戦闘型悪役令嬢ヨランテ・中略・カインドネス、色々ありつつも最後は何とか戦いに馳せ参じるの巻
どうにか今月中に仕上げられた第二話。
あ、タイトル変更しました。
理由ってえとまあ、あの粗筋で「デッドリヴェンジ! Ver.3.14」はおかしいやろって思ったとか、
Ver.3.14ってなんだよとか(一応「本編から3.14歩ぐらい進んだ位置にあるエピソード」ぐらいの意味合いだけど伝わんねえよなって思いました)、
純粋に悪役令嬢ものっぽくした方が初見ウケもいいんじゃないかなーと思ったからってのが主ですわね。
俺の名前は、北川ナガレ。
『セィヤアッ!』
『ヴエエエアアアアアア!?』
『ヴアアアアアアア!?』
青白く光る光刃剣『プラズマ・ノダチ』を振り回し、市井を脅かす生ける屍どもを"刈る"ゾンビ怪人"死越者"にして……
『ヴォエエアアア!』『グゴオオオオ!』『ウッボロブウウ!』
「いやあああああああ!? また来たああああ!?」
『どリィやアッ!』
『ヴァエエエエエ!?』『ブゴエアッ!?』『ヴィイエエゲギイイ!?』
「と思ったらすぐ死んだああああああ!? なにこれぇぇぇぇえええ!?」
『おい姉ちゃんしっかりしろ! 早く逃げんぞっ!』
「えっ!? ちょっと待って、貴方一体っ!?」
『話はあとだ! 今はこの場からズラかんぞっ!』
再びゾンビどもに追い回されていた悪役令嬢っぽい謎の女を渾身の力技でもって今まさに助け出した、"元"普通のサラリーマンだ。
(ったく、結構遠ざかっちまったなぁ~……どうしたもんか)
女を連れて木々の隙間を走りつつ、俺は頭を抱え込む。
気絶してる間に劣等ゾンビども――より厳密には屍人と呼ぶ――をあらかた刈り滅ぼしてから意識が戻った所で姉ちゃんをより安全な場所へ運んだり仲間への護送を頼んだりしつつ話を聞く算段だったってのに、姉ちゃんが予想外に早く目覚めたばかりか勝手に囲いの外へ飛び出してはあちこち逃げ回っちまったもんだから全部が水泡だ。
……と、いけねえいけねえ。他責思考に陥っちゃダメだ。特に問題が起こったのを"敵じゃねえ相手"の所為にするなど愚の骨頂。まずはてめえのガバを自覚して反省するところから始めなきゃな。
『よう姉ちゃん、くれぐれも俺から逸れンなよ。
今はなるべく奴らの群れを迂回してるが、何があるかわからねえからな』
「え? ええ。わ、わかりましたわっ」
『疲れてねえか? 細身だってのにそんな重たそうなもん身に着けてたら走り辛そうに見えるが』
「ハん、見くびらないで下さいまし? 私こう見えても運動は得意な方ですのよ」
『本音は?』
「……全然問題ないと言えば嘘になりますわね」
『そうかい。じゃあ無理して地面に足つけてる必要性もねえわな。
ヒールじゃ走り辛えだろうし、ィよっ』
「ちょっ、とわああっ!?」
次なる安全地帯を探しつつ、俺は姉ちゃんを横向きに抱き上げる。
これが両手なら所謂"お姫様抱っこ"ってヤツにもなったろうが、現状俺は戦いながら移動する必要があるんで片手で抱いてる。
「ちょっ、ちょっと貴方ぁ!? これは一体どういうことですの!?」
『どういうことっつってなぁ、そりゃあんたが疲れてるっつーから抱えて運ぶんだよ。無理してヘバられても困るしな』
「だからってこんなっ、淑女を片手で雑に抱えるなんて非常識とは思いませんの!?」
『まぁ~倫理的にセーフかアウトかで言ったらセウトだろうな。だが他にやり方もあるめぇ? 不本意だろうが暫く我慢してくれや』
「ぬっくっっ、言われてみれば確かに……わかりましたわ。私めの護送を許可して差し上げます。っていうか、寧ろ安全な場所まで護送して下さいまし!」
『いいとも。元よりこっちもそれが目的だ』
なんだよ、理不尽に我が儘吐かして喚き散らかす救えないレベルのクズかと思いきやしっかり他人の話を聞いて妥協できるマトモなヤツだったんじゃねーか。
「但し、この私を護送するからにはしっかりやり遂げなさいね!? 落としたりしたら承知しませんわよ!」
