乙女、熱に侵される。※
R-15まで行くのかはわかりませんが、ちょっといかがわしいシーンがあります。
イチャイチャ回です。
あの後奴隷商人達は、騎士団に拘束され連れていかれた。
意識を取り戻した彼らは皆、口を揃えて言ったらしい。
『あれは聖女なんてものじゃないーー。女王様である。』と。
私に会いたい、詰られたいと懇願していたらしいが、騎士さん達に一蹴されたみたい。一人は潰したはずなんだけど…おかしいな。こっちは、ただでさえルビィちゃんがおかしな方向に走ってるのに、変な性癖に目覚めた薄汚いオッサンなんか相手にしてられないよね。
「オトメちゃん!ジークなんか放っておいて、私と一緒に泊まろうよぉ〜!」
今はユリウス陛下が用意してくれたホテルの前に私とジークフリード様、なぜかルビィちゃんまでがいる。ルビィちゃんが私の腕を掴み、ジークフリード様が絶対零度の視線でそれを見ている。
ジークフリード様…。その視線、知り合いに向けていいんですか?
私とジークフリード様の間にはちょっと気まずい空気が流れている。…主に私が拗ねているからなんだけど。
「ルビィちゃん、私はここに泊まるから…」
「ええ?オトメちゃん、私、色々頑張るからっ…一緒に寝よ?」
ナニを頑張るのかな?ルビィちゃん。お姉さん、流石にびっくりだよ。
「ルビィちゃん、私にはそっちの気はありません。」
「えー。」
「オトメは俺が好きなんだ。だからお前じゃ無理だ。ルビィ。」
ジークフリード様が爆弾を投下された。
ルビィちゃんの前でなっなんてことを!
顔が赤くなる。私が一人でアタフタしていると、ルビィちゃんは平然としていた。あれ?なんで?
「そんなの知ってるよぉ。一目見ればわかるじゃん。バレバレ。他のスタッフに聞いたけど、二人とも、獣人パークで耳やら尻尾やらお互い触り合ってたでしょ?それって獣人にとっては、お互いがすっごーーく親密な仲にあるってアピールなんだよ?ほんともう嫌になっちゃうよぉ。」
ルビィちゃんの耳がしゅんと垂れる。
…そんな意味があったんだ、だからあの時スタッフさん達、真っ赤だったんだね。
「オトメちゃん、私、恋人が無理でもオトメちゃんのファンになるから!……今日のところはジークに譲ってあげる!」
ルビィちゃんは元気に手を振りながら帰ってきた。
今日のところはって何?次回があるの?
ルビィちゃんを見送ると、ジークフリード様とホテルにチェックインをする。
ホテルマンに案内され、通された部屋をみて、私とジークフリード様は固まった。
所謂、スイートルームというやつでした。
流石、王様です。
「すごい…な。」
「本当に…。こんな部屋、元の世界でもなかなか見られません…。」
キョロキョロとあたりを見渡しながら歩いていると、あることに気が付いた。
「…えぇ!?」
どこを見渡しても、ベッドが一つしかない。
なんでスイートルームの癖にベッド一つだけなの!?確かに大きいけど!?
しかも天蓋付きで、ハートのクッションがたくさん並んでるし…、この中で眠るジークフリード様は素敵かもしれないけれど。明らかにカップル仕様だよね?これ。
…ジークフリード様と一緒のベッドに寝る?…そんなこと考えただけで失神しちゃうんですけど!?
というか若干ジークフリード様と気まずいのに…!ルビィちゃんが変に嫉妬させるから、不完全燃焼で変に気まずいのに…!
私がベッドを凝視していると、ジークフリード様もこちらにやってくる。
「オトメ?どうかしたか…って、ベッド一つか…。」
ジークフリード様もカップル仕様のベッドを見て、顔を顰める。
…ちょっと期待してしまった。もしかして顔を赤くして慌ててくれるんじゃないかって…。
やっぱり、私のことはあくまで妹なのかな…。
「…私、ソファーに寝ますから大丈夫です。」
「いや、俺が寝る。オトメはベッドで休め。…今日はいろいろあったから疲れているはずだ。それに襲われたんだ、怖かっただろう?」
心配そうな顔で私を見るジークフリード様。
いつもなら嬉しくてたまらないのに、今日はどうしても素直になれなかった。
「…あんなの平気です。五人くらいに囲まれて、殴られたことだってあります。」
「…なに?」
ジークフリード様の声色が明らかに変わった。
でも私はこのとき気が付いてなかった。
「私も相手に女の子がいたから、うかつに手が出せなくて…。その後が大変でした、助けに来た兄が本気で切れちゃって…あとからこっちが被害者なのに疑いの目で見られて…。」
「どこを殴られた。」
ジークフリード様が私の肩をつかむ。
その目は明らかに怒気を孕んでいる。思わず口をつぐんだ私を、そのまま抱き上げた。
ベットに降ろされ、ジークフリード様が私の上に覆いかぶさって来る。
「どこだ。」
「っ…顔、です…。」
いつも通りのきれいな顔だけれど、その顔には表情がない。瞳はぎらぎらと怒気を放っているのに、紡がれる声はまるで感情が籠っていないようだった。
初めてジークフリード様が怖いと思った。思わず震える私にジークフリード様がひどく優しく触れる。
「…すまない。怖がらせた。」
顔が近づいてくる。頬に唇が触れた。そのまま滑るように顔中に唇が触れていく。
「…ジークフリード様はずるいです。私がルビィちゃんにどんなに嫉妬していたか分からないでしょう?」
「…オトメ、知ってるだろう?告白はしっかり断っている。ルビィとは何にもない。」
