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えっと・・・だれ?

僕の目の前には輝きだす人の手がこちらへと、向いている。

物事を冷ますほどの夜の風。魔物と言われる存在の、声が闇へと溶けてゆく。そんな中、僕は自分の頭の中から後悔を訴えながらも、徐々に考える事が出来なくなった。

「逃げられない」何度も見ていてわかった、流れ星の様な速い光。

その速さは、僕の考える事よりも早く、僕が足を踏み出すより早く、僕の声にならない息が口から出るより早く、その手から放たれた光は、僕への瞳の先にある。


手から出た光は、まっすぐと僕の方向へと向かってくる。

音が鳴った、目をつぶった僕の視界。目蓋を通すほどのまばゆい光が一瞬で止んだ。

この瞬間僕は終わった。ただそれだけしか考えれなかった。

目を開けた時には死んでいる。身体を吹きぬけた命が身体から漏れてきっと自分の身体が見えると思ったんだ。

希望もなく、開いた瞳には一度印象深く・・・いや、二度目だ。目の前には鎧の男が、両手で刃を支えるように立っていた。

怒りが来てもいいくらい、目の形は鋭く尖ったように、ギョッと僕の方へと向いていた。

当たり前だ、そんな事は先ほど光が撃たれる前に僕の中でも解った事だ。聞かずにそのまま調子に乗り、突っ走ったのは僕の方なんだ。

呆れられていても、怒られていても当然だった。


無言の圧力が襲ってくる。

僕は言葉をどう出していいのか、正直解らなかった。ありがとうなのか、ごめんなさいなのか、その二つすら言葉として出していいのか悩まされた。

言っていいのかわからないまま、僕は口を開いたり少し閉じようとしたりと崩しながらも顔が下へと向く。

小さい言葉が、僕の耳には大きな声に聞こえた。


「シュビッツ。泣くくらいなら始めから無理をしようとするものではない。それに、こんな事で死んでも、誰も褒めてはくれないだろうに?」


「ごめんなさい」その言葉を出した時だった。力が抜け出たように腰が抜け、地面へと這いつくばるように落ちた。力が入る事がなかった。


「そのままいろ、後でしっかりと全部まとめて怒鳴ってやる」


男の全身へとまた光がやって来た。

同じように腰へと力を入れ、剣を盾にするように両手で押さえる。

当たった時の音はシュッっと軽い音が少し響くだけだったが、ドマノフの身体は少し後ろへと押された。

棒立ちでいた人影は、伏せがれる状況を変えようと走り始めた。同じ方向へと走るドマノフは、その影へと声をかけてみる。


「おい、君を助けに来た!暗闇の中、良く一人で頑張ってくれた!君のおかげで町の外までの被害ですんでいる。正直助かった。町を助けてくれた君との戦闘は避けたいのだが・・・どうだろう?ここいらで戦闘をやめて町で少し休まないか!?」


言葉の最期まで攻撃がやんでいたのではなかった。言葉の途中でも構わず攻撃を仕掛けてきている。手足ははっきりと肉をまとっている、顔も自身の魔法で途切れ途切れ照らされている。細身の体にしては、肩幅に対して小顔な感じで見受けられる。

少しずつだが、わかってくる青少年の顔。うつった瞳には瞳孔が見えない・・・いや、意識がもうろうとしているものかと、言うところだろう。

少年は、疲れて何も考えていない。ただ迫る影に向かって、今まで培われた経験(もの)で戦っている。

どれだけの場所で、どのような戦いをしていたのかは解らないが・・・疲れていても尚、動ける彼は、一級騎士以上の物だろう。

とても、正式に戦いたい。


だが、早く決めないといけない。


少年の後ろにもう一つ、別の影が近づいてくるのが目に映る。

骸骨だった。数はもういないと思っていたが、見逃しがあったようだ。一体隠れるように身を小さくして、迫ってきた。骸骨は影の背後を捕るように、近づいてくる。

普通だった草を分ける音が解るが、少年と私はお互いは知っている。しかも疲労をしている状態となれば、もう周りは見えていないだろう。

光はマルノフの横をそれた。まっすぐと影へ向けて走った。

光を防いでもよかったが、間に合わないだろうと私は決断するしかなかったのだ。

何だ迷うことはないのだ、私の鎧は、ある程度魔法攻撃への防ぎを主にしている物だから厚い所で防げば必ず衝撃だけで済む。無理に力を開けて撃ってこない事を望みながら、影へと急接近を試みた。