『勿論だ。死んでもあんたは守り抜く……ま、俺ァ既に死んでるがね』
「別にそこまで要求するわけでは――って『既に死んでる』!? 『既に死んでる』ってどういうことですの!?」
俺の返答は当然のごとく女を混乱させる。
そりゃそうだ、まだお互い正体どころか名前すら知らねぇんだから。
『「既に死んでる」つったら既に死んでるってことだよ』
「いやそんなどこかの婚前交渉やらかした顔だけの二世政治家みたいな返しされましても反応に困ってしまうのですけれど!?」
『おいおい、高貴そうなビジュアルだってのに品のねえこと言うなよ。あとその二世政治家とやらにも失礼だろ。
つか俺の返しはそいつじゃなくて、黄禍論者どもの傀儡やってる不登校児にすら押し負ける見掛け倒しのクソザコ二世政治家っぽいヤツだよ』
「いや長過ぎますわね!? 長過ぎる上に私のそれよりよっぽど下品で失礼な言い回しじゃありませんこと!? っていうか引用してきた逸話が違うだけで結局同一人物ではなくて!?」
『聞くところによるとあいつクソらしいよねー。親父の白髪ライオンも叩くとキロ単位で埃が出るような外道だとか真偽不明の話あるけどあのバカも裏でなんかやってんじゃねーの? ヤクザ使って拐った妊婦をチェーンソーで生きたままバラしたりとかさー。ま、仮にやってないにしても無能だからどのみち税金で生かす価値ねーけど』
「話を脱線させない! あとそういうストレートな発言はどこで誰が聞いてるんだかわからない以上は――
『『『『『ギンジソグガラゾパスブギグバァァァァァ!』』』』』
『『『『『バセザジビゴグシドギデボンブビゾビバグゴドボザゾォォォォォ!』』』』』
「いやああああ!? 出たあああああ!? しかもなんだか呻き声が件の二世政治家の信者の怒声に聞こえるううう!?
っていうかアレ完全に台詞ですわよね!? 件の顔だけ大臣を盲信してる些かオツムの残念な方々の台詞ですわよね!?
あなたの暴言を聞き付けて怒りで寄ってきたとかそういうパティーンなのではなくて!?」
『落ち着け姉ちゃん、大丈夫だ』
「大丈夫!? 何が大丈夫なんですの!?」
『この辺りは入り組んでて奴らお得意の"面"攻めはし辛えハズだ。あと仲間に頼んだ支援物資もそろそろ届く。主に飛び道具中心に色々とな。そうなりゃ多少開けた場所に出ても大丈夫になる。
……てワケで、吹っ飛べェェ!』
『『『『『『『『『『ガアアアアアアア!? ギンジソグガラアアアアアアア!!』』』』』』』』』』
何故か付け焼刃なグロンギ誤でわめき散らかすアホ屍人どもを爆弾で吹き飛ばす。
『な? 大丈夫だったろ?』
「いえその、私の懸念はそこではなくて……まあいいですわ。一先ずお互い無事なだけ結果オーライとしておきましょう……」
『カントリーマアム食う?』
「――……ありがとう、頂きますわ」
今ので最後の手投げ爆弾だったが……どうせ補充はすぐ届くし、何より道中でもっと強力な武器が届いているから問題ない。
(何ならこの姉ちゃんにも護身用に何かしら持たせといた方がいいかもなぁ)
口ぶりからして腕に覚えはあるようだし、自分で戦えた方が楽だろう。
さてそれなら何を持たすかな、なんて考えつつ、俺たちは迷路の如く入り組んだ林道を進んでいく。
◆◆◆◆
屍人どもを撃退しながら暗い山道を進むこと暫し、山の麓へ出た俺たちは多少開けた場所――麓にあるらしい廃村――に差し掛かる。
『ふむ、何のかんの逃げ回ってたら林を抜けたか。ここは……農村か?』
抱えた女をゆっくり下ろしつつ、俺は周囲を観察する。民家らしき木造家屋や草刈機や耕耘機といった農具の類からして、嘗てこの一帯が民間の百姓たちが暮らす集落だっただろう事実は想像に難くない。
ただあばら家と化した家屋や見るからに動かなさそうな農機具、雑草にまみれ荒れ地や沼と化した田畑を見るに、住民たちはとっくの昔にこの地を捨ててどこかへ姿を消したんだろう。
