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東方無明録 〜 The Unrealistic Utopia.  作者: やみぃ。
第四章 紅霧異変
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外伝2 執行




 同時刻 妖怪の山 麓




 四方八方から押し寄せる竜巻。

 渦を巻く神出鬼没の破壊の突風、天狗風。

 それらが、自然界ではありえない密度と速度を以て私に迫る。


 だが、それらの全てが私の妖力壁に激突してはあっけなく消えていく。

 この身の元にはそよ風ひとつ届かない。


「則ち、無意味だ」


 天狗風の発生源たちへと告げる。

 冷徹に、淡々と。

 見えぬ彼女らの動揺が手に取るように感じ取れた。


「天魔に会わせろ。二度は言わない」


 今度は妖力を乗せた言葉で告げる。

 一瞬の沈黙。

 が、突然の風音と同時に木の葉が舞う。

 私を囲むように現れたのは、天狗服に身を包む白い髪の少女たち。


 白狼天狗。

 妖怪の山の哨戒部隊だ。

 背には刀、左腕には盾。

 左手で握り、右手で引き絞る長弓。

 (やじり)が煌めき、羽が烈風を纏う。


「問答無用!!」


 白狼天狗の一匹が叫ぶ。

 弦は一斉に離された。

 全方向から異常な加速度で迫る矢。


「ならば無用」


 刹那、即座に全方向へ弾幕を撃ち返す。

 矢の数だけ矢の方向へ放たれる赤黒い光線。

 それらは一瞬で全ての鏃を貫き、そのまま発射源をも貫いた。


「たああぁぁぁっ!!」


 唯一それを突破し、瞬速で近付いてくる怒声。

 見ると、隊長格らしき白狼天狗の少女だった。

 盾には光線をいなした時に付いたのであろう傷がある。


 光速を見切るとは凄まじい反射能力だ。

 再攻撃に移るまでの時間も極端に短い。

 戦闘慣れしていると見た。

 そして、心意気や良し。


 彼女が一瞬で刀を叩きつけてくる。

 礼儀として、私は造成した妖刀を交わらせた。


 飛び散った火花が頬を掠める。

 ほんの僅かな痛みと熱さが皮膚を焼いた。

 欠けたのは彼女の刃だ。

 皮肉にも、これが私に対する最初の戦果となったのだ。


 最後の戦果でもあるが。


「うあっ!?」


 少女の盾に轟速で叩きつけられた紫の鉄塊。

 そのあまりの質量に、彼女の身体は大きく吹き飛ばされた。


綾蔵(あやくら)様に……触れないで」


 突然の暴力の主は冷たく呟く。

 落ち着いた少女の声。

 鉄塊の正体は禍々しい大斧だった。

 彼女はそれを携えたまま、私と白狼天狗との間に割って入る。


「手加減しろミラージュ。殺すと面倒だ」

「はい、綾蔵様」


 簡潔に返事をする紫髪紫眼の少女。

 暗い色彩の服が風に靡き、鉄靴と左腕甲が鈍く光る。


 ミラージュ・ナイトメア。

 私が作り出した暗鬼のうち、唯一自我と心を持たせた個体。

 私の忠実なる従者だ。


「━━ッ!!」


 一方の白狼天狗の少女。

 吹っ飛ばされながら己の悲鳴を噛み殺し、鋭い眼光で私を睨む。

 盾は既に見るも無惨な鉄屑と成り果て、刀は半ばあたりが欠けている。

 それでも無理矢理体勢を立て直し、気丈に空を蹴ろうとする。


「疑符『メーガナーダ』」


 が、即座に止められた。

 現れた鎖が彼女の脚に絡みついたのだ。


 ミラージュが、手に持った妖力札を前方に提示している。

 スペルカードだ。

 先の吸血鬼異変終結後、幻想郷における新たな戦闘規則として定められた命名決闘法(スペルカードルール)

 この状況では決闘自体は成立しないが、その一端を天狗らに示すことはできる。


 今回の我々の副目的はまさにそれ。

 スペルカードルールの実演だ。

 

