第一話 1
以前からエジプト文明に興味はあったのですが
勉強し始めると面白くて止まらなくなり、ついに小説にしてしまいました。
エジプト文明は悠久のナイル文明だと言われています。
葬送品である死者の書にも道徳的なところがあり
エジプト文明の誠実で愛に溢れているところに私も惹かれました。
楽しんで読んでくださったら幸いです。
また、例の夢を見ていた。
「豊子ーっ! 隼っ! 俺に掴まれーっ!」
「あなたーっ!」
「パパーっ! 助けてーっ!」
どんなに手を伸ばしても、彼らには届かなかった。
手を伸ばせば伸ばすほど、彼らは僕から遠ざかり、川に飲み込まれていく。
僕のすべてを投げ出しても守りたかった最愛の二人が、極限の恐怖の中にいた。
気が付けば、僕はひとりぼっちになり、幸せだった日々は二度と戻らなかった。
小さな仏壇の中には、位牌が二つ。
豊子が好きだった青いヤグルマギクを飾る。
手を合わせて祈る、どうか二人があの世で幸せでありますようにと。
あれから、二十年もの歳月が経った。
それなのに、悲しみの記憶は薄まるどころか、年々鮮やかになるばかりだった。
何故、僕は今も生きているのだろう?