「相変わらず不気味な雰囲気に変わりはありませんわね……建物はあるのに人の気配がないだなんて、なんて不気味なのかしら」
『廃村だな。過疎化が行くとこまで行っちまって誰一人まともな住民が居なくなってンだよ』
「そんな……一応集落である以上どこかの自治体の管理下にあるなら、廃墟なんてすぐ取り壊されてしまうのではなくて?」
『ああ、普通ならそうなるハズだが……実際どこの組織も手ぇ出そうとしねえんだな、これが。廃墟ぶっ潰すにもカネはかかるが、つぎ込んだ分回収しようにもアテがねえ。下手すりゃ浮浪者なんかが住み着いちゃ「ここは俺ン家だ」と変にゴネて余計面倒になりかねねーし』
「最悪ゾンビたちに襲われる危険性もある、と」
『そういうこった。屍人はここ最近になってどこからともなく現れた。果たして一体何者でどこから来て何を目的に人畜を襲えのか……あちこちで研究されちゃいるが、調査データは曖昧で不明瞭な点も多く議論が続いてる。各国は警察や軍を屍人討伐に動員、果ては渡世の住人までもが領土を守ろうと屍人対策に追われてっからなァ~』
「なんてこと……」
裏社会の住人……特に極道やギャングみてえな"組織"で動くタイプはそれぞれ"領土"を有しており、"領民"相手の事業――店舗警護や違法な品々の密輸、芸能事務所・金融機関の経営等――が主な収入源だ。
即ち必然、領土と良民を守らねえって判断は組織の崩壊、ひいては構成員の死にも直結する。
『俺自身ちっとワケありなもんで"そういった方々"との付き合いもあるが……彼らに曰く「シマは極道の生命線。命に代えても守るもの」だそうでよ。ただでさえ昔から暴対法に締め付けられながら他組織や国家権力との攻防、シマん中で悪さする"仁義外れ"や"シマ荒らし"どもの対処で天手古舞の過酷な日々を過ごしてる。だってのにそこへ、言葉が通じず何をしでかすかまるでわからねぇ、人間ですらねぇ化け物に攻め入られてみろ』
「……紛れもなく"地獄"ですわね。法に背き、社会に仇なして生きる悪党たちに同情など本来してはならないのでしょうけれど……」
『けれど、なんだ』
「そんな反社会的勢力とて"人間"である事実に変わりはなく、当然生きる権利を持ち、何かしらの役割を果たしているのなら、決して無下にしてはならない……そう思ってしまうのですわ」
『……優しいなあ、姉ちゃん。あんたみてーな貴人は法の正義を信じ倫理に従順で、だからこそ反社会的な存在に同情なんてしねぇものと思っていたが』
「まあ、普通の令嬢でしたらそうでしょうね」
『ほう。つまりあんたは"普通の令嬢"じゃねえってか』
「ええ、それはもう。何を隠そうこの私、戦闘型の悪役令嬢でしてよ?」
オイオイ、妙な単語が出て来やがったぞ。なんだよ"戦闘型の悪役令嬢"って。
確かにこの女、見た目や喋りからして"悪役令嬢"じみてはいるが……それにしたって"戦闘型"は流石に理解が追い付かねえぞ(それ以前に「自ら悪役令嬢と名乗る女』の時点で前代未聞だが)。
『一体何だよそりゃあ。聞いたことねーぞ』
「あら、そうですの? ではお話しさせて頂きますわね……折角ですし、あなたの身の上も聞かせて下さらない? こうして行動を共にできているのも何かの縁なら、お互いについてある程度知っておくのも悪くはないと思うのですけれど」
『ああ、いいとも。お互いまだ名前すら知らねえもんなァ……』
てなわけで――当然、屍人どもの襲撃に警戒しつつではあるが――俺たちは自己紹介序でにお互いの身の上を打ち明け合うことになった。
『改めて名乗らせて頂こう。俺は北川ナガレ。泥得サイトウ地区の自警団に所属するただの日雇い、ってのは表向きの話。その本性は屍人どもを追い回して雑草よろしく刈って回ってる"若干賢めなゾンビの化け物"だ。俺にこの体を与えた奴は"死を越える者"ってんで"死越者"って呼んでたなァ』
「ゾンビの化け物"エクシーデッド"……ああ、だからご自分を"既に死んでる"などと……」
