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謎の飴

筒井さんと、僕は男の体力が安定し他後の出来事が今から始まった。

「変体さん」と、筒井さんはさきほどから変わらない淡々とした言葉を僕へと出す。僕は焚き木の火から目をそらし、筒井さんへと視線を向け続けた。僕は透き通る黄色い瞳をまっすぐと見つめる。

先ほど筒井さんが言った言葉を、自分に言い聞かせるようにもう一度ゆっくりと自分自身で呟く。


――変態さん――


理由が解らないが、筒井さんが誰に対してかは理解をした。僕だ。彼女の瞳の映る先には僕がいて、その変体さんが僕だという事に。


いきなりの変体さん呼ばわりに「はい!?」僕は間を一つずれたが、その言葉に対して正直驚いた。

いきなりどうした!?何でそんな風に呼ばれているんですか!筒井さん?僕は何もやってもいないし、やった記憶もないですよ。

さらにさらに言葉を入れるなら、民衆の視線を行く大通りをパンツ一丁で歩いていることもない。知らないおっさんでその姿を見た事はあっても、したことはない事を!僕はここに誓おう!心の中でだけど!!

僕は心の中でただまっすぐ、筒井さんの見つめる瞳を見つめ心で叫ぶ。拳は自分の意志では強く握る。


まっすぐな瞳は今も僕へ向く。理由は解らないが、一刻も早く誤解を招かなくてはこれは速く印象の回復をしなくてはいけない。このままにしては、僕の名前が変態を入れた何かになってしまう。

手を開き、自分の胸に当てながら主張する。


「身に覚えがないんだけど、いったいどのタイミングで?」


筒井さんは、自身のお尻を撫でるように手を置きながら。


「初めの着地した時の事です。水中から、私のお尻に顔を押し付け臭いを嗅いだ後。あろう事か手で私のお尻を、叩くという高度なプレイをされてしまいました」


まるで、下心丸出しで狙ったような言い分がこの間に言われる。

これは事故だ、完全なる事故。オーバーリアクション、被害妄想もいいくらいの言いがかりだ。


――何てことだ、そんな所を触っていたのか、うらやましい。感触をちゃんと覚えておけばよかったと後悔するばかりだ――


じゃなくて自分の、今の悔やみは後にしておいてだ。


「それは僕のせいじゃないでしょ!?」


勝手に踏みつけて僕を変態呼ばわりされるとは思ってもいなかった。むしろ尻を押し付けて、水中で昇天させようとしていたのは筒井さんじゃないか。

僕が勢い任せに言葉を出そうとした時だった。一つ。また筒井さんから少し間を置かれて言葉が続く。


「冗談です。筒井式メイドジョークという物です。楽しめましたか?」


感情のこもってもいない、ただ軽く、笑う事もない筒井式メイドジョークを言葉にしたメイドは、子供のガキ大将が威張るように「エッヘン」と、言葉を当てながら腰に手を持って行く。

このメイドにジョークとはなんなのかと言ってやりたいぐらいだ。別に僕自身ジョークは上手くはないが、彼女みたいな棒読みはしないだろうしわかりにくい感じでジョーク何て言わない自信はあった。

だが今は、その光景を見ていた僕には、ただただどうしようもない気持ちで受け止め、まっすぐ見つめるメイドの瞳は、貴方の行動ですよと言っているのだ。


ならば僕はここで言ってしまおう、はけ口の無いこの気持ちを、いってしまいましょう


「楽しめないよ!冗談ならもう少し感情を出してもらってもいいじゃない?むしろそのせいで冗句だとわかりにくいよ??」


僕は返すように、簡単な感想をぶつける。それは簡単に言うと「そのジョークはゼロ点ですよ」と、言っている物だ。彼女がこの後何と言うかはわからないが、実は少し変えるだけでこのジョークはよくなる。あと少しと想いつつ、裏では彼女の謎を考えていた。

何故、彼女がいっさい感情の無いのか?さらに声のトーンが一つも変わらないような状態で、先ほどから喋っている事さえ謎でしかたがないのだが。少し知り合っただけで、それだけの事がわかる様な事ではなかった。


