episode.15
わたしの膝で蒼衣くんが横たわっている。しかも息苦しそうに…。な、なんて光景!!
「蒼衣くん、もうすぐ匠海くんたちが来てくれますからね!」
「…つ、ぐ…」
さっきから何度もわたしの名前を呼ぶ蒼衣くんを見て、昨日は自分勝手に八つ当たりしたことを反省していた。
「蒼衣くん、ごめんなさい」
数分後、匠海くんと右京くんが来てくれて家まで連れ帰ってくれた。わたしも責任を感じ、蒼衣くんの家まで送っていくことにした。
かなり立派なマンションに到着すると、エントランスから10階まで上がっていく。
「つぐみ先生まで来てもらって…」
匠海くんが蒼衣くんをベッドに寝かせに行っている間に、右京くんが昨日からの様子を教えてくれた。
「蒼衣は自分のこととなると鈍感で……ただ、俺らはいつでも蒼衣の味方でいるだけだから」
「わかりました」
「蒼衣、何かだいぶうなされてたけど、大丈夫か?」
「じゃ、俺らはもう帰るんで、蒼衣のことよろしくお願いします」
「え!?」
「は? 先生と2人きりとかダメだろ!」
「いいから、匠海行くぞ。ちなみに蒼衣は一人暮らしだから。じゃ、先生、またね」
そそくさと右京くんが匠海くんを引きずって行ってしまった。どうしよう。蒼衣くんの部屋は確かあの扉だよね…様子だけでも見て…
ドタっ!!
「あ、蒼衣くん!」
蒼衣くんがベッドから落ち、ゆっくり起き上がるところだった。わたしは蒼衣くんのそばに行くとケガがないか確かめる。
「な、何でつぐが俺の部屋にいるの!?」
「何でと言われましても…」
蒼衣くんの告白は除いてことの経緯を簡単に説明すると、蒼衣くんが恥ずかしそうにベッドに伏せた。何だか新鮮な反応にいたずら心がくすぐられ、蒼衣くんの顔をのぞきこんだ。
「蒼衣くん、顔を上げてください。蒼衣くんってば」
すると蒼衣くんはわたしをベッドに押し倒すと、顔が見えないように突っ伏した。わたしの両腕は蒼衣くんに拘束され身動きが取れない。少しでも横を向けば、息のかかる距離に蒼衣くんがいる。
どうしよう。またしても心臓が早鐘を打つ。こんな距離じゃ、蒼衣くんに気付かれてしまう。
「調子に乗りすぎ…」
蒼衣くんがわたしの耳もとで話す。
「つぐ、緊張しすぎ」
「だ、だって!」
思わず蒼衣くんの方を見ると、唇と唇が触れそうな距離で視線が合った。
「あ、蒼衣くんお腹すいてないですか!? 何か作りますよ!」
慌ててその場から離れようとするも、蒼衣くんがそれを許してくれない。
「つぐ、嫌じゃなかったら、目閉じて」
蒼衣くんの優しく真剣な眼差しに抵抗することを忘れてしまった。ゆっくりと目を閉じると、自分の心臓の音、部屋の時計の秒針の音、ベッドの衣擦れの音…ありとあらゆる音が大きく聞こえる。
数秒後、蒼衣くんの柔らかくて熱い唇がゆっくりとわたしの唇と重なる。
「つぐの唇、冷たくて気持ちいい」
そうゆうと蒼衣くんの唇がもう一度、わたしの唇に重なった。さっきのキスとは違って少し長いキスをすると、わたしの首筋にキスをした。
「あ、蒼衣くん! 熱が上がってきちゃうよ!」
「つぐ、黙って」
少しばかりの抵抗では到底抗うこともできず、蒼衣くんの唇が鎖骨、胸元まで降りてくる。もしかして、わたしこのまま蒼衣くんと!?
「蒼衣ー? いるかー?」
え!? だ、誰? 玄関の方から男の人の声が近づいて来る。扉を開けたのは蒼衣くんそっくりだけど、少し雰囲気の違う男の子だった。