表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アマルガ大記  作者: なるなる
第一章 1つめの幻視
3/17

闇の子

 宇宙には、かつて繁栄を築いた文明があった。


 その文明は煌びやかであり、光に溢れた文明であった。


 しかし、光の中にあると、その光に隠れた闇は見えないもの。


 得てして、その闇さえ否定してしまう。


 その文明に生きる人たちにおいて、光は光であり、光を脅かす闇など知らぬものであった。そんな中、その文明において、闇の存在を認めた者がいた。その者は、その闇の「脅威」を認めて、文明に属する人たちに警告を行った。闇が迫っていることを知らせようとしたのである。


 しかし、その文明の人たちの多くは、聞く耳を持たなかった。


 それと同じ頃、闇の中でも変化があった。


 光に溢れた文明。その煌びやかさ、その光の度合いの強さに、闇は何時しか、自分が闇であることを認めた。ただ、文明の光に手を伸ばすのではなく、破壊するのではなく、「触れてみたい」とさえ思った。しかし、実際に触れようとすれば、その文明を破壊してしまいかねない。


 そこで、闇は、その手の先の一つ欠片に、命を吹き込むことにした。


 そしてその命を、「闇の子」を、光の文明の人たちのところに送った。


 もしかしたら、闇に関心を持ってくれるかも知れない。もしかしたら、闇はその光の文明を壊すことなく、愛でることが出来るのかも知れない。そうした淡い期待を乗せて。


 しかし、光の文明の許に辿り着いた「闇の子」に対する仕打ちは、酷いものだった。


 そもそも「闇の子」であるために、出自が不明であり、認められない。光の文明において闇の存在を認めた者が、その庇護者になったが、それ以外の者たちにおいて、由来の分からないものへの忌避感は強かった。それでも、「闇の子」は、闇の善意を継いで生まれており、光の文明に馴染もうとした。健気なほどに。


 それは、件の庇護者あってのこと。


 「闇の子」ではあっても、その内奥は、光の文明の人たちと大差ある訳ではなかった。それを考えればこそ、件の庇護者の存在は大きかった。その者が「闇の子」の庇護者になったのは、半ば押し付けられた形とはいえ、「闇の子」と接する中で、庇護者としての面を強くするようになって行った。


 それを決定的にしたのは、光の文明の許での、ある仕打ち。


 光の文明の議会の決定下、「光の文明の者は、光の下に居ても良い。しかし、闇に連なる者は、闇に帰れ」と、「闇の子」を技術的に光を遮断した空間に閉じ込めたのである。「闇の子」には既に命があり、闇に帰ることなど出来る訳もない。しかし、光の文明の議会は、それを支持する人たちには、その違いが分からない。


 もしくは、分かった上で、そのような決定を行っていた。


 その措置下で、「闇の子」は流石に打ちひしがれた。


「自分は、何のために生まれたのだろう」と。


「光の文明を見たかっただけなのに、どうしてこんな目に遭わなければならないのだろう」と。


「光の文明の許に生まれていたら、この境遇は変わっていたのだろうか」と。


 そうして、「闇の子」の打ちひしがれる様子。


 それをモニター越しで見た庇護者は、議会の決定の過ちに気付くことになった。一方で、他の者たちは、「闇に連なる者なのだから、打ちひしがれる様子は、そのように振る舞っているだけだ」と、警戒心を更に高めた。


 だとしても、果たして、そのままで良いのだろうか。


 その一点を示しながら、議会を説得し、その空間から「闇の子」を解放させた。


 解放された「闇の子」は、庇護者によって温かい食事を提供され、その温かさは分かったものの、どうしても薄皮一枚を挟んだような気持ちになってしまっていた。どうして解放されたのか。「どうして、庇護者は、こうも優しくしてくれるのだろうか」と。


 その理由が、分からなくなっていた。


 いや、最初から、分かっておらず、そのことにようやく気付いたのかも知れなかった。


 「闇の子」が、そのことに気付いた時、途轍もなく重たい物を感じる他はなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