植物人間
体毛か芝生になってしまった奇妙な会社の課長のお話。
ある日、植物人間という者が現れた。
その者はよく肥えていた会社の役員のような立場の男であった。
ある時、宴会があり彼はその貫禄を褒められた。
「課長さん。いい体してますね。」店のウェイトレスが言った。
「ありがとう。褒められると嬉しいよ。」彼は満足げだ。
彼は表面上の意のまま受け取っており、その裏に隠れているものに気づいていない。褒めるということは貶すということの裏返しなのである。
「いやぁね。最近、オーキシンが分泌し過ぎてね。困ったもんだよ。」課長は言っていた。
高校時代に生物を専門的に学んでいた社員や農業高校出身の社員は皆して課長の方を見て唖然とした。
人間を太らせる物質はオーキシンではないはずである。オーキシンは肥大成長を促進する植物ホルモンだ。植物ホルモンが動物の体内にあるはずが無い!
課長は馬鹿だと思っていた。そして皆、愛想笑いを浮かべていた。
しかしある時見てしまった。
課長が植物人間であることを…
ある社員の1人が課長の元を訪れた。
「失礼致します。植木課長に用件が有って参りました。」
「どうぞお入り下さい。」
その社員が課長を見ると注射をしていた。
「課長、何の注射していらっしゃるんですか。インシュリンですか?」社員は聞いた。
「ああこれ?知らないのかよ。ジベレリンだよ。ジベレリン。肥っちゃったからさ。身長伸ばさないといけないから。」
彼は普通に言っていたが、社員は驚いて二の句が継げなかった。
「驚くか。まぁ、無理もないか。僕もさ。この身体で苦労したことがあるよ。でも僕の話聞いてくれない?」
「勿論ですよ。課長。私も興味ありますから。」
課長は生い立ちについて話し始めた。
高校時代に植木に恋心を抱いていた少女がおり、その者は顔を赤らめながら話し掛けてきた。
「あ、あの、う、植木さん。わ、私、そ、その。」
「落ち着いて、どうしたの?顔真っ赤にしちゃって。もしかして俺のエチレンで赤く染まったか?」イケメン風にそう言った。
「そ、そうかもしれませんね。私、あなたの事が…」
ここまで言って少女は、恥ずかしさのあまり逃げ出してしまった。
「まぁ、今度、話し掛けてみようか。」
その後、何て言おうとしたのかクラスメイトのその少女に聞いても顔を真っ赤にするだけで、何とも答えなかった。
そして、二週間たったある日のことである。気付いてしまったのだ。体毛が緑色だと。
私は日本人だ。毛の色が洗濯機で洗える墨で染まっているわけでもない。よくよく見ると体から生えていたのは体毛ではなく、芝生であったのだ!
世にも不思議な人が居るものだ。




