでお願いがあるんです。お姉さんしか頼める人がいないんです。今晩だけ、隼人を預かって貰えませんか? 明日は大丈夫だと思いますから」
「美豊ちゃんはどうするの?」
「私は大丈夫です。でも、隼人が一緒だと相手が困るから」
「こ、困ってるならいいけど……」
「本当ですか! じゃ、今からお姉さんの家に行っていいですか!」
「うん、いいよ……」
「ありがとうございます! 一生恩に着ます!」
美豊は、小早川愛のマンションに到着すると、隼人を預け、再び夜の街を目指して歩き、歌舞伎町の公園に辿り着くと、立ちんぼをした。