 鎖が白狼天狗の周囲に張り巡らされる。

 さらにその周りには、中心を向いて静止する多数の矢。

 いつでも殺せる状況だ。


 私はミラージュを手で制す。

 待機命令と受け取った彼女は、静かに頷いてから動きを止めた。


「……貴様の気概と実力に免じて、もう一度だけ猶予をやろう」


 鎖の合間を飛行しつつ、白狼天狗に声をかける。

 私の接近に気付いた彼女。

 即座に右手の刀を投げつけてきた。


 左手を軽く払ってそれを弾き飛ばす。

 指には傷ひとつ付かなかった。


「天魔に会わせろ。私の要求はそれだけだ」

 

 そう言って彼女の目の前で静止する。

 憎悪と恐怖が入り交じった表情で私を睨みつけてきた。

 鬼のような形相である。

 さすがは狼といったところか。


「威嚇したところで仕方なかろう」

「ッ! ッ!!」


 宥めてみるも逆効果。

 人語は解せるはずだが、受け答えをするつもりは無いらしい。


「気概はあれど潔さは無いようだな、白狼天狗よ。……残念だ」


 仕方なく妖刀を構える。

 彼女の顔が凍りつく。


 なに、殺しはしない。

 追って来れぬ程度に傷を負ってもらうだけだ。


 私は妖刀を振り下ろした。




「お待ちください」


 白狼天狗の肩まで。


 上空から聞きなれぬ声がした。

 血を吸うことのなかった妖刀を、己の脇に戻す。


 声の主を見上げる。

 大きな(からす)の翼を携えた女がいた。


「私が天魔様に伝えます。ご用件をどうぞ、強者様」


 黒髪に赤目に天狗服に高下駄。

 手には大団扇。


『アヤという名の鴉天狗です。命名決闘法原案の提示時、天魔の使いとして神社を脅しに来ていました。物わかりは良いかと』


 親切にも、後方のミラージュが心通信で教えてくる。

 やはり鴉天狗か。

 白狼天狗よりか話は通じるだろう。


「賢者の命で来た、无月綾蔵(むつきあやくら)という」

「失礼。鴉天狗、射命丸文(しゃめいまるあや)と申します。お名前、実力についてはかねがね……」

「御託は無用。まずは白狼天狗(これ)を説明しろ。話も聞かずに先制攻撃とはどういう了見だ。宣戦と受け取れば良いか」

「とんでもございません。賢者と争わないという我々山の意思は不変です。この度は哨戒部隊が大変ご迷惑をおかけしました。ご無礼、どうかお許しくださいますよう」


 必死に釈明する(あや)

