episode.04
「…お待たせ。…えっと」
「い、岩咲つぐみです!」
久々のイケメン! いやいや、わたし間違いは起こしてはいけない教育者であって、この関係は今ここで断ち切らないと。
「あ、あの! ほんとにほんとに色々ごめんなさい。この前のことも今日のことも、都合のいいこと言ってるのわかるんですけど全部忘れて下さい!」
よしっ! 言った! ちょっと惜しい気するけど、これでいい。ちょっと惜しいじゃない! わたしは教育者、わたしは教育者…
「なんで?」
「へ? なんでって、連絡もなかったってことはそうゆうことでしょ?」
「あぁ、これ?」
そう言って東口くんがカバンから何かを取り出し差し出した。
「…焼き鳥屋…とりとーり…って! え?」
「この前、駅であんたにもらったやつ。なんかかけたけど、焼き鳥屋に繋がった」
そりゃそうだ! わたしの名刺じゃなくて行きつけの焼き鳥屋の名刺! まさかの渡し間違いしてたー!!
「…て、へ? かけたの? ですか?」
電話くれてたってこと? それってどうゆうこと!? 勝手な期待しちゃいますけど!
「なんか、据え膳食わぬは男の恥らしいから」
それ、誰に言われたの? 意味わかって言ってんの? いや、わかってる雰囲気じゃない…ね。とりあえずその人グッジョブ!!
「明日、時間あるけど」
「…明日?」
「お礼…他人の善意は無下にしないようにって、右京が…」
なんかよくわからんけど右京さんに感謝! 明日イケメンとデートできる権利をゲットした! したのか?
「明日大丈夫なら連絡先教えて…焼き鳥屋じゃないやつ」
「う、うん」
東口蒼衣…名前までイケメン!
「東口くんは…」
「…アオイ。…ヒガシグチって長いから。蒼衣でいいよ」
早速名前呼び!!! さ、最近の高校生は!
「蒼衣くんは、家近く?」
「こ、個人情報はちょっと…」
いや、イケメン! そんな下心ないわ!! とりあえず、明日は駅の時計塔の前で待ち合わせることを決め解散した。
家に帰るとソファに横になりながら、『東口蒼衣』の文字を何度も確認してしまった。
到底恋になるなんて思えない関係だけに複雑な心境だが、まぁ、たまたま1日アイドルとのデート券が当たった気分で楽しめばいっか!