「ところで。冗談をやめていただいて、名前だけでも聞いて良いですか?貴方や、変体さんでは他の方に迷惑ですから」


「僕の名前の呼び方のせいで迷惑かけているのは筒井さんですよね!それは?」


表情一つ変わっていないが、良い変化球がここで来た。感情のこもっていないなりの僕を悪者に見せた、あたかもジョークを僕がいったような見せ方だが、周りに人がいたら「面白い打ち返しを見せましたね」と言ってもいいくらいのものでした。


相手の言葉を待つ二人の間に、しばらく沈黙が続く。

筒井さんから何か言うのを待とうとしたのだけど、結果的に僕から口を割る事になった。

あのまっすぐと見つめる視線は、一つも瞬きをすることなか卯見つめてくるのだ。それでもたいした事なのだけど、眉一つ体の動き一つがまるで時間が止まっているような硬直を見せつけてくる。

僕はため息交じりの口を開き、降参だと言うように両肩のラインまで手を軽く上げて見せる。


「負けました、バルコ・シュビッツ。これが僕の名前です」


いかにも痩せ細った僕が持ったら合わない名前だ。自分でも自覚しているし、変えられるなら、ぜひ変えたいとも思っているくらいだ。僕もまた、被害妄想を膨らましすぎているのかもしれない。

名前を聞いた後の筒井さんは、小さく名前を呟き頷くだけだった。

名前を言って何かリアクションをしそうな人には見えなかったが、どう呼ばれるのかは興味があった。彼女メイドさん、きっと何か言葉が付くにきまっている。


「シュビッツ様・・・シュビッツ様と呼んでも?」


「え、」


期待のし過ぎで冷めの方がひどかった。何の語尾も何かしら変わったよばれ方になる物だと思っていた僕の考えは、やっとの思いで大気圏に突入してきた隕石はさめきった惑星へと入った瞬間ぐらいの差で冷めて行った。


とは言った物の、人に名前を教えるのは知り合い=挨拶の数と言っても過言ではない。

この数少ないシュチュエーションの中で結構限られた回数ぐらいの物で、名前の呼ばれ方では冷めた物の、僕自身それだけでも凄くドキドキしていた。

何故なら、今の僕みたいな状況の奴には友達はおろか人が寄ってこない。そのため、自分の名前を教えるなんて両手で数えるくらいしかいないのだから。

そんな僕が、こうやって名前を他人に教えるのは何時振りだろうかと思い出すと、実に5年ほども前になる。この5年は、他の誰ともまともな会話をしていない事も含まれている。

思い老けるように昔の友人の顔が少しだが思い浮かぶ。昔の知り合いがいなくなって、もう5年になるのか。ずいぶんと長く感じるな。


「えっととは?他の名前がよろしかったでしょうか?」


さらに考え始める筒井さん。

僕の軽い発言は、筒井さんの首をかしげることへとつながった。


「あ、いやゴメン。何でもないんだ舐めに関して何かあるわけじゃないから、気にしないで」


慌てて手振り素振りうごかした僕に、筒井さんは先ほどより少し首を傾げられたものの「・・・わかりました」と、頷き僕の呼ばれ方がまとまった。


座り込み魚を焼きながら静かな時間を過ごしているとん?何かを僕聞き忘れているような事を思い出した「筒井さん?」そう一言を僕は思う。


「はい?」


言葉には筒さんとだしているが、彼女の名前をぼくは一度もフルネームで聞いていなかったのだ。


「筒井さんのフルネームってなんですか?始めの時も、確か筒井って文字しか聞いてなかった気がするんですが?」


彼女は僕の言葉に対して、淡々と言葉を返す。


「筒井、が私の名前ですのでこれがフルネームでございます」


「えと、それはファミリーネームじゃぁ無いですか?」


「ファミリーネーム・・・? よくわかりませんが、これが私のフルネームですが?」


何も考えてないって事ではなく、まるで話にならないのだが、本人は嘘を言ってるわけでも冗談を言っているわけでもない。ただそれが名前だと彼女自身言い張るばかりで、彼女は筒井以外の名前を教えてはくれない。


僕は考えた、メイドというのは、名前を明かしてはいけない存在なのではないかと、正直メイドを正しく知っているわけではない。何を隠して名前が筒井になっているのかは解らないが、きっと理由があるのだろう。


