episode.11
恋っていったいどうやってするんだっけ…?
今までそうゆう機会がなかったわけではないが、私にとっては人生を左右する進路以外に大切に出来るものが無かっただけのこと。
周りが恋も勉強も! ってなってる大学時代後半…私はとにかく教師になるための勉学に励んだ。就職後は目まぐるしい毎日に追われるだけで、趣味とか恋愛とかしてる場合ではなかった。
結果、私は今一人で恋に発展するような相手もいない…。
「あれー? 今日は蒼衣くんいないね!」
またまた蒼衣くんのバイト先になぎちゃんと飲みに来ていた。ちょっと会えるかなぁ…なんて期待してたわけではないけど…。
「蒼衣くんもかなり有名な進学校だし、バイトばっかりやってられないと思うよ」
「そっかー、それは残念。ま、今日は楽しく飲もう! で何にするー?」
なぎちゃんは席につくなりメニューを開き『いつもの』をいくつか見繕って注文してくれる。優柔不断なわたしにとっては決断力のある友人は貴重な存在である。
ドリンクが出てくると乾杯をし、それをかわきりになぎちゃんの婚活についての報告が始まる。若いのにしっかり将来を見据え行動しているなぎちゃんはわたしの目標なのだ。
「つぐ! そういえばこの前、奏多に聞いたんだけど、大輔アメリカから帰ってきてるって知ってた!?」
大輔が…日本に? 元気にしてるかな…。
「はは〜ん、その様子だと気になってるなぁ!」
「いや、そうゆうわけじゃ!」
すぐさま否定をする。
「俺はつぐみに会いたかったけどな」
優しいこの声は絶対に聞き間違えない。一気にあの頃へと引き戻される。わたしは恐る恐る声のする方へと振り返る。
「ただいま、元気にしてた?」
そこに立っていたのは大学のとき唯一付き合った大輔だった。大学の頃より落ち着いた感じで細身のスーツがやたらと似合っている。
わたしはうなづくのが精一杯で、それ以上大輔の顔を見ていられなかった。
「座んな! 大輔何飲む?」
「とりあえず生」
なぎちゃんにそう言われてわたしの隣に大輔が座る。恥ずかしいやら懐かしいやらでなかなか大輔に声をかけられないでいた。そんなわたしを気づかってなのか、昔みたいに大輔が優しく話しかけてくれる。
わたしの顔にかかる横髪をよける大輔の指が耳に触れ、心臓が跳ねた。咄嗟に耳をおさえると大輔を見る。やばい、今わたし絶対顔赤い!
「悪い、昔の癖でつい」
そう言うと大輔は気まずそうに両手をあげてみせる。
「わ、わたしこそなんか、過剰反応しちゃってごめん! そうゆうのに免疫なくて、その…」
大輔がまじまじとわたしの顔をのぞく。また余計なことまで喋っちゃった!
「そーだよ、大輔! つぐは大輔と別れてずっと引きずってたんだから」
「な、なぎちゃん。もー、飲み過ぎだって!」
絶対ひいてるよー。もう別れて何年も経ってるのに、免疫ないとか引きずるとか彼氏いないのバレバレじゃん!
「もしかして、つぐみ…俺のことまだ好きだったりする?」
何その質問!? どう答えたらいいわけ?
「あれ? つぐ? 来てたんだ」
「蒼衣くんじゃん! 今日バイトだったのー?」
このタイミングで蒼衣くん!?
「さっき探したのにいなかったじゃん!」
「今日は補講があって、今入ったとこです」
なぎちゃんと蒼衣くんがたわいもない会話をしてる横で、大輔が耳打ちで疑問を投げかける。
「なぎさの彼氏? ずいぶんと若いな」
「いや、その…」
どう説明しようか迷っていると、蒼衣くんが近づいてきてわたしの前にたった。
「オタク誰? つぐにあんまり近づかないでくれる?」
「ハジメマシテ、真咲大輔です。君はつぐみの彼氏? 結構若いよね? 学生?」
「付き合ってはない」
「じゃ、好きなの?」
蒼衣くんも大輔も何の会話してるの!? 蒼衣くんめっちゃ困ってるし!
「ちょ、ちょっと大輔! ふざけてないでよ。蒼衣くん困ってるじゃん。蒼衣くんも仕事に戻って下さい!」
「はー、そうゆうこと」
大輔はビールを一気に煽るとわたしの頬に触れ、色っぽい瞳でわたしをとらえる。次の瞬間、わたしの唇に大輔の唇が重なった。一瞬何が起きたかわからなかったが、すぐに大輔の唇を離す。
「い、いきなり何するの!?」
「俺は別れたつもりないから」
え!? どうゆうこと!!?