巡る
「こんな私幸せになれないよ。」
花畑に私はいて数メートル先で幼い私が泣いてる。
あぁ、これはきっと夢なんだろう。
幸せ…それはなんなんだろう。
形あるもの?ないもの?
人を好きになればわかるの?
しあわせ、仕合せ?死合わせ?
どうやったらわかるのかな?
カチカチとうるさい時計の音で目が覚める。
隣には金の凶器にもなりそうなほどのごつい時計をした中年男が寝そべってる。
今は何時だろう、そう思ってムクリと起き上がると半端な時間に起きたからか、寝る前に関係を持ったこの男に揺さぶられ過ぎたのかよくわからないが頭が凄く痛かった。
「まだ2時…か。」
「愛歌ちゃんどうしたの?」
男が眠そうに起き上がってくる。
中年太りのせいで起き上がるのが大変そうだ。
「いや、ちょっと起きちゃって。お風呂入ってくるんで寝てていいですよ」
そう私が作り笑顔で言うと男は気を失うかのようにベットに倒れ込んで眠った。
もう随分愛歌と呼ばれることに慣れた。
私の本名は宮本 紗由理、愛歌は援助交際をする時の『呼び名』でしか他ならない。
きっかけはもう何だったか思い出せないくらいだけど、今思えばきっと馬鹿みたいな理由なんだろうなと思えるんだろう。
脱衣所に入って服を脱ぎ捨てて鏡を見る。
援助交際を初めて半年お客をパッパと捕まえられてたのはきっとこの顔とスタイルのおかげだと思う。
自慢ではないが目鼻立ちはくっきりしててスタイルも申し分ないと思っている。
中学の友達にはこの美貌を妬まれていじめられた。
ただでもあの頃より自分自身汚いと思ってしまう。
それに一番関わってくる理由はこの援助交際なんだろうけど。
お湯を出すと白い湯気が充満して私を包む。
少しぬるいけど考えすぎてしまってる私の頭を冷やすにはちょうどいい温度だった。