『ご理解頂けたようで何より。さあ、次はそっちの番だぜ』
「ええ、勿論ですわ。私、ヨランテ・キュラソー・オズワルド・ルイン・ラヴェンナ・エリクサー・セルカリア・トランセンデンス・オーマ・レディオアクティブ・スパルガヌム・カインドネスと申しますわ。色々と訳あって"戦闘型の悪役令嬢"として、市井を脅かす怪異や悪党、あと世界的な陰謀などと戦っておりましたの」
あんま聞かねえ上になっげえ名前だな……ってのが、第一印象だった。
『……なるほど確かに"普通の令嬢"じゃねえワケだ』
「ええ、如何にも。いっそ"歪んでいる"とか"狂っている"と言って差し支えないほど"普通ではない"でしょう? 」
『ああ。予想の斜め上をジェット噴射で飛んでくような……ダブルクロス版の「忍び寄る気配」で「雪山なら轟竜だろう」って思ってたら巨獣出てきた時を思い出したぜ』
「驚かれるのも無理ありませんわ。その例えは私、ライズ世代なのでよくわかりませんけれど」
『そりゃ悪かったな。じゃあ次の話題と行こうか』
「ええ、そうですわね。お互いに何が起こり、如何にして今に至るのか――
『『『『『『ヴオオオオガアアアアアア!』』』』』』
『『『『『『ヅウウウウゲエエエエエエ!』』』』』』
「……お話しさせて頂くのは、もう暫く先になりそうですわね」
『ま、しょうがねえよ。寧ろ今までが異例だったまであるだろ』
全く、どこに隠れてやがったんだか……タイミング良すぎだろーがよォ。
『姉ちゃ……じゃねえや。えー、確かヨランテ・キュラソー……』
「常識の範囲内でなら好きに呼んで下さって構いませんわよ」
『そうかい。じゃあ"お嬢"……オメェさん、戦闘型を名乗る以上"戦れる方"かい?』
「ええ。これでも元居た世界では同業者の中でもトップクラスの成績でしたの。正直、戦闘システムがしっかり動きさえすれば北川様のお手を煩わせるまでもなかったと自負しておりますわ」
『武器さえありゃリビングデッド狩りは朝飯前ってか』
「ええ。ゾンビそのものを相手にした経験というのはありませんけれど、雑兵の大隊を前にしては敵なしと称されたものですわ」
『そいつァいいや。ならものは試しだ、俺と一緒に戦ってみねぇか? あんたにお誂え向きかもしれねぇ、いい武器が届いたんでなァ~』
「あら、それは魅力的ですわね……ええ、良くってよ。是非ご一緒させて下さいな。期待以上の働きをしてみせますわ」
『おーぅ、頼もしいねえ。その意気だぜ』
戦闘型悪役令嬢の強気な発言は、如何にも傲慢で己惚れてそうな字面に反してやけに爽やかで、そして頼もしく聞こえた。
それでこそ武器の貸し甲斐があるってもんだと、俺は彼女に空輸で届いた武器を幾つか手渡す。
『とりあえずはその三つだ。暫く俺が何とかするから、説明書をよく読んで自分に合いそうな武器を選んでくれ』
「わかりましたわ。では、宜しくお願いね?」
『任せな』
てなワケでヨランテが説明書を読み込む間、俺は彼女の護衛を引き受ける。
とは言え、幸か不幸か屍人どもは(数に浮かれて慢心でもしてんのか)威嚇するように呻きながらゆっくり歩いてくるだけだったし、お嬢の飲み込みもやたら早かったもんで護衛らしいことは殆どしちゃいないがね。
「お待たせしました。説明書の内容を理解できましたわ」
『おっ、いいねえ。何使うか決まったかい?』
「はい。私元々状況や相手によって装備を変えるタイプな関係上結構何でも扱えるので逆に迷いまして……とりあえず三種類全部装着する形で落ち着きましたわね」
『……マジで正気じゃねえなあ。だがお嬢のそういうトコ、嫌いじゃねぇぜぇ~』
なんて具合に準備を整え、新メンバーを交えての"刈り"が幕開ける。
『『『『『ム〝ォ〝リ〝カ〝ク〝ェ〝ェ〝ェ〝ェ〝エエ〝!!!!』』』』』
『『『『『ザグラ〝ア〝ア〝ア〝ア〝ア〝ア〝ア〝!!!!』』』』』
『喧しいったらねーなァ~……必殺「敵対政党ディスってばっかの無能どもが政権取れるわけねーだろボンバー」!』
