episode.18
「つぐみ! 何やってんだー?」
この前のスーツ姿とは違うラフな格好とか、無造作な髪とか雰囲気とか…全てのパーツがあのときを蘇らせる。大輔が言っていた『俺は別れたつもりないから』って言葉が脳裏をよぎる。
身動きが取れないわたしのところへゆっくり大輔が近づいてくる。大輔がいつもの癖でわたしの髪に手を伸ばす。
「偶然だな…」
昔はこの後、愛おしそうにわたしを見つめると優しいキスをしてくれたっけ…。
ふと、大輔を見るとあのときみたいにわたしを愛おしそうに見つめている。だけど、どこか切なさも混じっているように感じた。
すると大輔が顔を傾ける。
この前みたいにキスされるのかと思い、すっと俯き大輔から視線を外す。
「くすくす…」
笑い声に顔を上げると、大輔が指先に桜の花びらをつかんでいた。
「これ、髪についてた」
は、恥ずかしい、自意識過剰すぎる!!
「もしかして、キスされるかと思った?」
追い討ちをかけるように大輔が言葉にする。多分、今わたし、顔真っ赤になってる…
「…うん、…お、思いました」
「何、その反応…」
そういうとわたしの唇を親指で開くと大輔の唇が重なる。抵抗も虚しく、大輔の強い力はわたしを離してくれなかった。
「ちょ、ちょっと! 大輔! や、やめ…」
大輔の身体を思いっきり押すと、観念してわたしを離した。
「な、なんで、こんなこと」
「なんでって、可愛いつぐみが悪い」
「はぁ!? ずっと連絡もしてこなかったくせに、この前の別れてないってゆうのとか、キスするとか、そうゆう冗談やめてよ」
もう終わったと思ってた自分の気持ちがこんなにも揺れるとは思ってもみなかった。
「…連絡しなかったのはごめん…でも、冗談とかじゃないから。俺は今でもつぐみしか想ってないよ」
その瞳は誠実にまっすぐわたしを射抜く。
「でも、困らせるつもりじゃなくて…この前は言い出せなかったけど、もう一度つぐみとやり直したいだけなんだ。…これから、結婚を前提に付き合って欲しい」
大輔と…結婚…。
確かに…、気の知れた大輔となら上手くやれると思う。いつもわたしのこと考えてくれて、優しい大輔となら、二人のペースでのんびり過ごして行けそう…。
こんなにもいい条件…わたしにはもったいない話なのに…どうしても蒼衣くんのことを考えてしまう自分がいる。
蒼衣くんとは、付き合うとかましてや結婚とか…想像も出来ない関係なのに…
「この前の高校生のせい?」