どうも、オークです。
突然ですが、私はオークです。
はい。緑色をして腰に布を巻き、ゴツい顔をしたあの生き物です。
流石にツノは生えていませんが、人間からは「鬼」と恐れられています。
そんな私ですが、ちょっと今困った状況に陥っています。
ガタっと椅子を引いて立ち上がると、目の前の女性がビクリと反応しました。
炎のように赤い髪を後ろに束ね、気の強そうな鋭い目が私を睨みつけています。
美人が睨むと三倍怖いと言いますが、この女性も大変な美人で、睨まれるとオークの私でも怖いです。
「.........いい加減、この縄を解いたらどうだ?」
その通り、彼女は椅子に縄でぐるぐる巻きに縛り付けられております。
「だって縛らないと、あなためちゃくちゃに暴れるじゃないですか」
「当たり前だっ。黙ってお前たちオークの慰み物になるとでも思うのか?」
「あの.......ですから。何度も申します通り、私たちは何も危害を加えるつもりは…」
「黙れッ! オークの言うことなど誰が信じるものか!」
先程からこの調子で、話がさっぱり進みません。
「ただ話を聞きくだけですよ」
「そんなこと言って、私に自分達の子供を身籠らせるつもりだろうっ。畜生にも劣る奴らだ....」
「そんなことは——」
「いいか、言っておくが」
女性はキッと私を睨みつけると言い放った。
「子供が出来たら名前は私が決めるぞ!」
…...…...…...…...…...…..………。
「はい?」
「どれだけ急がしてくも夕食は毎日顔を会わせて食べるのが夫婦円満の基本だ」
「あのっ」
「家事は半々だ。私にだけ子供の世話を押し付けることは許さないからなッ」
「話を」
「それと寝室は一緒だぞ!」
だから何もしませんってば。
私は溜め息をつき、目頭に手を当てた。
そもそも何故こんなことになってしまったのか……。
ことの発端は、かなり昔の話にまで遡らなければなりません。