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尋問

 武装した人間がオークの里に来たとなれば当然、我々がそれを黙ってみている筈がありません。

すぐに里の中でも腕の立つ者が数人集まり、捕らえに向かいました。

女性は抵抗し暴れたようですが、幸いにも両者共に無傷で捕らえることができました。

予期しない事態に、とりあえず誰も使っていない小屋へと女性は連れて行かれ拘留されました。

彼女の目的は何なのか、何故ここに来たのか。


 すぐさま「第146回 オーク円卓会議」が開かれ里の代表者たちが話し合い、あれやこれや議論が飛び交うも、結局何もわかりません。

そこで女性を尋問することになり、不運にも、この私に白羽の矢が立った訳です。

長老曰く「お前頭いいし礼儀正しいから」だそうです。


 私は気が乗らないまま、小屋の前に立ちました。

尋問ってどうするんでしょう? やったことないので分かりません。

私の仕事は顔に似合わず花屋ですし。笑わないでください。


 小屋には見張りが一人立っているだけで、中には女性以外に誰もいないそうです。

ギシギシと軋む木製の扉をゆっくりと開けると、陽光が少ししか入らない薄暗い中がみえました。

中央に机を挟んで向かい合うようにして椅子が二組置かれ、そのかたっぽに女性が縛り付けられています。

扉を閉めて中に入ると、女性は私を睨みつけました。

腰に布一枚という格好の私が言うのもなんですが、服で身体の大部分を隠す人間にしては、やけに露出度の高い服をきています。


 小学生の頃「人間学」でならないましたが、これは確かジーンズの短パンに、黒のタンクトップという着物でしょうか。

豊かな胸の谷間と、小麦色で健康的な太ももがむき出しになっているため、目のやり場に困ります。

オークの目からみても人間の女性は美しいですから。

私は向かいの椅子に腰を降ろしました。

さて、まずは自己紹介からですかね。


「えっと、はじめまして。 私は『シンラ』と申します」

「……」

「あなたの名前を教えてもらってもよろしいでしょうか?」

「……………こ……だ」


 はい? なんでしょう。声が小さ過ぎてわかりません。


「あの、すみません。よく聞き取れませんでした。もう一度お願いします」

「…こっ、こんな人気のない小屋に私を連れ込んで……何をするつもりだ……」


 あ、あぁ。なるほど。

酷いことをされるのではと不安だった訳ですね。


「大丈夫ですよ、何もするつもりはありません。ただ話しを聞きたいだけです」

「ウソだッ!ならなぜ縄で縛りつけている?」

「あなたは剣を振り回して暴れたそうですし、念のためです」

「……………………フン。お前らの魂胆はわかっている」

「魂胆?」


 私は意味が分からず、小首を傾げました。


「オークが若い女性をさらってすることと言ったら決まっている。じ……自分たちの子供を身ごもらせようとっ………」


 そこで女性は耳まで真っ赤にして黙ってしまいました。

ぷすぷすと頭から煙がでています。


「そ、そうだ……。こう言う時はまず、種族の中で一番偉い長が登場して自分の嫁にしようとする筈だ……」


 女性はハッとして顔をあげました。


「ということは、お前がオーク達のボスかッ!?」

「いえ、私は花屋です」


 笑わないでください。

というか、オークが人間を嫁にするなど聞いたことがありません。

人間の間ではそんな風に伝わっているのでしょうか?


「下っ端か……。では、お前はいったい何をしにここへ来たんだ……?」

「あなたのことを尋問しにきました」

「なに……..。尋問……だと……?」


 ごくりと女性の喉が鳴り、ツーと汗が華奢な首筋を伝いました。


「心配いりません。痛いことはしませんから」

痛いことは(●●●●●) か。まるで他のことはするような口ぶりだな?」

「いえ、話しをするだけです」

「まだ言うかッ。ウソもいい大概にしろ、どうせ…………えっえ。え」

「…...絵?」


「エッチなことをするつもりだろう!」


「……………。」

 はい?


「この破廉恥なオーク共めっ! 私にそんなことをしてただで済むと思うなっ」

「ちょ、ちょっとまってください! それは誤解です」

「くっ、このままお前らの性奴隷になどなるものかッ」

「落ち着いて……とりあえず、あなたの名前だけでも先に」

「先っぽだけでもだとっ!?」


 どういう耳をしているんでしょうか。


「くっ.....!!」


 女性は縄を解こうとがんばっています。

が、もがけばもがく程に縄が肌に食い込んで痛そうです。


「くっ、はぁっ………はぁっ………」


 ………………なぜでしょう。

頬が紅潮し、やけに艶のある熱い吐息を吐き始めました。

心なしか目もトロンとしています。


「あの……息が荒いですが大丈夫ですか?」

「この、縄を解けッ!」

「無理ですってば」

「こんなっ.........…..胸を強調するように………何て……厭らしい……縛り方だっ」

「縄がきついんですか?  少し緩めますよ」

 

 私は背もたれに回って縄に手を添えました。


「はうんっ!!(ビクンビクン)」

「え」

「わ、私に触るなこの変態めッ!」

「触れたのは縄ですが……」

「うるさいッ! そのまま私を犯すつもりだろう!」

「違いますよっオーク聞きの悪い」

「いいか、そうことはだな! まずしっかりとデートを重ね、お互いを知り、然るべき手順を踏んでから」

「あ、あまり暴れない方が」

「わわっ」


 言わんこっちゃありません。

ガタガタと体を左右に揺らすあまり、振り子の要領で椅子ごと倒れそうになりました。


「危ないッ!」


 寸での所で私が抱きとめました。

ふぅ、危ないところでした。もしかしたら頭を打っていたかもしれません。

ですが、気がつくと手の中に心地よいふくよかな感触。

イヤな予感に恐る恐るそーっと視線を落としてみると…….。


 女性のたわわな胸を、私の手のひらががっつり掴んでいました。


「な、なっ。ななななななななな」

「い、いえ。違うんですこれはっ!」

「きき、貴様アッ! ドサクサに紛れてどこを触っているッ!!」

「誤解です! 私はただ怪我をしないようにと」

「それで私の胸を揉んだのかっ!? この変態め! どうせ日々この時に備え、夜な夜な屈伸運動をして女を抱きとめ偶然胸を揉む練習でもしていたのだろう!」

「どんな練習ですかっ。してませんよそんな変な練習!」

「ウソも休み休み言え!」


 彼女はスッと大きく息を吸うと言い放った。


「オークがラッキースケベなど、百年早いわッ!!!!!!!」


 なんですかラッキースケベって......。

はじめて聞きましたよそんなコトバ。


「……おい、レディーの胸をいつまで揉んでいるつもりだ」

「す、すみませんっ」


 慌ててぱっと胸から手を離しました。

彼女は私の腕に抱かれながら、頬を赤らめ悔しそうに上目遣いで睨むと、瞳を潤ませて言った。


「くっ………………………殺せッ!!」


 人間もうイヤ。誰か助けて。

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