『『『『『ゼヅメ〝エ〝ゼギニ〝ィィィィイイイイイイ!!!!』』』』』
『『グァイザァァァァァァ!!』』『『『ジニイイイイイイイイッ!!』』』
ニュースの国会中系によくいるウザい税金泥棒どもの出す雑音みてーな鳴き声の屍人どもを纏めて吹き飛ばしたのは、つい何分か前に空輸で届いた対屍人仕様の擲弾発射器"強欲警官"……南アフリカはアームスコー社製のダネルMLGを参考に、つーかほぼ模倣って作られた代物(製造者公認)で、装弾数は本家と同じ六発な上軽量化と反動軽減のお陰で扱いやすくなっているが、その反面有効射程は約220メートルと本家の三分の二以下にまで落ち込んでしまっている(と言って、屍人どもは大抵こっちを見るなり突撃してくれるので射程の短さはさほど気にならねえが)。
「技名長っ!? 長すぎる上にネタ結構古くありませんこと!?」
『技名はともかくネタに関する文句は屍人に言ってやりな。まァ~死後結構経ってるだろうしネタの鮮度が落ちててもしょうがねぇよ』
「それとこれとは関係ないでしょ――
『『『『『ニイイイノオオオオオオオ! ドオオオオシテエエエエエ!』』』』』
『『『『『ナアアアンデダヨオオオオ! ガアアッキイイイイイイイ!』』』』』
『『『『『『『『『グェッゴンヅァンデェ! ズィデヴォジグザガッダアアアアア!』』』』』』』』
「んもう、他人様の話を遮っての登場とは感心しませんわねぇ」
『一発教育してやんな、高貴なる者の義務ってヤツでよ』
「ええ、そうしましょう。さあ食らって消し飛びなさい、
奥義『芸能人の結婚報道を実質訃報扱いしてお通夜ムードは滑稽ですわよストリーム』!」
『『『『『ヴァリゲネエエエエエエエエ! ヴィドメザグレエエエエエエエ!』』』』』
『『『『『ズォンザニヴォアゼゴンバアアアア! ダッザドリゴンジズェェェェェ!』』』』』
ヨランテの両掌から放たれた極太の光線は、眼前の屍人どもをその耳障りな呻き声ごと消し炭にした。
『……早速使いこなしてるようだな』
「ええ。この武器、気に入りましたわ。一家に人数分欲しいくらいには」
彼女が"一家に人数分欲しいほどのお気に入り"とまで絶賛するその武器の名は"仙亀頭蓋"。原文とルビの不一致が結構紛らわしいが"両手"って名前の通り機械仕掛けの施された手袋か籠手みてえな見た目をしている。
「ハッ! フンッ! セヤアッ!」
『ヴァッ!?』『ヴエッ!?』『ヴボァッ!?』
「奥義『どうせすぐやられるんだから断末魔の叫びくらい個性的に纏めなさいよブラスター』!」
『『『『『ンナムチャナアアアアア!?』』』』』
その機能は至ってシンプル。"掌から光線を放てるようになる"――ただ、それだけ。
光線は一直線で威力は据え置き。手首の内側をくっつけながら撃つと光線同士が重なり合って威力が倍増する特徴があり、掌や指の角度でもって光線の射程や太さなんかを微妙に調節できたりもするが、まあ強欲警官と同じような、細かいことを考えずに使える部類の武器と言える。
『シぇあ! そゥら! ハっ! でりヤァ!』
『ヴェゥ!?』『ブボッ!』『グゲエエッ!?』『『グゴガッ!?』』
『そこだぁ!』
『『『ヴァエウウウウ!?』』』
『逃がすかァっ!』
『『『『『ヴエエアアアア!?』』』』』
となりゃ、俺も負けてはいられねえ。気合を入れて頑張らねえと……などと独白すりゃあ、読解力のねえ連中に誤解されそうであるからして、念のため言っておこう。
『ヴゥウゥゥウ……!』『ヴァァァァ……!』
『……話をしよう』
俺はただ"頑張ろう"って決意しただけだ。
『ガアアアア!』『グアアアア!』
『若かりし俺の、生前話を……』
『グガギッ!?』『グギョエ!?』
他意はねえ。
『グゲバアア!?』『ブギュオゲエエッ!?』
『俺の通ってた中学には、剣道部があってよぉ……』
"新入りの小娘に負けてちゃ立場がねえ"なんて、そんな風には考えちゃいねえんだ。
『ヴエエエアア!』『グオオオ!』『ゴガアアアッ!』
