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第20話

 その教会にいるはずのない、真っ黒な司祭服を着た男がそこにいた。

「なっ、なんだお前らっ」

 司祭に続いて、五人の男と女が一人。

「お取り込み中のところ失礼。あなたが、噂の修道女様かな?」

 その顔には見覚えがあった。確か、あの賞金稼ぎ二人組に渡された写真の男。

「あっ、あなたはっ」

「話が早くて結構だ。一緒に来てもらえないか?」

 六人が修道女と大男を囲うように歩き出した。その動きは恐ろしく整ったもので、修道女は底知れぬ恐怖心を覚えた。

「おいこらっ、俺を無視するな!」

 このまま舐められてはメンツが丸潰れだ。肩を怒らせた大男が司祭に歩み寄った。

「この人に触るんじゃ」

 それは、一瞬の出来事だった。瞬きする間もなく司祭と大男の間に女が割って入り、腕でとんと突いた。すると大男の動きが止まる。

「あっ、ああっ……」

 すると見る間に腹部から血が溢れ、床を赤黒く染めた。

 ドサリ。男が倒れると同時に、女は袖の下から突き出した刃を納めた。教団、かつてのギルドに所属した暗殺者が用いたとされるリストブレードだ。

 一瞬の凶行に、声を出す暇さえなかった。

「失礼、あまり目立つ真似は避けたい。出来れば、黙ってご同行願いたい」

 沈黙が場を支配した。

 一体、自分に何の用だというのか。いや、この男の事を調べようとしたのが全ての原因なのは理解出来る。では、連れ去ってどうするつもりなのか。それは、全く想像もつかなかった。

 静寂の中に、個人の子供達の声が混じった。今ここで、人殺しに躊躇いのない連中が暴れたら、あの子達に何が起こるのか。

 考えたくない事態だった。

「わっ、わかりました」

「結構。あなたを信用しないわけではありませんが、念のため拘束させてもらう」

 司祭に促されると、女が魔術の手を用いて修道女の手首を掴んだ。恐ろしく精度の高い魔術の手だ。その気になれば、心臓すら握り潰せるに違いない。

「馬鹿な事は考えない方がいい。彼女は一流の魔術師だ」

 そう言われた魔術師は、誇らしげに笑みを浮かべた。

 六つの銃と強靭な手に促され、修道女は教会の外に出た。

「あれ、姉ちゃん? どっか行くの?」

 申し訳程度の門を潜る直前、孤児院で暮らす女の子が修道女を呼び止めた。子供達の視線が、一斉に彼女達に向けられた。

 この男達の注意をひくわけにはいかない。修道女は恐怖心で震える体を抑え、口を開いた。

「ちょっと、この人達とお出掛けするの。すぐに戻るから待っててね」

「うん、待ってる!」

「すぐ戻るから……」

 拘束が緩んだのを見ると、手を振る程度は許してくれるらしい。そっと手を振りつつ、修道女の視線はある少年を探していた。

 少し暴力的で、多分ろくでもない事をしていて、でもきっと悪人ではない。あの少年を。

 探していた白銀は、結局この町で見つける事は出来なかった。

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