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どうしてきみは高校生!?  作者: 藤井 頼
15/54

episode.14

「では、みなさん。健康と安全に気をつけて、よいゴールデンウィークを」


家庭訪問も終わり、ちょっとした中休みに突入した。去年の家庭訪問は方向音痴なわたしにとって散々なものだった。そのため、今年はしっかりと下調べをしてそつなくこなすことが出来た。



「お疲れ様です。お先に失礼します」



連日の訪問で初めて会う親御さんも多く緊張したのか、家に帰るとベッドに倒れ込みすぐに意識が飛んでいった。着替えもご飯も食べる気力ももうない…明日は土曜日だし、いっか。



…ヴーーヴーーヴーーヴーー…



さっきからスマホが何度も眠りを妨げる。ベッドに横たわったまま、最大限に手を伸ばすと指先にスマホが当たった。


が、あと少しのところで体勢を崩しベッドからずり落ちた。



「…った!」




スマホの画面を確認すると、蒼衣あおいくんからだった。慌ててスマホをタップすると、蒼衣くんの声……ではなく、匠海くんの声だった。


「あからさまに落ち込むのやめてもらえます?」


そんなつもりはなかったのだが、心の内が…。てか、蒼衣くんのスマホで何の用なわけ!?



「先生、蒼衣が昨日から様子が変なんだけど、何か知ってる?」


「わ、わたし!?」



確かに昨日、なんやかんやあったけど蒼衣くんがどうかなるとは…あんまり考えられない。



「そう! バイトからの帰りに右京の家に寄ってから、自宅に帰ろうとしないで、今もぶつくさ悩み事を呟いてる始末。何言ってるかは聞き取れないんだけど」


「それで何でわたしが……」




「前にもあったんだよ。この意味不明な行動! あれは確か幼稚園のときのゆかり先生に恋してるときだった。本人は気づいてないようだったけど。で、今恋愛関係って言ったら先生しかおらんし! どうなの?」


とりあえず、昨日のことをさらーっと説明して匠海くんの反応を待つ。



「わかった! じゃ、もうらちもあかんからLINEした場所に11時集合で」


返事を待たずに切られてしまった。って今何時!? 10時すぎてるじゃん! するとLINEで集合場所の公園の名前が送られてきた。この公園30分はかかる!


自分の格好を見ると、昨日の服のまま、髪もメイクも昨日のまま!! やばい! 絶対間に合わない!



てか、行く必要ある? ない? ……いや、蒼衣くんがらみだし、高校生を待たせるわけには!!


行かない選択肢を頭から排除して、まずはシャワーを浴びる。最低限のメイクにポニテにした髪。服装はかなりラフで、休日にちょっとそこまでスタイル。とにかく集合場所にたどり着くを第一優先にしてカバンをつかみ家を出た。



てか、誰が来るの? 蒼衣くん本人? 匠海くん? 右京くん? 3人!? あーー、もう! どうしたらいいのー!

電車に飛び乗り3駅向こうで降りた。スマホを取り出しマップを開くと公園までの道のりを案内させる。便利な時代だなぁ。



集合時間5分前に到着した。まだ彼らの姿はない。カバンからコンパクトを出し、乱れた前髪を手ぐしで直す。


「…つぐ」


蚊の鳴くような声が背後から聞こえる。慌てて振り返ると、体調の悪そうな顔の蒼衣くんがいた。


「あ、蒼衣くん」


初めて見る蒼衣くんの私服が新鮮で目を奪われた。顔面蒼白でもそのアンニュイな雰囲気がヤバイ!



「ごめ…。急に呼び出して」


「だ、大丈夫です。蒼衣くん顔色悪いですけど大丈夫ですか?」



「……多分…だめ…」


え! だめなの!? どうしたらいいの!!



「ちょっと、座っていい?」


「ど、どうぞ、どうぞ」



2人で木陰のベンチに座る。5分、10分…と無言の時間が過ぎて、いてもたってもいられなくなってきた。



「あ、あの、何か飲み物買ってきます!」



立ち上がろうとしたとき、蒼衣くんがわたしの腕をつかんだ。


「…ここにいて…」


蒼衣くんの声には逆えず、おずおずと隣に腰を下ろした。さっきより近い距離にドキドキが止まらない。しかもさっきつかまれた手はまだ放されずにいる。


「…つぐ、俺…つぐのこと…」


愛の告白のごとく、蒼衣くんがわたしの腕をつかみ、アンニュイな瞳でわたしをとらえ、そのセリフ! 心臓もたない!



「つぐのこと…す、好き…」



蒼衣くんがわたしにもたれかかり、どうしていいかわからないでいると、何だかすごい蒼衣くんが熱い!


「え! 蒼衣くん!? 大丈夫ですか!」



すごい汗と息苦しそうな感じでわたしの膝に横になった。わたしは蒼衣くんのスマホをポケットから取り出すと、匠海くんと右京くんに連絡をとった。


「…つぐ…」


うわ言のようにわたしの名前を何度も蒼衣くんが呼ぶ。



「あ、蒼衣くん、ここにいます」


そう言って手を握ると少し安心したように微笑んだ。

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