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「なんだ……その、元気そうだな」

「お陰さまでな」

 アデリーナのお願いを引き受けてから数時間後。ロドルフォはアドルフォに見下ろされていた。

「随分となつかれてんじゃねーの」

 ロドルフォと目線を合わせるようにしゃがんでアドルフォは言った。ロドルフォは今、うつ伏せの状態であるからしゃがんだところでまだアドルフォの方が目線が高く、ロドルフォを下に見る形になるのだけれど。

 うつ伏せになったロドルフォの腰の辺りにはネロが馬乗りになっていた。そして無邪気にペシペシとロドルフォのケツを叩いている。一方、肩の辺りにはブランテが馬乗りになっていて、やはり無邪気な顔でロドルフォの髪の毛を引っ張っていた。

「いてててて! 髪はやめろって、ブランテ! ハゲる! ハゲるから!」

「キャッキャッ」

「キャッキャッじゃなくてよぉぉぉぉ!」

 そんなやり取りを見てアドルフォは思わず吹き出した。騎士団では鬼と呼ばれるロドルフォがこうして子どものオモチャにされるなんて。

「取り込み中悪いが、今夜あいてるか?」

 クツクツと笑いながらアドルフォは訊ねた。それにロドルフォは「帰ってきて直ぐ予定いれるほど俺も忙しくはねーよ」と、今度はブランテに頬を引っ張られながら答えた。口元を伸ばされてしまっているため、恐らくアドルフォには「ふぁふぇっふぇふぃふぇふふふぉふぇーふぃふぇふふぉふぉふぉふぇふぉふぃふぉふぁふぃふふぁふぇーふぉ」と、意味のわからない発音に聞こえただろう。しかしそれでもアドルフォにはロドルフォの言っていることの意味がわかったのか、「そうかそうか」と満足そうに笑った。流石双子と言えようか。

「じゃあ今夜飲もうぜ。報告もかねて、さ」



「四歳の体って重いよな」

 カクテルを一口含んでからロドルフォはポツリと呟いた。ちなみに、カクテルはロドルフォが作ったものである。趣味が幅広いやつだ。

「二人に乗っかられたら動けねーのなんのって」

「そもそも何でお前はあんな状況になってたんだよ」

 ロドルフォお手製のバーニャ・カウダをかじりながらアドルフォが突っ込んだ。現役の騎士が四歳の子ども二人に倒され馬乗りにされるという状況はそう簡単に出来るものではない。

「アデリーナに『私はこの二人と遊んであげられないから、あなたが遊んであげてくれる?』って頼まれたんだよ。で、遊んでたんだ」

 そう。アデリーナの『お願い』とは二人と遊ぶことだったのだ。アデリーナは足を自由に動かすことが出来ないため車イスの生活を強いられている。二人と走り回って遊ぶことが出来ないことを気にしていたのだろう。

「そしたらあの二人、どこで覚えたのか知らんが俺のズボンを下げようとしやがってな……」

「あー、悪がきがやりそうなイタズラだな」

「んで、ズボンとパンツ を死守したら見事にすっ転んだわけだ」

「『スケールモデルの鬼士』もパンツには勝てなかったか」

 戦場でパンツを狙われたらどうするんた? と、アドルフォは冗談めかして笑った。それに対してロドルフォは「戦場でパンツを狙うやつなんていねーよ」とげんなりとした様子で反論する。お疲れのようだ。

「それに」と、さらに続けてロドルフォは反論を試みる。「『爆ぜる暴れ馬』だってパンツは守るだろ」

 『爆ぜる暴れ馬』とはアドルフォの二つ名だ。やはりこちらもネーミングセンスを疑うものがあるが、そんなことは気にしないことにしているようだ。

「あー、俺?」

 カクテルを傾けつつ考える素振りを見せる。「そうだな、俺がパンツを狙われたら――」

「――下だけ脱いでるってのも変だから全部脱ぐかな」

「お前に聞いた俺がバカだったよ!」

 何故かどや顔で答えるアドルフォである。戦場に全裸の男がいたら敵軍の度肝を抜くことが出来るだろうが、しかし全裸ということは防具も何もないので、死亡率は格段に上がる。是非とも、パンツを奪われないよう気を付けてほしいところだ。

「でも脱ぐなら可愛い女の子がいいよな――って悪い悪い、そんな怖い顔するなよ、ロドルフォ。分かったよ、真面目な話をしようぜ」

 相変わらずヘラヘラと笑ったままだが、アドルフォがどこからか取り出した紙束は『真面目な話』に見合うもののようだった。

 その紙束の内容を確認しつつ、ロドルフォは「どこから話そうか」と真面目なトーンで言う。

「そうだな」アドルフォは顎に手を当てて答えた。「とりあえず結論を――『イケニエ事件』はシャンテシャルムの犯行ってことで決まりなのか?」

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