第二話 4
美豊は、今日も歌舞伎町を彷徨っていた。
東京に会いたい人がいるから、長崎からわざわざ出て来たのに、昔、父から教えられた住所に行ってみたら、そこは今ではパチンコ屋になっていて途方に暮れた。パチンコ屋の裏へ回ってみたが、どう考えても人が住んでいるようには見えなかった。店員に訊いてみても、「ここには人が寝起き出来るような部屋はないし、誰も住んでないよ」と言われた。
美豊は、大きくため息を吐いた。長崎に帰りたくなった。だけど、帰るお金がない。電車賃はなんとか払えたとしても、また無一文になってしまう。そこから先、どうやって暮らして行けばいいのだろう?
売春だったら、東京でもなんとかやっていけるんじゃないかという希望はある。でも、私のことを「汚らわしい!」とあのオジサンが言ったように、まともな商売じゃないとわかっている。だから、アルバイトでいいから、しっかりした仕事に就きたかった。でも、いつそんな日が来るのか全くわからない。もしかしたら、役立たずの自分は、一生まともな職につけない可能性だってある。そう思うと、暗闇の中へ真っ逆さまに落ちていくような気がした。
美豊は、断られたコンビニやカフェの「店員募集」の貼り紙を恨めしそうに眺めながら、他の店にも募集がないか探し歩いていた。そして、新しい貼り紙を見かけるたびに、片っ端から面接を受けたが、これでもかというくらい落とされ続けた。
ため息を吐きながら歩きまわり、もうこの辺の店は無理かもしれないと絶望的になっていた時、ふと、自転車置き場が目に留まった。そして、片隅に求人情報誌が置かれていることに気付いた。その情報誌を手に取り、中を食い入るように見た。そして、「学歴不問、未経験でもOK」という文字を見つけ、「やったぁ!」と叫んだ。