 鴉天狗とは大妖怪であるが……この様か。


「次は自衛反撃では済まさん。全部隊によく聞かせておけ」

「承知しました。周知を徹底いたします。申し訳ございませんでした」


 私が“強者”だとよくわかっているからこその態度だろう。

 そういう潔さは英断と言える。

 偶発戦闘が大戦争の引き金となった例は、現世の人類においても枚挙に暇がない。

 警備部隊の役割のひとつが、それを避けることである。


 背後(ミラージュ)に手を一振りする。

 少し間があってから、白狼天狗を拘束する鎖が消え去った。

 周囲で静止していた鎖も矢も消失した。


「……!」


 白狼天狗は素早い身のこなしで後ろへと下がる。

 警戒を解く様子はない。

 だが、攻撃を仕掛けてくる様子も見られなかった。


 意識を文へ戻す。

 彼女は私の目を、油断なく真っ直ぐ見ていた。


「鴉天狗、射命丸文。これから私の話す内容を一言一句違わず天魔に伝えろ」

「承知しました」


 頷く文。

 私はそれを確認し、一呼吸挟む。


「此度の異変、手出し無用。妖怪による存在証明の新たな手段を、山頂から静かに見届けよ。……これは賢者から山への正式な通達である」


 護衛の鴉天狗、周囲で呻く白狼天狗、増援部隊の天狗たちにも聞こえるよう、そう伝える。

 紅霧に染まる夏空に私の言葉が木霊した。




 命名決闘法。

 通称、スペルカードルール。

 幻想郷における新たな戦闘規則だ。


 この紅い霧。

 発生源は紅魔館。

 つまり首謀者はレミリア・スカーレットだ。

 吸血鬼異変同様、今回の異変も幻想郷全体に影響を及ぼすものである。


 だが、今回はその中身が違う。

 まず人間に対する直接的な被害を抑えている。

 人里そのものを破壊しようとした前回とは大違いだ。


 解決法も異なる。

 前回は実力戦闘だったが、今回はスペルカードルールで勝敗を決める。

 異変解決に来た人間に対して、レミリアとその一味はスペルカードルールを使って勝負する。


 そうするよう、私がレミリア本人に指示したのだ。

 スペルカードルールを適用する最初の異変首謀者になってみないか、と。

 彼女はそれに乗った。

 本人もこの新しい戦闘規則には興味があるようだった。

 尤も、吸血鬼異変の勝者である私の指示に奴は抗えない運命なのだが。

 言ってしまえば、この紅霧異変の遠因は私なのである。


 スペルカードルールによる異変解決を実演することが、レミリア一味と人間たちの役割。

 それが円滑に進むよう裏方を駆けずり回るのが、幻想郷の強者たる私の役割だ。

 レミリアに対し実力攻撃を行いかねない存在を、私がこうして止めて回っている。

 協力者の照月零(てるづきれい)にも紅魔館付近で張ってもらい、吸血鬼異変の復讐にくるであろう一部の妖怪を止めてもらっている。


 全ては、この異変が円滑に進み、円滑に解決され、円満に幕を下ろすためのこと。

 スペルカードルール浸透のためには絶対に必要なことなのだ。


 スペルカードルール自体は、弱小妖怪を中心に広がりつつある。

 だが当初の懸念通り、天狗や河童といった組織的妖怪は従わなかった。

 従わないだけならいいが、ルールの邪魔をされては困る。

 だから私が圧倒的な力でもって釘を刺して回っているのだ。




「賢者からの通達、確かに聞き届けました。必ずや天魔様にお伝えします」


 文はそう言って深く頭を下げた。

 取り敢えず、これで山の妖怪は黙るだろう。

 紅霧異変解決まで静かにしていろと言っているだけだ。

 拒みはしまい。


 そして、異変解決の瞬間に気付く筈だ。

 スペルカードこそが妖怪を、幻想郷を救うのだと。


「用はそれだけだ。……行くぞミラージュ」

「はい、綾蔵様」


 私は頷き、背を向ける。

 白狼天狗たちが身構えたが、無視して空を蹴る。

 ミラージュもほぼ同時に続いた。


「……お尋ねしたいことが」


 が、すぐ停止する。

 文の声が私を呼び止めたからだ。


「“次”はどちらへ?」


 ゆっくりと振り向く。

 文は疑るような視線で私を見ていた。


「次、とは」

「あなた方の目的は解っています。命名決闘法の円滑な浸透を助けるためでしょう。法を無視しかねない妖怪や集団に釘を刺して回っている……違いますか?」

「そこまで理解しているのなら、貴様ら天狗に釘を刺しに来たのは徒労だったな」

「……そうかも知れませんね」


 冗談口調で返す。

 だが、文は乗っては来なかった。

 仕方なく表情筋から力を抜く。


「最初から目的地は二つだけだ。一方は妖怪の山(貴様ら)、もう一方は……」


 一呼吸挟みつつ、片手を挙げ。


「“地底”だ」


 東へと振り下ろした。

 指さす先は、妖怪の山の麓。


 文は怪訝な顔をした。


「……失礼を承知で申し上げますが……正気ですか?」

「貴様に狂気と見えるのならそうなのだろう。だが狂気だろうと正気だろうと、我々はやらねばならん」


 前置き通り失礼千万な言葉に、私は肩を竦めて答える。

 露骨に不愉快そうな表情をしているミラージュを手で軽く制しながら。


「そうですか。どうぞお気を付けて。強者たる貴方ならば杞憂でありましょう」

「よく解っているではないか。では失礼する」


 軽く頭を下げる文。

 それを見届け、私は真後ろへと空を蹴った。




 * * * 




「あの、綾蔵様」


 緋色の空を翔ける最中、不意にミラージュが問うてくる。

 風になびく紫髪の下から、遠慮がちな紫の視線が向けられていた。


「地底というのは……その、そんなに恐ろしい場所なのですか?」

「ん……ああすまん、伝えていなかったか」


 目を伏せて謝罪する。

 別行動となる零には早期に伝えたが、ミラージュにはいつでも伝えられるだろうと先送りにしていた。

 要らぬ不安を募らせてしまったようだ。


「地底……正しくは“旧地獄”という。賢者(あいつ)でも手を焼くほど危険な場所らしい。天狗が恐れるのも当然だろう。だが聞く限り強者()にとっては障害ではない。そこは安心しろ」