少し強い風が吹いた。強い風に起こされるように、火の近くで意識を失い横になっていたメイド服の男は気が付く。


「気が付かれましたか?」


「ん、んん」


目を開け眩しい日を、遮るように手を目に当てる。


「ここ、は、どこだぁ?」


落ち着いたゆっくりとした声。不精髭が服で擦れる音。男の眩しそうな目。

自分の視界がはっきりしたのだろう、男は細い目から見える微かな瞳が、僕と筒井さんの顔へと向けられる。僕らを見てさらに男に疑問ができた。

「お前らは?」と、言いたそうな目つきで二人の顔をしばらく見つめる。

見つめている中で、僕は男に「おじさん憶えてない?」と、川から流れる前の事を聞くように声をかける。

「何をだ!?」少し怒った口調で聞き返す男は、頭を押さえながら体を起こそうとする。

男は、まだふらつく体を起こそうと力を入れるが、うまくいかない。続いて上半身だけ起こそうとするが、腕にうまく力が入らないようだった。


「おじさん、まだ起き上がらない方が!」


僕の止める声は聞こえていないようだ。男はそのままそ力を入れ、上半身を起こそうとする。筒井さんは背中を支えるように手を、男の背中にまわす。


「・・・すまんな」


男の身体はふらついている物の、意識ははっきりとはしていた。まず男は周りを見渡した。

気が付いたら、知らない二人の近くで焚き木に温められ寝ていたのだ。男は僕と筒井さんの顔を注意深く細い目で交互に見る。身体を動かそうとしたが少し動きを止める。

男の視界の隅には見た事ある建造物がみえる。木造で作られた町の外装を目にした時、何か納得がいった様だった。

男を見ていると、違和感が生じた。男はさほど混乱をしていないのだ。

普通は知らない人物が周りにいて、先ほどまでいた場所と違う場所に居れば混乱を起こしてしまってもおかしくはない状況。

男はただ冷静なのだろうか?それともこういったトラブル事にはなれているのだろうか。どちらにせよ違和感を覚える。


「ここはぁ、町の外かぁ。ところで、お前らはなんだ?」


此処で僕は違和感を持つべきだったのだろう。男の瞳はまっすぐと二人を見ていた。先ほどまで眉に押されたまぶたはほぐれ、押されることのない目は今開いている。僕は名前を聞かれたと思い名前を答える。

だが男は「違う」と、一言つけ言葉を続ける。


「トムだか、バルだか、ミセスだか知らんが、お前らの名前なんて興味はない。違和感だ・・・。町にいる連中とは差別やそんな感じの、気品とでもいうのだろうか?・・・違うなもっとこう大切なものでの事だな。お前ら二人に、俺はとても違和感を抱いて質問しているんだ」


よくわからない大切な物?違和感?さらによくわからない事を男は頭に指を当てながら一通り喋る。

一通り喋り終えた男は、足腰に力を入れ、メイド服のスカートの裾を、地面から離し立ち上がる。

ふらついた体を整えた男は、そのまま腕を振り筒井さんへと指が刺される。


「お前はなんだ?・・・。まさに不自然。ザ・不自然だ。逆に町とか人とかいうものではなく・・・不自然だ。自然に見せているからこそ、不自然だ」


筒井さんとじっと見つめる男へと、僕は発言するが聞いてはくれない。立った男は筒井さんへと顔を近づけしばらく見つめる。

先ほどまで喋らなかった筒井さんは口を開く。


「よくわかりませんが、私からは貴方が何を言っているのか理解できません。私からは貴方がザ・不自然や、ザ・キチガイにも見えてしまう」


ただその言葉は、先ほどまで変わらない感情のこもっていない筒井さんの言葉だが、何故だか筒井さんも男を威圧しているように感じれた。

筒井さんの言葉にも、男は何も返すことのないただしばらく見つめ、隣にいた僕へと体を急に向け顔を近づける。急な事で体を少し後ろへと下げた僕へ。先ほどと変わらない距離を保とうと近づいてくる。

