表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/31

FAP01:第08弾 "Dの後継者(サクセサー)"


皆様、こんばんわ~♪


平和なバレンタインの夜、如何お過ごしでしょうか?


今晩は心身共に冷えるので熱々のラーメンすすってる暮灘です(泣)




ミコ

「お邪魔しま~す。ガラじゃないですが、一応【突撃お嬢】のメインヒロイン(?)らしいミコワルツェ・ヴァレンシュタインです。皆様、こんばんわ♪」


おお、今回は本編で【でむぱ系ヒロイン(笑)】にクラスチェンジしたミコではないか。


ミコ

「ちょっ!? なんか人聞き凄く悪いんだけど……」


何を今更(^^;

それにしても、今回はミコもさることながら、サラとウラジミール曹長も大活躍だねぇ~。


ミコ

「軽く流されたっ!?」


次回は一応……ミコの出番があればいいなっと。


ミコ

「な、なんか不吉なこと言われちゃったような……?」


鬼が笑うような次回の話はさておき、電波系ミコをはじめ色々楽しんで頂けたら嬉しいッス♪








大脳生理学という学問が発展した時代なら、あるいは戦闘による興奮が一定水準を超えるとミコの脳内で起こる"ユニークな変化"が観測できたのかもしれない。


細かく言うなら、エンドルフィンやエンケファリン等の脳内麻薬、ドーパミンやセロトニン等の伝達物質の分泌が通常とは明らかに異なる量や配合率(パターン)となり、シナプスやレセプターが一気に活性化するのだ。


一種の【トランス状態】と呼べなくもないが、一般にイメージされるその単語の状態とは大きく異なる。


興奮状態になるのではなく、確かに性的快楽に近い強い愉悦感は常にあるようだが、寧ろ思考は極度にフラットに……


きっとチューリング・テストでもしたら面白い結果が出そうなほど、脳幹から"冷える"のだ。




それは決して、互いに情報互換性や人格相違のある二重人格の発動ではない。


ただ、【ミコワルツェ・ヴァレンシュタイン】という少女の人格に、より戦闘に向いた【戦争用人格(クリーグス・リヒカイト)】がインストールではなく"プラグイン"されるのが、表現としては正しいのかもしれない。




☆☆☆




"その時"、彼女の脳内にハイビートなメロディが流れる……


そう、それはとある平行世界……

相対的な時間軸から言うなら約60年ほど後世、とある極東の島国に突如として出現した【電脳世界の歌姫】……


ミコにのみ聴こえるその"不可聴の曲"が、電脳歌姫のビッグヒット・ナンバーの一つに酷似していたのは何故だろうか?




(あの日……)


沢山あった自分の未来の中にあった中から、たった一つわたしが選んだのは……


(鋼鉄の生き方……!!)


理由なんて解りきってる……


(わたしは……戦うのが好き!!)


だから、さあ!


(戦争を始めよう!!)


たった一つの命をかけて!

その命が続く限り!

命果てるその瞬間まで!




「ミッコミコにしてあげる!!」










**********




「サラちゃん、Go a Head!!」


「ヤー・コマンダー! 思いっきり振り回すよっ!!」


サラの宣言通りに激しく左右に振れながら蛇行前進する【クアトロ・スペツァル】!


ミコの並外れた前線装甲指揮官能力やユッタの抜群の砲撃センスに隠れがちだが、よくよく考えたら75mm砲弾を(カートリッジごと)片手で鷲掴みするハンナのパワーも、サラのこのドライビング・テクも少々オーバースペック気味だ。


そして、更にサラも戦術的な機知機転が効くようだ。


「サラちゃん、少し動きが単調過ぎないかな?」


「いいんだ! わざと"敵に読まれやすい"ように動いてるんだから……なっ!」


そうミコに返しながら、サラは操舵装置を鋭く切った!










**********




(ケツを振って誘ってやがるのか……?)


