僕の周りにいるのを紹介します
こんな話をすると、受け入れられないのが常だけど、夏だから少しは聞いてもらえるかな。
誰かの目に留まって、どうしたらいいか教えて貰えるかもしれないし。
なので、ちょっと僕の周りにいるのを紹介します。
僕は面白おかしく物語なんて書けないから、箇条書きみたいになってしまうけど、勘弁して下さい。
僕の周りは奇妙なんだよ……。
天袋の人
天袋の引き戸は空けてある。
気持ち悪いから閉めておきたいのだけれど、閉めると中から不服そうにどんどんと音をならされるので。
そこからはだらりと筋肉の無い足が垂れている。
多分大人の足なのだけれど、いかんせん筋肉も色も失った足の様で、男女の区別はつかない。
女のものであったとしても、大して嬉しい事は無いが。
たまに足じゃ無く腕が垂れている時もある。その場合は両腕で、やはり足と同じ有様だ。
ただ、腕の場合は骨の様な左手の薬指からポタポタと液体を垂らしているので、僕はそれが嫌だ。液体は見た感じサラサラしたもので、実際に床を濡らしたりはしないので、それが救いだ。
でも、僕はいつか頭がそこから垂れやしないかと怯えている。
天井の角の頭
なぜかそこだけ薄暗いその角には、大きな蜘蛛のように髪を張り付けた頭が巣食っている。
どんなに明るい電飾に変えても、どうしてもその角だけ薄暗い。
顔はやや左向きで、そのバランスはひどく悪い。
鼻が大きく、目は左が細くながく、右は黒い点ほどで、口は操り人形の様に長方形に開きっぱなしだ。
たまに挑戦するように壁と天井に這わせた髪をサワサワいわせながら、移動しようとするが、どうもうまくそこから動けないみたいで、プルプル小刻みに震えながら「アー、アー」と泣くのが酷く癪にさわる。
一度ビールの缶を投げつけたところ、右目をこちらに向けて、ゆっくりと点を大きくした時は胃の中が冷たくなった。
点はぬめりながら開き、そこから真っ赤な目玉が剥きでて、僕を視界に捕えていた。
一晩中、僕はその目玉に映され続ける羽目になった。
もう、二度とやらない。
ピカソの顔
テレビの後ろから、ちょうどこちらを覗くように芸術的な顔がぼたりと倒れ込んで来る。
テレビの視聴中に胸糞が悪いので、位置を変えたが、無駄だった。
ピカソの絵の様な顔は、顔の三分の一が鮮烈な赤で、四分の一が薄い水色。残りは紫色で、その部分は奇妙に膨らんでいる。
髪はテレビボードから床に垂れて、リアルに揺らめいている。
そのインパクトに、テレビの内容が頭に入らない。
隙間の人
こいつは一番付き合いが長いが、一番よそよそしい関係だ。
とにかく五センチくらいの隙間に目をやると、いる。
後に紹介するドアの裏の人と、もしかしたら同人物?なのかもしれない。
油断すると、青白い手をこちらに触れそうな程伸ばしている時があり、僕はそれがすごく嫌だ。
ドアの裏の人
開けたドアの裏にいる。
洗面所の鏡ごしに、そっと僕を見ている。
風呂場の口
シャワーのホースについていて、たらこ唇。
お湯を出すと、痰を吐くようなゴボゴボした音を立てるので、僕はシャワーを使わない。
朝方、物凄く美人そうな女のキレイな声で鼻歌を立てる時があるが、最終的にはオッサンの様な声でなにやら爆笑して急に静かになる。
朝はやめてほしいと僕は思っている。
早く霊能バトルが出来る奴か、心を通わせて昇天させてやれるヤツが友達になってくれないか、僕はずっと期待し続けている。
でも反面、いなくなったら少し寂しいかなとも思う。
ああもう……風呂場のヤツが歌ってる……。