クローバー
朝早く二人でホテルを出て別れた。
私は学校に向かうためにホームで電車が来るのを待つ。
あの世界が終わってしまう最後の日を見てるような詰め込まれた電車に自ら入らなきゃいけないと思うと憂鬱だ。
馬鹿みたいに人がいて、きっと地球は私が居なくても回るしここにいる人全員が私が今ここで電車に轢かれても『かわいそう』の一言で片付けてしまうんだろうな…
なんてことを考えて
待ち時間を潰すために私は携帯を出してゲームを開いた時だった
「あの、お嬢さん」
後ろから男性の声がしてビクッとした。
急に声をかけられてびっくりしたからか過剰に反応してしまう。
「そんな驚かなくても」
私がその男性を見上げると目尻を細めて笑ってた。
明るい茶髪が印象的で少し痩せ型で顔のパーツはそこまで良くはないけど優しそうな雰囲気の兄さん。
きっと“雰囲気イケメン"と言われる類の人間なんだろう。
「あ、すいません。どうしたんですか?」
「さっき携帯出した時に落としましたよ?」
そこには四つ葉のクローバーの栞。
昔、いつ頃だかは忘れたけど小学校の授業の一環でこの四つ葉のクローバーの栞を作った。
今思えばこの頃からずっと幸せを探してたような気がする。
「私のものになって…か。」
「え?」
「ああすいません。今俺花言葉勉強してて、四つ葉のクローバーの花言葉なんです。」
お兄さんがあまりにも優しく笑うから恥ずかしくなって私は持っていた四つ葉に目線を落とした。
「クローバーになるとまた違った花言葉になるのは知ってますか?」
お兄さんは暇なのか何なのかわからないけど私に絡んでくる。
「そうなん…ですか?」
「はい、クローバーになると“私を思って"とか“約束"って意味になるんです」
そう嬉しそうに話すお兄さんに
私の憂鬱も少し晴れた。
「その花言葉…すごくよくわかります。皆四葉のクローバーばっかり探してクローバーは無視。私を思ってって…思っちゃいますよね…」
そう言うと同時に電車が来て、
私たちはそのまま乗り込んだ。