僕は先ほど筒井さんが言ったような言葉を、とっさに僕も言った。


「僕からも、貴方が変に見えます・・・」


「なるほど、」


男は一度瞳を閉じ2歩離れる。しずかに瞳を開きながら僕へと言う


「トム、お前は何もないんだな・・・。お人よしというか臆病というか。人が来れば離れようとする。そんな感じか?だが、よくわかるぞぉ」


「さっきから何なんですか?」


少し笑いながら喋る男に、睨むように僕は男へと視線を送ると、さらに言葉が続く。

会話が、成立はするわけではない。そして会話をつなげようとしない男と僕は話している。

不思議な光景だろう、無視して動けばいいだろうに。誰もがそう思う。


「ところでお前、魔法(ちから)を使わないのはなんでだ?知らないわけないだろぉ?こんな世界じゃぁ苦労するだろぉう?今日も少し魚を欲してやって来たんだろぉ?」


驚いた、自分の行動がまるでみられていたような、知っていたような事をこの男は口にしたのだ。

正直訳が解らないが、いきなりこんなことを言い出す人間なんて普通いない。まるで常識がない、まるで僕みたいに何かが少しない感じだろうか?常識の枠を持っていない。

だが、気になる言葉をずっと言葉にする男は気になってしまう。

そう男はこう言った、「力がないお前は、こんな世界じゃぁ苦労するだろぉう?」と、気になる言葉を出している。初めての僕の事を知っているような言葉もだ「今日も少しの魚を欲して」と、言動で語りかけてくる。


「力って?なんですか?」


一つづつ必死に受け答えをしようと決めた僕は、男の言葉に耳を向ける。


「お前、魔法ってしっているだろ?それだよそれ?・・・知らない事はない、むしろ欲しいと思っているだろ?」


その人物には壁がない。簡単に言うと、人が触れられたくない、隠している部分に平気で触れてくる。それは僕に対してなのか、他の人物も含めてなのか、僕ら二人に対してなのかは、明らかではないが壁は存在しない。

しかもそれは、差別をしたいわけでもなく、ただ確実に本人の今と欲しい物への【欲求】や、こうあったらいいなという【願望】と言うべき部分に差し障る言葉ばかりだ。

本人がそう一度でも思った事を言っているのだ、僕は気になってしまう。


「知ってはいますけど・・・今更、今更望んだところでとおもってます」


「まぁ、そうだたな・・・わかる」


男は理解したように離れた。


「人として不便な小僧に、現在の物真似(なりきり)人形か。また変な奴らに当たったものだ・・・。良いだろぅ」


男は呟き、焚き木の近くにある自分の服を見る。


「なるほど。俺はぁ、メイドに転職してたのか。そんなクエスト受けるきもないが」


男の頭の中では、メイドに転職したことになっているのか。となると見た目は変わってもらいたいものだな。不精髭を生やしたメイドっていうのも、かなりインパクトは強いが、できれば女性にも転職をお願いしたい。

何処かに男と女を性転換ができる扉があるなら、すぐにその扉へと案内してあげたい限りだ。


「冗談だ、おじさん式物知りジョークだ」


よくわからないぐらい回転したおじさんは焚き木の近くでかわいた自分の服へ向かう。そこで早々と、少し人間離れした速さで着替え、メイド服を筒井さんへと返しに行く。


「ありがとうよ」


手で、頭をポンポンと叩いた男は、先ほどまで見せなかった顔を見せ、筒井さんから手を離す。


「・・・」


筒井さんは何も言わなかった。言えなかったのか、何も言いたくなかったのかは解らないが、口を開かなかった。

男は自分の服のポケットから、白い布に包まれた丸い玉を一つ取り出した。

男は「小僧」と、一言言って玉軽く投げる。受け取りやすいくらいゆっくりとした丸い布は僕の手へと渡る。


「それは、飴だ。変えたきゃ食え。------だが、人からもらったもんだ、それは俺の中では良い答えだが・・・お前にはそれがヒントぐらいだろう。自分が結果にたどり着いた時がそれは答えだ。ヒントは悪魔で、その人物が信じて活かした事で意味がある言葉だ。ヒントを活かしたければ・・・それを舐めるといい」


