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カラポン・ザ・ストーリー  作者: 鈍行彗星
1『カラポン・ザ・ストーリー』
21/21

8「G.A.」part3

「氷が溶けると薄くなるからな、まずは一口飲んでみな」

 兄ちゃんはどうしても自分が淹れたコーヒーを飲ませたいらしく、部屋に入るなりまずグラスを渡してきて、しぶしぶ受け取って、ベッドに座った。

「苦い…」

「これでもダメか、じゃあしばらく置いとけ。その内氷が溶けて薄くなる」

 グラスをデスクに置くと、まだ熱の残ったコーヒに氷が溶けて、カラン、と音が鳴った。

「お前のホームビデオ、勝手に見させてもらったよ」

「…ホームビデオじゃない、部活で作ってるテレビドラマだよ」

 カチカチ、と、ダブルクリックの音がして、映像が再生され始めた。スピーカーから遠慮のない音声が流れてきて、兄貴は本体のツマミを回して音量を下げた。

「この辺が特に面白い」

「あっ…おい!?」

 それはドラマではなく、撮影の合間に録画していたメディア部の映像だった。…しかも俺が撮った奴じゃない。粟野達に山岳公園の電車広場で隠し撮りされた、林檎が俺に添い寝してきたときの映像だった。

『あはは、ようやく観念したねカラポン! 私と一緒に寝 ようね―――――んっ…』

「随分と大胆になれたもんじゃないか、兄ちゃんはうれしいぜぇー、カラポン?」

「…あいつが、あいつが勝手にやってきてるだけだ。俺がやりたくてやってる訳じゃないっ」

 兄ちゃんはニヤニヤと笑いを噛み殺しながら、シークバーを動かして何か見たい場面を探している。そんな兄ちゃんの姿が、何だかとても嬉しそうに見えて、俺は、もう、我慢ができなくなっていた。

「…あと、カラポンって呼ぶなよ、俺のこと…」

「何でだよ? お前はカラポンだ。空っぽ頭、カーラポンポン、何にも考えてなーいね…♪」

 そのメロディは、何度か聞いたことがあった。だけど、俺はその先のフレーズを知らない。

「やめろっツッてんだろ…!!」

 動画が一時停止され、画面はなぜか小雪ちゃんのドアップで止まっていた。何の場面だったろう?

「…カラポンは兄ちゃんのあだ名だろ。林檎だって元々は」

「昔の話だ」

 そして、コーヒーカップを取ると、放置された俺のグラスと乾杯して、勝手な独り言を言い放ったのだ。

「今はお前がカラポンで、林檎はお前の“物”だ」

「ーーー!」

 殴ってやる。そう思った瞬間、コンコン、と、部屋の壁をノックする音が鳴り響いた。

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