 彼女の目を見てそう伝える。

 その紫眼に自信が戻った。

 不安は払拭できたようだ。


 とはいえ、楽観視されても困る。

 私はただし、と挟んでから言葉を続けた。


「私、もしくは零の傍を絶対に離れないことだ」

「綾蔵様と……レイの傍、ですか? どういうことでしょうか」

「ああ。それはな、」


 話しつつ、視線を前方へと戻す。

 そびえ立つ妖怪の山の麓。

 人妖は立ち入らぬであろう荒れ果てた樹海。

 その中央に、突然仄暗い巨口が姿を現した。




「“妖怪として死ぬ”からだ」


 これが遥か地底へと続く縦穴。

 奈落の底まで続くようなその深い闇を、私はミラージュと共に見下ろした。







 名前:无月(むつき) 綾蔵(あやくら)

 初登場:一章第一話 決別

 種族:大妖怪(暗鬼)

 性別:男

 年齢:500歳以上

 身長:高

 髪の長さ:短

 髪の色:黒

 瞳の色:闇

 能力:抗う程度の能力


 人間の天下となった科学文明世界に“抗う”ことで膨大な力を得、唯一生き残ることができた大妖怪。

 現世の人妖からは、その容姿から“黒服”と呼ばれる。

 幻想郷においては、その実力から“強者”と呼ばれる。

 この物語の主人公。


 所々に赤い線の入った、黒っぽい服を身に付けている。

 その上から外套(がいとう)を纏っていることもある。

 絶大な妖力を持ち、実力面であれば彼に敵う者はいない。

 科学文明下で生き延びてきたため、科学はもちろん、人類の兵器についての知識もある程度持っている。

 闇の霧を自在に操り、そこから光弾や光線、暗鬼、近接戦闘用の妖刀など、様々なモノを生み出すことができる。

 さらには、自身の身体を闇霧として霧散させる、闇霧の状態から身体を再構築する、闇霧で傷を修復することもできる。


 性格は冷徹でやや好戦的。

 言動や態度は厳格だが、思慮深い一面もある。

 かつての彼を知る妖怪や記録はほとんど無いものの、少なくとも200年程前には暗鬼の長として既にこの世に存在していたらしい。

 それより以前は彼自身も暗鬼のひとりだったはずだが、現在は暗鬼を遥かに上回る力を持っているため、妖怪もしくは大妖怪に分類される。


(第一章)

 彼は人類の発展に伴い消失した妖怪の天下を再び取り戻すため、明無夜軍(あかりなきよいくさ)と称して世界中の都市に攻撃を行う。

 これは世界中の都市をそれぞれドーム状の黒い霧で覆い、霧から産み出される化け物“暗鬼”が人間を攻撃するという仕組みであった。

 これにより人類は主要都市を追われ、各地で抵抗を続けるのみとなる。

 また、人類の力が弱まったため、一部の妖怪は復活を果たすことができた。


 計画は順調に進んでいたが、半ばで誤算が生じる。

 綾蔵の遠隔攻撃が、図らずも現世と幻想郷を隔てる結界を越え、幻想郷に甚大な被害を及ぼしたのだ。

 幻想郷の最高実力者である“賢者”は、その報復のため現世に降り立った。

 幻想郷の存在も彼女達が生きていたことも知らなかった綾蔵は驚愕する。

 彼は報復攻撃に対処するも、賢者の圧倒的な頭脳の前に敗北を喫し、彼女の手によって異空間へと引きずり込まれた。


 それ以来、現世は放置されている。

 闇のドームや暗鬼もそのままに。


(第一章~第二章間)

