第二話 2
朝、九時に起きた美豊は、隼人と一緒に食堂でおにぎりを食べていた。
食堂には、外国人の旅行客が数人いて、まだ幼い隼人を見てみんな笑顔になった。
昨日の夜も日雇い労働を三件こなし、ボロボロになって隼人の元に辿り着いた。美豊にとって、質素でも隼人と一緒に食べる食事が何よりもご馳走だった。でも、隼人には本当はもっと栄養のあるものを食べさせてやりたい。だから、自分は頑張らなきゃいけないと思う。
「隼人、今日もママはお仕事を探しに行くから、お留守番しててね。この宿のおばちゃんにはそのことを伝えてあるから、おばちゃんの言うことをきいて、良い子にしてるのよ」
「うん、わかった!」
「お菓子を買ってあるから、食べていいよ。でも、全部いっぺんに食べたらだめ。一日一個だけだよ。明日の分も残しておいてね」
「うん」
「隼人君は、おりこうさんだから大丈夫よね?」
ユースホステルの女主人は、そう隼人に笑いかけた。
「ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」
「大丈夫、まかせて」
「ありがとうございます。じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
美豊は、ユースホステルの玄関を出ると、曇り空を見上げた。
しかし、「負けるもんか! よしっ! 頑張るぞ!」と自分に気合を入れ、歩き出した。