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為せば成る。  作者: 水瀬まおり
藤村乙女の初恋
1/32

乙女、異世界へ行く。

初投稿です。くすっと笑っていただければ幸いです。

5/11、大幅に導入部分を変えています。お兄ちゃんの口調を少し変えています。

 私の名前は、藤村乙女。

 普通の家庭に生まれ、特に大きな怪我も病気もなく、両親と少し歳の離れた兄に愛情を注がれ、早18年。


 日本人として一般的な黒髪に、焦げ茶色の瞳。髪は一度染めると面倒だからと染めたことはなく、なんとなく、背中まで伸ばしている。

 髪も肌も、それなりの手入れはしている。身体つきも少し胸元が寂しい気もするけれど、及第点は貰えるんじゃないかな。

 中学、高校時代は、仲のいい友達とそれなりに楽しく過ごした。

 彼氏も何人かいたけれど、長続きせずに、終わってしまった。気の合いそうな人と付き合っては、キスもそれ以上もなく、続かない。それの繰り返しだった。そのうち、何処かの誰かが高嶺の花とか言い出して、段々と告白される回数も少なくなり、男子からはちょっと遠まきにされていたかなぁ。

 高嶺の花なんて、そんな可愛くもないのにね。




 そんな私は、今、人生初の、恋をしている!



「あぁん!抱いて!!ジークフリード様!!」


「ぶふぉ!!!!」


 隣に座る兄がお茶を吹き出した。もう、汚いなぁ。


 そう、私は恋に落ちたのです!ジークフリード様に!


 ジークフリード様と私の出会いは、一ヶ月前。

 兄がこれ面白いから読んでみ?と持ってきた一冊の漫画からでした。

 ストーリーは王道ファンタジーだけど、一人一人のキャラクターが、とても丁寧に作り込まれていて、魅力的。とても人気のある作品で、アニメ化や、ゲーム化なんて話が進んでいるらしい。

 物語は、主人公のリド君が、ひょんな事から聖剣に選ばれ勇者となることで始まる。仲間を集め、世界中を旅しながら、世界を魔王の魔の手から救う為に、勇者とその仲間たちは、激しい戦いに身を投じていくーー。



 私がお慕いしている、ジークフリード様は、銀髪に紫の瞳を持つ、スタイル抜群の美男子。騎士団の副師団長をしていて、剣の腕は一流。

 リド君とは、小さい頃からの親友で、兄貴分です。序盤からリド君と共に旅をして、途中で仲間を庇って怪我を負いながらも、最後まで敵と対峙する。本当に素敵な騎士様なんだよね…。

 なんたって堪らないのが、リド君に見せるお兄ちゃんスマイル!あんまり笑わないジークフリード様なんだけど、お兄ちゃんモードに入ると優しく笑って頭を撫でてくれるのだ!ああ、私もなでなでしてもらいたいよぅ…。


「あの、乙女さん…?」


「兄よ...!私は、初めて恋をしている!ジークフリード様になら、処女を捧げてもいい!」


「妹のそんな話聞きたくない!!てか、ジークフリードって、漫画のキャラクターな?現実にいないからね?抱いてだなんて、そもそも会えないから。」


 もう、これだから歳をとった大人は夢がないなぁ!

為せば成る、為さねば成らぬ何事もってあるじゃない!何事も本気でやってみようぜ!兄よ!


「乙女は、見てくれだけならいいのに、口を開くと本当残念だよな。」


「あー!あー!聞こえませーん!」


  兄だって、プリムラちゃん見て、騒いでたよね?ロック掛けて隠してるみたいだけど、私、兄のスマホの壁紙、プリムラちゃんなの知ってるよ?


  残念なものを見るような兄の視線を無視して、お気に入りのお兄ちゃんスマイルの巻を読み返す。もう日課ですよ、日課。

  このページを捲れば、ジークフリード様のお兄ちゃんスマイル!乙女、胸がドキドキしちゃう!

  興奮を抑えつつ、ページをそっと捲る。

  初めて見たときは、私が衝撃をうけすぎて、身悶えた拍子に、ページが破れちゃったからね。呆然としたまま本屋さんへ行って、気がついたら同じ巻を5冊購入していたのはいい思い出だ。


  ページを捲り終えると、何度見ても素敵なジークフリード様が...!ってあれ…一瞬、光ったような...?


「っ!?」


 漫画本から、指先を伝い、腕に何かが広がってくる。模様…?

 これってまるで、漫画でリド君の身体に、魔力が流れ込んできたときの描写にそっくりじゃない?!


「おい!?乙女?なんだよそれ!?」


「え…?」


 漫画本から伸びる模様はどんどん私の身体に広がっているみたいだ。温かい何かが、模様を伝って私の中に入り込んでくる感覚がする。土が水を吸い込むように、浸透していく。

 何かが満ちていくともに、薄れていく私の身体。

 バサリと床に落ちる漫画本。

 もう指先は光となって消えている。


「乙女!!!」


 慌てふためく兄が、私の肩を掴もうと、手を伸ばす。

 そしてその手は、私をすり抜けてしまった。

 兄が何か必死な顔で叫んでいるが、声が聞こえない。どんどん私の身体は透けて、光に変わる。


 私の第六感が告げていた。異世界トリップ、キタコレと。


 ああ、兄よ。今までありがとう。

 安心してください。引き出しの奥に隠していた、リド君の仲間、プリムラちゃんの女王様本は、私の胸に秘めておくよ。エルフのプリムラちゃんは実は、120歳。エルフだから、年のとり方は人間の1/10、つまりは合法ロリです。…ようじょに調教してほしかったんだね。だから、どんなに綺麗なお姉さんとも、お付き合いしなかったんだね。