 綾蔵の明無夜軍により、妖怪の避難所である幻想郷は再起不能となった。

 賢者の報復により、妖怪復活の道である明無夜軍は放棄させられた。

 妖怪や幻想の存在を守っていく手段は無くなったかに思えた。

 だが賢者は綾蔵にある提案をする。

 それは“无月綾蔵が存在しない世界線に移動したうえで、勢力図が整う前の幻想郷へと時間を遡る”というものだった。

 それにより、綾蔵や賢者の存在は保証されたまま、妖怪が生き残れる世界を実現することができるのだ。


 時間逆行による歴史改変は禁忌である。

 が、ふたりは迷わずその禁忌を犯すことにした。

 賢者の能力によって世界の“境界”を飛び越え、綾蔵が時間の歯車に対し“抗う”ことによって、世界を飛び越え時間を遡ることに成功した。

 禁忌を犯したこの計画を、ふたりは“時空逆抗(じくうぎゃっこう)”と称した。

 そうしてたどり着いたのが、第二章の舞台“過去の幻想郷”である。


 なお、再起不能に陥った方の幻想郷は、時空逆抗の直前に賢者によって存在ごと抹消されている。

 残され放置されることとなる現世に、余計な混乱をもたらさないための配慮であった。


(第二章)

 時空逆抗を成功させた綾蔵と賢者は、幻想郷の僻地、鈴蘭の咲く丘へと降り立つ。

 時空逆抗に同行させたそれぞれの仲間を探すべく、彼と賢者はここで別れた。


 その後、彼は従者のミラージュ・ナイトメアや、明無夜軍を妨害してきた妖怪の照月零との合流を果たす。

 彼はここが幻想郷と呼ばれる世界である事、我々現世にいた妖怪は時間を遡ってこの幻想郷に来た事、来るべき変革の戦いに備えて我々は協力すべきである事、等をふたりに言って聞かせた。

 それまで敵対関係であった零も、この時点からは渋々彼に従うようになった。


(第三章)

 ある日、幻想郷における人間の居住地である“人間の里”が吸血鬼の配下に襲われるという事態が起こる。

 賢者から伝えられていた変革の戦いというのが今であると確信した彼は、ミラージュと零を率いて鎮圧に向かう。

 幻想郷対吸血鬼の総力戦となるが、後に賢者も合流し、死闘の末に吸血鬼一味を屈服させた。

 一連の事件は“吸血鬼異変”と称された。


 この時彼は、吸血鬼に共謀して太陽を闇で覆いつくそうとした大妖怪、ルーミアとも刃を交え、これを倒している。

 彼にとってルーミアは、配下であった暗鬼をかつて皆殺しにされた憎むべき相手であった。

 尤も、この幻想郷は時空逆抗によって辿り着いた世界であるため、目の前のルーミアは平行世界の別人であったのだが。


 異変終結後、彼は賢者と共に戦後処理と新秩序の形成に力を注ぐ。

 吸血鬼に対しては逆らわないよう制約を課し、ルーミアに対しては封印を施し、人間に対してはミラージュを介して新たな戦闘規則の制定を提案した。

 この時示された戦闘規則というのが命名決闘法であり、後のスペルカードルールである。


 その後、人間たちやそれと親しい妖怪によって、スペルカードルールは完成した。

 綾蔵はそれを確認したうえで、制約下のレミリアに接触し、ある提案をする。

 “スペルカードルールを用いて異変を起こしてみないか”と。


(今章)

 幻想郷全域が紅い霧に覆われるという異変が起こる。

 元凶が吸血鬼レミリアであることは明白だった。

 スペルカードルールによって異変が解決されるよう、実力で異変を解決しかねない妖怪に対して彼は釘を刺し回る。




 名前:ミラージュ・ナイトメア

 初登場:一章第十二話 従者

 種族:暗鬼

 性別:女

 年齢:1歳未満

 身長:やや高

 髪の長さ:セミショート

 髪の色:紫

 瞳の色:紫

 能力:疑心を操る程度の能力


 无月綾蔵によって作られた、綾蔵の従者。

 暗鬼としては唯一“心”と呼べるものを持っており、人間の少女と同程度の知能と容姿を持たされている。

 この物語における、いわゆる従者キャラ。


 暗い色調の服とホットパンツ、ロングブーツを身に付けている。

 闇の霧を操り、そこから光弾や光線、暗鬼、近接戦闘用の大斧など、様々なモノを生み出すことができる。

 さらには、自身の身体を闇霧として霧散させる、闇霧の状態から身体を再構築する、闇霧で傷を修復することなどができる。


 生まれたばかりの頃ほどではないとはいえ、口数は少なく表情も固い。

 綾蔵への忠誠心が強く、命に代えても守ると決めている。

 綾蔵以外の者には決して敬語を使わず、態度も冷たい。


(第一章)

