体育祭 後編
連続更新116日目!!
陸上小説です(白目)
(5000mを走るのは高2の11月初め以来……怪我から復帰して1週間で走ったレースで自己ベストを出したんだっけ。タイムは14:47。……駅伝のメンバーに落ちたっけ)
真は約2年前の記憶を掘り起こし懐かしんだ。
そこからお金の面の不安を解消する為、響の足を治療する為陸上選手の夢を辞めてハンターになった。
「なのに、もう一度……走れるのは」
「真……」
獅堂は真の顔をチラりと見る。
感情が湧き上がったのかほんの僅かだけその瞳が光った。
5000mは1組だけだったがその代わり男女合わせての人数は26人とやや多めの数となっていた
ハンター部門が今年新設されたのにも関わらずメンバーはかなり強かった。
最低ランクがBランクだが噂では既にAランクでも上位に近い戦闘能力を持っているハンター。
Aランクが1番多く群雄割拠の言葉が似合う程に皆の力が拮抗している。
(【鑑定】で見た限り将来性が溢れてる奴らばかりだ。それに)
2人の人物を見据える。
古城 桜
女みたいな名前から考えられないほど精力的な戦い方をするハンター
そして真が初めて見るハンター
八丈吼桐
真より1年早くSランクになっていたハンターでレベルもかなり高く【鑑定】で93と出ていた。
ぶるり
2年ぶりの5000mという事もあり緊張から手が震えた。
パァン!!
今日何度目かの号砲が鳴りハンターが一斉に走り出した。
アナウンスが走っているハンターの名前を呼んでいき選手紹介をする。
真を筆頭に獅堂、紅葉、猫娘、10分ほど前競技場に遅れて来た冥凜に神峰、古城が早くも先頭集団を形成する。
この中で1番ステータスの劣る神峰は序盤から顔を歪め6人に着いていく。
400m通過をしてタイムを確認する
25秒
1秒遅れて神峰が続く。
ステータスに任せて、陸上選手時代を思い出すように先頭を譲らず引っ張る。
800mが過ぎ神峰が本格的に遅れ始めた。
Sランクの中で1番若手のハンターありながら従来のSランクより強い古城の顔が歪む。
(この荒鐘って人!!引っ張るだけじゃなくて何処かに引き摺り込むような走り方だな!!!)
真が陸上選手として現役の頃絶対に心掛けて来た走り方
それは魅せて楽しませる走り方だった。
走る方が楽しむのもいいが見てる方にも楽しんで貰えるように。
1000mを超え3周目が終わり4周目になる
スピードはそのままにこの周回に動きはなく5周目に突入する。
「猫娘、冥凜、紅葉さん獅堂……本気でかかって来い」
その言葉が放たれた瞬間に真を抜き先頭を引っ張り始める。
真はそのまま行かず古城の横に着く。
「ハンターとしてじゃなくただの陸上選手として走るのも悪くないだろ?」
「はぁ……はぁ……追わなくて……いいんですか?」
「直ぐに追いつく。まぁ、『魅てろ』」
真が先行した獅堂達を見据える。
途端まだ柔らかかった雰囲気ががらりと変わった。
ゾワリ
古城は背中に冷や汗が流れる
特別タイムが早かった訳では無かったが選手としての自負、そして真が個人的に助言した選手が全てその時代の高校生ランナーを代表する選手になった誇り、そして何よりもタイムは何の特別性も無いが試合で一度も負けた事が無いという矜恃。
真はランナーとして完全に現役に戻っていた。
「っ!!」
前に出て地面を踏み締めて蹴った。
タータンが後ろに古城から分かるくらいには歪んで見えた。
(幾らSランクでも何て脚力!)
足がタータンから離れた瞬間に真は先行していた獅堂達を追い抜き先頭に立った。
今の一蹴りで真と古城の差は5秒分も開いていた。
そしてこのハンター部門の5秒が覆る事はない。
真が再びトップに立った事で先頭のスピードが上がった。
紅葉か前に出ようとすればスピードを上げる。
冥凜と猫娘がブロックを試みれば直ぐ様後方に行きそこから再度先頭へ行き引っ張る。
獅堂は………………頑張って着いていた。
3キロ手前になった時にハンター先頭は最後尾のハンターを捉えると一気に追い抜く。
「「「えぇぇえぇぇえぇぇええぇ?!?!」」」
流石に先頭と周回差がつく事はないとタカを括っていたハンター達は度肝を流される。
頑張って抜き返そうとするが付く事すら叶わなかった。
ハンターには身体強化がある。
しかしこのハンター部門では身体強化を使わず鍛えた肉体だけで走る。
それを踏まえても先頭集団が異常に見える。
しかし追いつく事は出来ずとも何故が少しスピードが上がり前にいたハンターを捕らえる。
(え?引っ張られて………)
最後尾が追いついた事で膨らみ6人の集団になる。
そこから6人がまた真達に引っ張られているかよように前の集団を飲み込んで行く。
そのまま誰一人集団から落ちるハンターはいなかった。
(真、久しぶりに『陸上』が出来て楽しんでるな。特別速いわけじゃなかったけどいずれ全国大会にって目標があったもんな)
「ちっ、走り易いけど抜き難いのなんでね?」
「真君速いって!」
「まだ行ける」
(吐きそう)
残り1キロ真はラストスパートをかけた。
一歩踏み出す毎に真と紅葉達との差が開き始める。
今まで試合では負けた事が無いという事はラストスパートで勝ち続けたということ。
短距離の走り方を学んだ真のスパートに次にステータスが高い冥凜が続こうとするが追いつかない。
これはステータス的な力より長距離の走り方から短距離の走り方にシフトするという技術的な力により生まれた差だった。
「疾いなっ」
苦しい顔でそう溢す
対照的に真は嬉々としていた。
追い抜いていくハンター達の背中をポンと叩き「ファイト!」と声を掛けていった。
ラスト200m
現役の頃よりスピード遥かに速く鋭く磨かれた切替をする。
その鋭さはハンターではない一般人のトップスプリンターを彷彿とさせた。
そしてゴール
「っっっしゃぁあ!!!!」
2年越しに願っていた5000mのゴールに真は思わ歓喜の雄叫びを上げる。
見ていた学生やその親達も声を上げ盛り上がった。
取り敢えず水着回代わりの体育祭回は終わり……かな?