 お父さん、お母さん、兄の結婚はまだまだ先かもしれないよ。人のこと言えないけど。

 私は満面の笑顔を浮かべ、叫ぶ兄を見る。まだ聞こえているかな。これだけはどうしても伝えたい。


「うふふ!兄よ...これこそが、為せば成る!だよ!」


「は?馬鹿言ってないで...!」


「心配しないで!乙女は、ジークフリード様と幸せになります!!」



 最後に見た兄の顔は、まるでチベットスナギツネのようでした。





 ▲




 ここは時空の狭間。

 世界の魔力の流れを管理する泉が秘匿されている場所。

 かつて魔王はここを探し出し、世界を掌握するため、魔力の流れを乱していた。

 世界を守るため、神様とやらが創った聖剣にリドが選ばれて、俺はリドに半ば巻き込まれる形で、旅に出て、様々な場所をを旅しながら、戦ってきたのだ。

 その日々も、これで終わる。魔王と死闘を繰り広げた俺達は勝った。あとは、聖剣を使い、世界の魔力を調和させるだけ。

 いつの間にか俺と違わないくらいに強くなっていた、リド。小さい頃から見てきた弟のような存在だ。俺の後ろにいつも付いてきていたのに…いつの間にか隣に並んでいる。

 リドがマリアと手を取り合い、聖剣を魔力の泉にさしこんだ。

 目映い光があたり一面に広がり、リドとマリアを包む。


 先ほどまで激しい戦いを繰り広げていたというのに、俺たちの心は穏やかだ。

 二年間の長い旅。終わりを迎える今となっては、ギリギリで何度も死線をくぐり抜けた、無謀とも言える旅だった。今生きているのが、不思議なくらいだ。だが、その分得たものも大きい。そもそもこの旅が失敗に終われば、未来などなかったのだ。


 終わったら何をしよう。

 王都に帰り、騎士団にも戻らなければ。

 平和な日常が戻ってくる…毎日のように命のやり取りをした自分達は、物足りなさを感じてしまうのだろうか。


 恋人をつくってもいいかもしれない。

 リドとマリアを見ていると、恋愛も悪くないと思う。リドには絶対言ってやらないが。


 目映い光はまだ収まらない。随分時間がかかっているような気がするが、リドたちは大丈夫か?

 …いや、違う。泉はもう光っていない。


 光っているのは…俺の頭上だ。


「何だ…?」


 光が、俺の腕の中に、ゆっくりと降りてくる。

 その光が、少しずつ人の形を作っていく。


 そうして、俺の腕の中に収まったのは、女性というにはまだ少し早い、儚げな、そしてひどく美しい少女。


 艶やかな黒髪が、陶器のように真っ白な肌を際立たせている。うっすら赤く色づいた瑞々しい唇。形の良い眉。長い睫毛が縁取る瞳は、閉じられていて、何色を秘めているのか分からない。

 腕に抱いた身体は軽く、どこもかしくも、ふんわりと柔らかくて、思わずしっかりと抱え直した。意識はないが、特に怪我をしている訳ではなさそうだ。ゆるく上下する胸。

 呼吸のためか、少し開いた唇が悩ましい。


 目が離せなかった。

 早く目覚めて、その瞳が何色なのかを知りたい。


 少女に見惚れていると、仲間たちが驚いた顔でこちらを見つめている。


「ジーク、お前、どこの姫を攫って来たんだ?!まさか…!全部終わったからって、王都に連れて帰るつもりか?」


「馬鹿を言うな…見ていただろう。どこに攫ってくる時間があった?」


「いやぁ、それにしては、熱い眼差しで見つめてるからさ?」


 …リド、その顔は面白がっているだろう。

 兄貴分を揶揄いやがって。お前、そんなところまで鍛えたのか。…いや、元からか。


「ジーク、早く返してきたほうがよろしいかと思いますわ。我が国の騎士が女性の誘拐などと、騎士団の沽券に関わります。今ならわたくしの口利きで何とか致しますから…」


「マリア…リドに悪ノリするんじゃない。」



 この二人は、こういうときばかり息がピッタリだな。

 マリアなんて、最初は冗談の一つも通じなかったというのに。リドの影響…だろうな。


「これは、珍しいですね…」


 魔術師であり、学者でもあるミシェルが、傍らに立つ。

 まだ、目の覚めない少女に手をかざすと、その部分から七色の光があふれ出した。


「この少女には、非常に純度の高い魔力が満ちています。憶測ではありますが、長い間、魔力の流れが乱れたことにより、世界各地で余分に滞っていた魔力を何らかの形で身に宿しした。それを使って、どこかから正常な魔力の流れを察知して、召喚されたのかもしれません。」


 ミシェルには光が現れたときに、召喚の魔法陣が見えたらしい。ただ、その召喚の陣はとても複雑で、一瞬では解読出来なかったと…。


「かわいそうだねお姉ちゃん。遠い場所から、急にこんなところに召喚されちゃったらびっくりしちゃうよぉ…」


 プリムラが、未だ目を覚まさない少女を覗き込む。

 俺も腕の中の少女に視線を戻した。


「ふ…」


 彼女の唇から小さく息が漏れ、瞳がゆっくりと開かれた。


 周りの仲間たちが、一瞬、息をのんだようだった。

 現れたのは、七色の瞳。複雑に色が重なり、角度によって色彩を変える瞳はどんな宝石よりも美しい。


 虚ろげだった瞳に、意思が宿り、煌めく。

 俺と少女の視線が絡まった。


 呼吸が止まるかと思った。彼女が俺に微笑みかけて、


「ジークフリード…さま?」


 俺の名を呼んだのだ。


世界観の設定などはなんちゃってな感じです。

誤字脱字ございましたら、教えていただければと思います。

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