少年は一度立ち止まり、後ろへと下がろうとした。


「まずい!後ろへ行くな!」


そう叫んだ言葉に反応するように、後ろヘと振り向く。

正直、聞かないとばかり思っていた言葉に反応してくれたのだ。少し安心できたのは、言葉にする事でもなかった。

後ろの背を低くして来ていた骸骨は、目で見られたことを確認した。身体を元に戻し走る速度を上げる。

走る私の速度より早く、接近した骸骨は剣を振り下ろす。

一度、二度。何度も振り下ろすがその振りを予測するような動きで、少年はかする事なく避けてみせる。少年が綺麗に避けてくれたおかげで、骸骨の次の攻撃が来る前には、腰椎と骨盤の間を切り捨てる様に、一撃を加えた。

少し前に骸骨の足を砕いたのだが、砕かれた部分が足の様に使って攻めてくる。次に攻めるは頭蓋骨。砕けば消える。


下半身が無くなった骸骨は、地面へと崩れていく。空いた左腕で骸骨の首を掴み込み、まっすぐと剣を突き立てる。


――ころ、せ――こ、ろせ――


何処からか聞こえる声を残しながら、霧のように消えていく骸骨。

殺せ、そう命令されているのか、本能なのかは知らないが魔物の騒ぎが問題になるのは間違いはないだろう。城への報告を早くしなければな。


後ろへと体を向ける。強い少年を確保することはできなかったが、あそこで横たわって寝ているシュビッツを、急いで町に運ばないとな。その後で起きたたら何か言わないといけないが、何から言った物か。


(今日は、朝から面白い事ばかりだ・・・)


異常なほど、青ざめたシュビッツを私はおぶるようにして、町へと運ぶことにした―――――――――





――――朝、僕は目を覚ました。

日差しを浴びるようにして、視界は白く広い物を見つめる様に目が覚める。


「てん、じょう・・・?」


僕は、何処かの部屋にいる。余りにも見慣れない場所だった。そのせいか、とても違和感があった。違和感の正体は解っている。

【部屋が】ではなく。建物への立ち入りに違和感があった。今まで、家の中で寝た時の記憶は無く、正直こうやって天井を見上げながら寝ている事に、もどかしさも感じる。

それに僕が寝ているのは、何とベッド。柔らかな感触を味わいながらも、布団に身を隠すように僕は静かに横になっている。

正直、とても幸せな気分なのだが・・・裏腹では羨ましかった。


そういえば何故、僕はこんな所で横になっているのだろうか。

耳を清ませば、鳥の囀りが壁の向こうから聞こえる。外で寝てた時はあまり耳にする事の無い、壁を通しての自然の声は。僕には、とても新鮮に感じれた。

微かにクツクツと一定のリズムを刻むように、何処からか音が聞こえる。

足元からかな?目線を足元へと向けるように音の正体の方向を見つめてみる。僕の足が向いている方角は一つの木のドアがつけられている。音はドアの方向から、微かに聞こえるようだ。


(あれ・・・?)


よく見ると、視界の端に見えるのは・・・。

僕の横にもう一つベッド。そして、ベッドどうしの間に何か細い鉄の棒が立っている。鉄の棒の上にはひっかけがあり、何か透明な袋状の物がひっかけ吊るされている。

透明袋には、水みたいに透明な液体が入っており。液体は、袋の下から垂れているチューブをつたって、僕の身体へ向かっていた。

得体の知れない物が、身体に流されているという状況は、とても怖いものがあるな。

あまり考えたくはないのだけど・・・大丈夫だよね?


手につながっているチューブを見ながら、思い出した感触がある。重たい棒を振り上げる様な感覚で、僕は天井へと向けて手を突き出す。


僕が、魔法を撃ったのは確かな事だった。嬉しくは有るはずなのに、予想以上に気だるさに襲われている今の状態。何で急にあんな風に魔法が使えたんだう?


――コンコン――


ドアを軽く叩く音が鳴る。

ドアノブのまわす音が聞こえた後、続くように開くドア。そこから見えてくる人物は、白い白衣を着た、細い線の20代後半と言った感じの男性だった。

少し薄い水色の髪の毛と、同じ色の瞳。メガネから見える少し垂れた細い目は、どことなく優しそうだ。

コツコツと靴が床に当たる音をたてながら、落ち着いた歩き方でゆっくりと近づく。

ベッドの近くにある椅子を引き、僕の横へと腰を掛ける。男性からは、部屋と同じ変わった匂いを、白衣から強く匂う。


「やぁ、気分はどうだい?」


「えっと、」


(だれ?)


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