 明無夜軍において、綾蔵からロンドン攻撃とニューヨーク攻撃を任される。

 ロンドン攻撃には成功したものの、続いて行ったニューヨーク攻撃は、照月零の妨害を受け失敗する。

 東京に撤退後、合流した綾蔵の助けを借りて零を撃破するが、直後に現れた幻想郷の賢者らに襲われる。

 混戦の最中、息も絶え絶えとなっていた零に隙を突かれ、背後から刺され重傷を負う。

 彼女は行動不能のまま賢者によって異空間に引きずり込まれ、意識を失った。


(第二章)

 彼女は鈴蘭の咲く丘の片隅で目を覚ます。

 自分が死んだと思っていた矢先、主である綾蔵との生きての再開に、彼女は涙を流して安心した。


(第三章)

 吸血鬼異変解決に動いた綾蔵に、零と共に同行する。

 紅魔館内に侵入しての陽動を引き受け、綾蔵がパチュリーを倒すまでの時間を稼いだ。

 その後、綾蔵がルーミア撃破し戻ってくるまでの間、レミリアを足止めしている零を助けるよう綾蔵から指示を受ける。

 かつて敵だった零との共闘には複雑な思いがあったようだが、その因縁の払拭も指示のうちであり、彼女はぎこちないながらも共闘を務めあげた。


 吸血鬼異変終結後、綾蔵と賢者が提案した命名決闘法原案を人間たちに提示するため、使者として博麗神社に赴く。

 使者としての役割は果たせた彼女だったが、同じ現世から来た存在であることを東雲衛に看破され、冷静さを欠いたまま神社を立ち去ることとなった。

 衛やその妹の明、同行者だった天祈志歩やディエナは、現世においてミラージュの姿をネットを介して知っていたのである。


(今章)

 幻想郷全域が紅い霧に覆われるという異変が起こる。

 主の綾蔵は、スペルカードルールによって異変が解決されるよう、実力で異変を解決しかねない妖怪に対して釘を刺して回り始める。

 彼女は従者としてそれに同行するのであった。




 名前:射命丸(しゃめいまる) (あや)

 初登場:三章後話4 共存模索

 種族:天狗(鴉天狗)

 性別:女

 年齢:1000歳以上

 身長:やや高

 髪の長さ:肩

 髪の色:黒

 瞳の色:赤

 能力:風を操る程度の能力


 古くから妖怪の山に住み着く鴉天狗(からすてんぐ)

 新聞記者を仕事としており、里や神社にも取材のためしばしば顔を見せる。

 “天狗”として行動している際には、服装が天狗服となるほか、背部に大きな黒い翼が見られる。

 大団扇を持っており、これで大風や竜巻を起こせるという。


 彼女は新聞記者であるゆえに情報を掴むのが早い。

 東雲兄妹が幻想入りした外来人であるという情報等も、かなり早い段階で彼女に知られていたようである。


 第三章では、吸血鬼異変収束の翌日、妖怪の山のトップである天魔からの伝言を預り神社に現れた。

 妖怪の山は、賢者の示した妖怪に対する制約が気に入らず、拒むために巫女や妖術師を利用しようとしていた。

 だが直後に現れたミラージュが、賢者からの伝言で命名決闘法を示すと、その場の全員がそちらへと流れてしまった。

 賢者や強者に逆らうのは愚策と判断した文は、異論がない旨を独断でミラージュに伝えた。

 尤も文本人は天魔ほど本気ではなく、できるだけ穏便に済ませようとしている節があったようだが。


 その後は東雲兄妹への取材のため神社を訪れるなど、非常に友好的である。

 だがこの時も、妖怪の山は相変わらず命名決闘法に対して懐疑的であった。


 今章では、スペルカードルール公布に釘を刺しに来た綾蔵と対峙する。

 咄嗟に偶発戦闘をしでかした白狼天狗とは異なり、逆らわないよう慎重に対話を試みる。

 強者である綾蔵に逆らうことは、すなわち賢者に逆らうことであり、幻想郷そのものと敵対することに繋がるからだ。





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