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ハイエンド・ヒューマノイド ~異能で生きるゾンビ世界~  作者: ポテトギア
第一章 パンデミックと異能力
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第一生存者発見

 食料といくつかのサバイバル道具を持って、俺と唯奈(ゆいな)は誰もいなくなった街を歩く。

 大量のゾンビに襲われたあれから、特にゾンビとは遭遇する事もなく歩みを進めていた。


「意外といないもんだな、ゾンビ」

「そういうものじゃない?ゲームでもずっと追われてる訳じゃないし」

「そうなのか?こうなるんなら、ゾンビモノの映画とかゲームとか嗜んでおくべきだったなぁ……」


 後悔先に立たず、というやつだ。今までこれといった趣味を持たなかった俺はそういうのに疎く、唯奈の方がずっと詳しい。まあ現実とゲームは違うんだろうけど、異能の力に目覚めてしまった俺としては、何が起きても不思議じゃない気がして来るものだ。


 俺たちの当分の目標地点は、父さんが用意していた地図にチェックを入れていた知らない建物。地図には名前とか何も書いていなかったのでどんな場所なのか分からないが、このパンデミックを予想していた父さんたちが印をつけているのだ。何かの助けになるはずだ。


「取りあえずしばらくの食料は考えなくてもいいのは大きいな。足りなくなっても補充すればいいし」


 唯奈が背負ってる方のリュックには携行食がたくさん入っている。目的地はかなり遠くだが、二人しかいないのだから心配するほどじゃない。


「そう都合よく補給できる場所があればいいけど」

「いやーあるんじゃないの?例えばほら、あそことか」

「コンビニ……?」


 俺は交差点を越えた先にある小さなコンビニを指さした。駐車場や付近の道路にもゾンビはおらず、今なら問題なく入れるはずだ。ここからだと中の様子が見えないのでもしかしたら中にゾンビがいるかもしれないが。


「せっかくだから休憩がてらちょいと見てみないか?」

「まあ、私はどっちでもいいけど、休んでいいならちょっと休みたいかも」

「オーケー、じゃあ行こうぜ」


 万が一ゾンビと出会った時のために、能力でサバイバルナイフを二本生み出し、両手で構える。家でゾンビを斬りまくってたアウトドアナイフよりも切れ味が良さそうなのでこっちにした。一度も見た事のないコレを生み出せたのは唯奈がくれた本のおかげだ。


「お兄ちゃん、私も何か武器欲しい」

「え?いや、唯奈は戦わなくていい。危険だし」

「自衛手段は必要でしょ?私はお兄ちゃんみたいな能力も無いんだしなおさら」

「むむ、それは一理ある……」


 唯奈を積極的に前に出して戦わせる事は絶対にしたくないが、俺が全部守れるとは限らない。自衛のための武器もいるだろう。


「分かった。何がいい?」

「バットとかでいいよ。銃は音でおびき寄せるだろうし、クロスボウとかも使いこなせる気がしない」

「りょーかい」


 金属バットでゾンビを倒せるかどうかは正直不安だが、その出番を作らないよう俺が守ればいい話だ。唯奈には念のために武器を持ってもらうけど、それはあくまで自衛のため。妹を守るのはお兄ちゃんの役目だ。


 ……もしかしなくても俺は、どうしようもなく過保護な兄かもしれない。


「ほい、出来たぞ」

「ありがと」


 テレビでも野球とかでよく見る金属バットを能力で生み出し、唯奈に渡した。本当にこの能力は何でも生み出せるみたいだ。


「よし、準備も出来たしぼちぼちあのコンビニに……ってアレは」


 サバイバルナイフを両手に持ち、いざ踏み出そうとコンビニの入口付近へ目を向けた瞬間。コンビニの入口付近でそれを見つけた。見間違いじゃないかと目をこすっても、はっきりとその目に映されている。


「お兄ちゃんあれ、人じゃない!?」

「ああ!生存者だ!!」


 サイズの合ってないウインドブレーカーを着ている女の子が、コンビニの中をきょろきょろと見回していた。食料調達に来たのかもしれない。何にせよ、俺たちが出会う第一生存者だ。こんなに早く他の人と会えるなんて思ってもいなかった。やはり人類は絶滅していなかったんだ。


「あの子一人だ、早く合流し―――」

「ちょっとお兄ちゃん待って」

「ぐぇっ」


 走り出そうとした俺の首根っこを掴んで引っ張る唯奈。急に首が絞められて地味に痛い。


「ちゃんと周りにゾンビがいないか確認しないと」

「そうだな……あぶないあぶない」


 コンビニから道を挟んで向かい側にある家の塀に身を隠すようにして、周囲にゾンビが来ていないか確認する。車が一切走らなくなったこの世界での新しい交通ルールと言っても過言ではない。うっかり鉢合わせたら危ないしな。


「ハッ!?コンビニの影から二体出て来たぞ!中に入る気だ!」

「行こうお兄ちゃん!」

「ああ!」


 物陰から顔を出した二体のゾンビが、腐った体を引きずるようにのっそりと入店していた。中の少女はそれに気付いたようだが、見た所武器のような物は何も持っておらず、肩に下げてるスポーツバッグもここから見ても空っぽだと分かるぐらいへにゃへにゃだ。武器になる何かは入ってないだろう。早く駆け付けないとマズい。

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