佐藤さんの日常 その1
土曜日、目を覚ますとカーテンの隙間から日差しが入り込んでくる。
「もう9時か・・・」
布団から出て、部屋着に着替える。
しばらくすると外が少し騒がしくなった。
「あれ? トラックだ。なんだろう?」
トラックから降りてきたのは業者さんのようだった。大きなダンボールを数人で一生懸命運んでいる。見る限り引越し業者だ。
「あの空き部屋に持っていってるな・・・持田さんの部屋のとなりか・・・」
そういえばと思い出す。
大家さんから新しい入居者の話を聞いていたのだ。よくもまあこんなボロアパートにと自分を棚に上げて、入居者のことを考える。
「お金がないのか・・・それとも何か訳ありか・・・」
色々と考えるが、これ以上考えても無駄だと分かると、思索をやめて新作のゲームをやり始めた。
『アダンソーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!』
翌日、突如アパート中に鳴り響いた叫びに僕は布団から飛び上がった。
「な、なんだあ!?」
慌てて声がした部屋へと向かって見ると、持田さんが悲痛な表情で泣いていたのだ。
もう一人は見ない顔だ。恐らく入居者なのだろう。困惑している。なにかあったのだろうか?
よく見てみると持田さんは一点に集中して何かを見ていた。
あれは・・・虫?
でもグシャグシャに潰れているようだ。
「僕が行くのはマズイかも・・・」
雰囲気からして、割って入れるような感じではなかったので、とりあえず部屋に戻ることにした。
「なんだい! なんか事件かい!?」
大家さんが後からやってきて僕に事情説明を求めてきた。
とりあえず僕の見たありのままを説明すると、
「ああ、あのバカかい。じゃ大丈夫だね」
アッサリと調子を戻して、部屋へと戻っていった。