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はじまり、はじまり。

気が向けば筆が動く

森にできた道をぽっくりぽっくり馬車が行く。馭者はフードを被った男だ。積み荷が良い値で売れたのだろうか、鼻唄も歌っている。


「次の町までに何仕入れよなぁ......道中にダンジョンがあったはずやしそこでなんか手にいれるのもありやなぁ。」

「それよりもパーッと遊ぼうぜ。そろそろゆっくり贅沢してぇよ。」


男の質問に対して馬車の中にいた、こちらもフードを被った女が答える。こちらは荷物がなくなったことで少しだけ広くなったスペースでごろりと寝転んでくつろいでいる。


「えー?そんなんしたら路銀がなくなるやん。」

「その後ダンジョンに一週間籠ればいいじゃねぇか。」

「それの方がしんどくない?」

「俺ら二人なら行けるだろ。」


そんな他愛もない話をしていると、何かに気づいたのか男は馬車を止めた。


「お、どうした?」

「人が倒れとるみたいやな。」

「見なかったことにして轢けば?」

「いや、それの後始末すんの誰やと思っとるん......。」


やいのやいのしていると、倒れていたはずの男が起き上がる。


「た、助けてくれぇ......。」

「なんなん?」


助けを求める男に、馬車の男は質問する。


「金が、金が必要なんだよぉ......。」

「金ねぇ。いくらほしいの?」

「そうだなぁ......その馬車の中のもんごぎょっ!?」


その質問に答える前に女が男を蹴り殺す。

蹴り殺された男の手にはナイフが握られていた。


「おいおいいるんだろォ!?ここら辺荒らしてるって噂の盗賊さんどもよぉ!」


大声で挑発すると、森の中から矢が飛んでくる......が、それを見ずに掴みとる。


「ビンゴみたいだぜ、グリム。」

「いやぁそんなん森に入った時点でわかっとったやろーに。」


やれやれとあきれる男......グリムとは対称的にわくわくとした雰囲気の女。その2人の前に3人の男が立ちはだかる


「わかってなら金目のもんとお前だけのこれ。いい性格してるから可愛がりやすいぜ。」


下品な笑みを浮かべる男達に、女はあきれたように鼻で笑う。


「そー言うのいいって。大人しーく捕まってくれんなら死なずにすむぜ?」

「3人に勝てるとでも?」

「余裕で勝てるな。」

「なんだと!!」


怒りと共に斬りかかってきた男の攻撃を避け、すれ違い様に足に蹴りをかますと、骨の折れる小気味のいい音が響いた。

うめいた男はそのまま放置し、掴みかかってきた男の腕をかわし、背骨を一息に蹴折る。

驚いて動けてなかった最後の一人は接近した勢いをそのままに、回り蹴りをお見舞いし、黙らせた。


「うぃー、俺の勝ち!」

「はいはい。場所聞けてへんねんけどどうするん?」

「え?もう見つけてるしいいだろ。」

「まあせやねんけど。」


そう言って馬車から降りた男は魔術を行使し、馬と馬車を隠す。


「ほないこか。」

「おう。」


そうして森の奥に2人が消えた数分後、パーティーであろう男女4人組が盗賊達の死体を発見した。


「誰がこれをやったんだ?」

「蹴り殺されてる......?」

「あまり争った後が見られませんが......。」


死体を調べていると、森から何かが投げられ、足元に転がる。


「ひいっ!?」


一番近くにいた魔法使いの少女が思わず悲鳴をあげてしまうそれは、男の生首だった。


「うわ、ってこいつ指名手配の......!」

「いったいどうして首だけが......?」

「あ、やべ、人がいたか。」

「!?」


ごそごそと悪びれもせずに森から出てきたのは先ほどグリムと一緒にいた女だ。フードや靴を血まみれにして立っていたが、外傷の類いは見えない。


「おーいグリム、人がいるぞ~」

「討伐のために来たんかな?僕らが全部始末つけてもぉたわ。」

「は、はぁ......。」

「すまんすまん。手柄は君らに譲るし、道中も乗ってく?」


そんな若干怪しい誘いに、パーティーのリーダーであろう少年に魔法使いの少女がどうするか相談を始める。その間にタンク役であろうもう1人の少年が何かを思い出したのか、「あっ!」と声をあげた。


「も、もしかしてあなた達が伝説の不老不死のパーティー、グリム・フェイスレスさんとミトラ・カタバミさんですか!?」

「え?僕らそんな有名なん?」

「はいっ!数々の伝説を打ち立ててはふらりと消え、また数年、数百年などの時を経て現れる幻のパーティーだと聞いています!」

「ぶっ、く、はははははっ!!伝説だってよグリム!」


興奮ぎみに説明してくれる少年に対して女......方喰(かたばみ)は爆笑していた。


「そんな有名なお方に出会えるなんて!リーダー!こんなの相談抜きに絶対に乗りましょうよ!話題になれますよ!」

「ドルーがいうなら間違いないだろうし......すみません、グリムさんお願いします。」

「はいよ。」


二つ返事で了承したグリムは魔術を解除し、現れた馬車に彼らを乗せて再び出発する。



これは、不老不死のパーティーと呼ばれる2人のお話。

厳密に言えば不老不死ではない2人の、気楽な異世界放浪。

2人の旅は、まだまだ続く。

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