『ド田舎中学の運動部だからか、なんでか剣道部は不良じみたカスどもが多くてなあ』
『ヴァエゲ!?』『グギゲエガアッ!?』『グガギャアッ!』
『もしかしたらまともな部員も居たかもしれねえ』
『『『ヴォゲエエエエエ!?』』』
と言って、こんな風に独白してる時点でそういう思いが心の中にあるのかもしれねえが……ともかく俺は彼女を、ヨランテ・中略・カインドネスを、能動的に見下すような真似は避けてえワケだ。
何故ならば……
『……いやむしろ、きっと大多数はまともだったハズだ。
あるいは、不良どもとて競技者としてはまともだったかもしれねえ』
『ギャギエエエ!』『グギョゲエエ!』『グギャギャギギイーッ!』
『だが今、この腐りもしねえほど死にきった脳味噌で思い出せる奴は……そこまで強く記憶に残ってる同世代の剣道部員と言ったら、なんでか軒並みクソにも劣るカスのような連中しかいねえワケだよ……』
『ヴォゲ!?』『グギイ!?』『ゴボ!?』
何故ならば、俺にとって彼女は"輝かしく偉大な存在"であって"経緯を払うべき相手"だからだ。
『……覚えてるのは、四人。見るからにガラの悪い青山、傍若無人なジャガイモ頭の長野原、面構えからして性格の悪さが滲み出てた立花三姉妹の確か真ん中だかのヤツ……』
明らかな確証はない。だが俺はそうだと確信しているし、断言できる。
少なくとも見下していい相手じゃねえのは確かだと、何なら首を垂れる価値さえある相手かもしれねえと、俺はそう思っている。
『ヴァギャアアアアアア!』
『……あのクソ野郎。中学生活三年間、悉くこの俺を不愉快にさせ続けてきたあの二足歩行型粗大生ゴミ……』
『ゴゲッ!?』
『服部ィィッ!』
『ブバビャアアアッ!?』
そうだ。彼女は"善い奴"なんだ。きっとそうだ。悪役令嬢などと名乗っちゃいるが、てめえの信念の
まま覚悟を以て戦う"高潔で誇り高き悪"なんだ。俺なんかとは違うんだ。
『ヴアアアアア――ガッ!?』
『仮にそれが俺の幻想だとしても……単なる無知な死人の思い込みに過ぎねえとしても!』
『グワッ、ガッ、グッ、ゴガガァッ!?』
『少なくともあの剣道部員どもよりは、遥かに価値があるハズだっっ!』
『グビゥブ!? ジュ、グゥゥゥゥゥゥ……』
『……おっと』
なんてこった、勢い余ってわざわざ捕まえといた屍人の首を握り潰しちまったじゃねえか。
ワンチャン駆動中枢が腹側にあれば首がもげても何とかなるが……残念なことに奴の中枢は頭にあったらしくピクリとも動かない。
(ただ切り刻むだけ、吹き飛ばすだけってのも味気ねえし、ここらで何かしら新しい遊び方を模索したかったんだけどなァ~……)
ま、過ぎたことを悔いてもしょうがねえ。他の武器も届いたことだし、気持ち切り替えて進むしかねぇわな。
『さあ、もっと楽しませてくれよ……? 俺ァまだまだ刈り足りねえぞぉ……っっ!』
『『『『『『『『『『ヴアアアアアアアアアアッ!』』』』』』』』』』
『おっしゃあ……来やがれ、"死に損ないども"があっ!』
破壊活動は、まだまだこれからだ!
ところで相方に影響されてHEROS版クウガを行きつけのネカフェで読んでますが何故か八巻だけありません。
どこぞのバカがパクりでもしたんでしょうか。ふざけんじゃねえギノガさんの胞子で死ねと言いたい。
店側にも報告したけどその後音沙汰ないので最寄りのブックオフで買いました。
『風都探偵』でも思いましたがやっぱ仮面ライダーは漫画にすると連ドラとは違った良さが出せていいですね。
今まで放送された作品もヒーローズとかスピリッツとかで漫画になればいいのにね。
CG代とか役者の不祥事とか玩具販促とか気にしなくていいわけだしさ。
私より先にヒーローズ版クウガ読んでる相方のツイッターはこちら→https://twitter.com/69440_Uwabami
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