「っそんなこと知っています!」
大きな声が出た。ジークフリード様は少し驚いたように目を見開く。
「…でも!ジークフリード様とルビィちゃんが私の知らない話をしていると…!自分がどんなにジークフリード様や、みんなに依存してるのかって。私は知っているって思いこんでたんです。そう思いこんで、自分の居場所を作っている気になってたんです!…だからこの世界にいることをすんなりと受け入れてた!…もし、ジークフリード様がいなくなったら、私の傍から離れたら…!私は…!」
「オトメ。俺はずっと傍にいる。」
ジークフリード様が私にキスしようとするが、私は顔をそむけてそれを避ける。
「……ルビィちゃんに胸押し付けられてたじゃないですか!どうせ大きい胸がいいって言って、私から離れていくんだ!うわああん!」
「…は?」
子どものように泣き出した私を見て、ジークフリード様はぽかんとしている。
「ルビィちゃんみたいに、ふかふかの胸じゃないもん…。」
私の胸は、慎ましいサイズである。兄には「貧乳でよかったね、胸まで大きかったら手に負えなかったよ。」と言われたことがあった。意味が分からなかったけど、笑いながら貧乳と言ったのは一生許さない。
胸は私のコンプレックスなのだ。ジークフリード様だって、どうせ大きい乳が好きなんだろう。
私が顔を隠して、泣いているとジークフリード様がおもむろに口を開いた。
「…オトメが初眼めてあった日に、俺の手を握りしめたことを覚えているか?」
…謁見の間に入る前のことだよね…?私が思わず、ジークフリード様の手を抱き込んじゃった時の…。
「…あの時、俺の手に偶然だが、オトメの…その胸が触っていた。」
思わず顔から手を取り、ジークフリード様の顔を見る。
その顔は真っ赤だった。
「…それに、お前の胸に顔を埋めたりもしてただろう。」
「……そういえば。」
「…俺は乙女の胸の感触が好きだ。その時から感触が忘れられない。」
そういうと、ジークフリード様が私の胸にそっと触れた。そのまま大きな手で包み込まれる。
「っ…ひ!?」
「…俺の手に収まるくらいがいい。このふにゃふにゃしたさわり心地も好きだ。」
ジークフリード様の手の動きが大胆になる。手のひら全体を使って、感触を確かめるように揉みしだかれる。
体の奥のほうからぞわぞわした感覚が生まれる。
「…ぁ…ジークフリード様っ!…くっくすぐった…いです。」
ジークフリード様の手が急に止まった。その顔が、目を見開き真っ赤になっている。
「悪い…止まらなかった。嫌だったよな…。」
ジークフリード様がそのまま私の上に倒れこんできた。
…恥ずかしかったけど、やさしい顔で見つめられながら、胸に触られるのは…嫌じゃなかったかも…ゔ。
「恥ずかしいけど…、嫌ではなかった…です。」
「…殺す気か。」
殺す気ってジークフリード様が、いつも私を殺しにかかってるんじゃないですか?
ベッドの上でこうやって密着なんかして。どさくさに紛れて、また顔を胸にうずめてるし。
私は目の前にある、ジークフリード様の旋毛を観察していた。
ジークフリード様が少しだけ上体を起こすと、私の顔を至近距離で覗き込んでくる。
どうやら私の上から退く気はないらしい。すごい恥ずかしいけど、ジークフリード様と体が触れあっているのは好きだった。
「オトメ…まだまだ足りない。ぜったいお前から離れないから、もっと俺に依存しろ。」
切なげに目を細めて、ジークフリード様が私の唇に指を這わす。
触れたところから、熱を帯びていく。
「俺がいなくちゃ、立つこともできないくらいに依存すればいい。」
「…そんなの私ダメ人間じゃないですか。」
「それでいい。俺が全部世話してやるから大丈夫だ。立てなければ、抱き上げて移動してやる、飯だって俺の手から全部食えばいい。…風呂も着替えも俺がやるぞ。」
「えっち。」
赤い顔で私が睨めばジークフリード様に鼻にキスを落とされた。
「私がジークフリード様がいないと生きられなくなってしまったら、騎士団の仕事できなくなっちゃいますよ?」
「……大きい椅子を用意するから俺の上に座ってればいい。戦闘の時はそうだな…背中にでも括り付けておくか?…ああ、カイルに怒られてしまうな。」
二人で額を合わせてクスクスと笑う。
コツリと合わさった額から伝わる体温が心地良かった。
「機嫌は治ったか?…嫉妬なんて、本当に可愛いな。」
なんとなくまた妹扱いをされた気がして、首を伸ばして、ジークフリード様の唇に軽く噛みつく。
「…可愛がってばかりいると、噛みついちゃいますよ?大人しい愛玩動物じゃないので。」
ジークフリード様の瞳の紫が、トロリと蕩けたかと思えば、今まで見たことのないような熱を帯びたものになる。
再び胸に手が触れ、荒々しく弄られた。
思わず体がびくんと跳ねて、吐息が唇から漏れてしまう。
「可愛い…。オトメ、可愛い。…もう一度、噛みついてくれ。」
言われた通りにしたら、この後どうなるかなんて、私だってわかる。
でもジークフリード様の熱には、逆らえなかった。
結局、私がもう一度唇に噛みつくより早く、ジークフリード様は貪るように私の唇を奪った。
ジークフリード様、ルール違反ですよ…?
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
感想等いただけると、水瀬は泣いて小躍りします。