そう言葉を残し内側のポケットから小さなガラス瓶を出す。

僕がこの飴が何かを聞こうとしたら男の足元にはビンが落ちていた。

そのまま男の足元へと落ちた小さなビンから想像もつかないくらいの、ピンクの煙があふれ出た。煙が消える間に、何か聞き覚えのある鈴の音が聞こえた気がした。


「そうだ、飴の成分は保障しよう。俺は楽しくない話は聞かないが・・・嘘は言わない誇りのある魔法使だよ」


わずか二、三秒ほどで煙は消えた。頭には男が残した言葉と鈴の音は少し残るも、そこには男の姿はない。ガラスの破片が下に落ちていただけだった。


「何だったんだ?」


一歩間違えたらキチガイの男は、何を伝えたかったのだろうか?手にある白い布に包まれた飴を見つめる。「変えたきゃ食え」と、男の言葉が頭の中に残る。


(それ)を、舐められるのですか?」


正直どうなんだろうか?男は人の壁を無視し、会話を進めてこれを独りでに渡してきた。使うか使わないかは男も強く指図していたわけではないが、どうなんだろうか。

先ほどの会話は自分が欲しがっている物への、ヒントをくれた様だった。これがそのヒントかは正しくは解らない。舐めて答えを出すにも勇気がいる。

怪しい男からもらった飴。これは少しだけ考えてみる事にしよう。保留をした僕は小さなズボンのポケットへと、飴を入れる。


「解らないんで、今は保留をします。勇気が出たらなめてみようと思いますけど・・・」


それにしてもだ、不思議な男だった。自分の事を魔法使いと評していたが、何処までが本当だろうか?


「解らないですね」


僕の言葉には自分に言った事と、筒井さんに向かってと二つの意味を入れて呟いた。

簡単にそっけなく「そうですか」と、返されはしたが、筒井さんにも良くわかてないのかもしれない。

今筒井さんが自分の頭に手を置きながら、何かを整理しているが。多分僕等では解らないだろう。本人にならない限り、糸や、目論見などは。


「さて、」


言葉を区切りながら空を見上げる。


「もう少しで夕方になりますね?どうしますか?」


昼を過ぎ、太陽は山の向こうに隠れていこうとしている。僕は町に帰って適当なところで寝るが、筒井さんは当然屋敷に帰るのだろう。


「私は屋敷に帰って、このブーツの事をもう少し試すことになると思います。」


言葉の後筒井さんは一瞬でメイド服へと変わった。空中を黒い影が待った。先ほどはメイド服だったが、今度は僕のローブが空中で綺麗に立とまれ、筒井さんの両手に収められていた。

流石と言うべきか、何と言うか。メイドは、人としての格が違った。


両手にたたまれたローブは「これを」筒井さんの手から僕の手へと戻ってきた。

受け取った時に彼女は言葉を続ける。


「そのポケットに入れられた飴は、食べても損がないのではないかと、不思議と思っています」


正直どうしようか迷っている飴だ「そうかな?」言葉を隠すように短く言っているが「あのおじさんからもらった飴だし、とても不安だ」少し言葉を付けたしたかったが、筒井さんが言った「不思議と」と、言っている部分がよくわかる。

僕も不思議とわかる。何故だか僕の事を知っていた、あのおじさんだからだろうか?正直言葉にはしにくいが、不思議となめてみようとも思えた。


「まぁ、もう少しだけ考えておきます」


「そうですか」


そう言葉を残した筒井さんは腰を折り「では」と、一言重ねて足元に白い光の粉が放出されていく。

アンティークのように付け加えられた魔法石は内側から発光し、筒井さんは地面を軽くけると、周りに強い風圧をと衝撃を与えメイドは空へと舞いあがった。

瞬く間に、僕の前には白い光だけを残したメイドの姿は空にも影は残っていなかった。


筒井さんを見送った後、僕は焚き木の火を消すため周りの砂で火をかぶせる。

僕は、焚き木の火をけしながら男から言われた言葉を思い出してゆく。



無音ともいえる静かさに、男の声だけが頭に響く。


ポケットから出した包みを見ながら、響く言葉を繰り返す。


――ヒントは悪魔で、その人物が信じて活かした事で意味がある言葉だ。ヒントを活かしたければ・・・――


包みを開き顔を見せる飴は、黄色の色をしていた。

綺麗な色、透き通った黄色。筒井さんの瞳の色に近い色だ。

とてもまっすぐな、物を感る。


――ヒントを活かしたければ・・・それを――


「これを・・・」


僕は、飴を口に入れた。


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