確かにジグザグに動かれるとコッチは狙いを付けにくいが、それでも動きが単調……蛇行パターンが一定過ぎる気が、ウラジミールにはしていた。


(腕前は悪くない……)


まだ全ての挙動が曲線で繋がるような滑らかさはないし全体的に粗削りだが、その戦車挙動全体に新人特有のはっきりしない"迷いや戸惑い"は見られなかった。


(そんな奴が、こんなミエミエの走り方するかね?)


なんのかんのとバルバロッサ戦役の地獄を生き抜いたウラジミールは疑問に思う。


(まるで戦技競技会のデモンストレーションみたいな動きだな。確かに訓練時間だけ長くて実戦経験の乏しい運転屋だったら有り得るが……)


だが、彼が思考に耽ってられる時間は長くは無かった。


「同志軍曹! どうして撃たないのですっ!?」


彼の思考を邪魔したのは、耳障りなキンキン声で叫ぶ政治将校のチェンコスキーだ。


(俺は"曹長"だっつーの)


ウラジミールは内心、この「腐れ赤色同性愛者は、軍の階級すら満足に覚えてないんじゃないか?」と敵戦車に対するそれより強い悪意と敵意と疑念を持ちながら、


「同志中尉、落ち着いてください。敵はあの小癪な【チトィーリェbis(チトィーリェ=ロシア語の"4"、"bis"は改良型)】です。KVの砲でも500m以下でなければ砲塔正面は貫通できません」


「ならば500mを割ったら、直ちに撃ちなさい! いいですねっ!?」


「ダー」


この時代のソ連戦車は、プロイセン産のそれと違い車長が砲手を兼ねる事が多い。


特にチェンコスキーのような【余分な荷物】を抱えた場合は特にそうだ。


つまり、車長としても砲手としてもウラジミールの技量は悪くないし、経験もそれなりに豊富だ。


(だが、俺の中で何かが"今撃てば危険だ"と騒いでやがる……)


かといって、政治将校の機嫌を損ねて後ろから頭をトカレフで撃ち抜かれるのは御免だった。


「装填手、次弾"徹甲"。準備しておけ」


だから示したのは次善策。


「ダ、ダー!」


装填手というのは一般にその戦車で最も経験の浅い戦車兵に任される。


理由は言うまでもないだろう。

重い砲弾を大砲に装填する重労働、誰だって好き好んでやりたくはない。

だから一番経験浅くて階級の低い下っ端に押し付ける。


ミコ達の戦車小隊のように、殆どが同期で戦車単位で一番の力持ち(例:ハンナ)が任されるという方がどちらかと言えば稀だ。


この【42年型KV-1】も例外ではなく、装填手はまだソバカスの残る、少年と言っていい二等兵だった。


「装填の事など気にしなくてよろしい! 軍曹、アナタが1発で仕留めれば良いだけですっ!!」




(そんな簡単に当たるなら苦労しねぇぜ)


ウラジミールは天を仰ぎたくなる衝動にかられながらも、照準器から目を放さす、左右に動く【チトィーリェbis】をクロスラインから逃さぬように、


「ウッラァーーッ!!」


"ドンッ!"









**********




「いまっ!!」


サラは直感的に叫ぶと、今までのパターンにない方向に舵を切った!


"ドンッ!"


その直後に瞬くKVの砲口……


次いで砲弾/爆音/硝煙の順番で長砲身から吐き出される事象……


"ドフッ!"


しかし、その勇ましい光景に反し、タングステン弾芯のソ連製76.2mm徹甲弾はIV号戦車改型から大きくそれた弾道を描き、遥か後方で虚しく雪煙を立てただけだった。


「ファッキン・スターリン・ブーシット!!」


ドヤ顔で上機嫌に中指を立てたサラは、ミッションをトップシフトさせながら床を踏み抜かんばかりにアクセルを踏み込み、


「見ろっ! これがアタシと"この子"の全速全開!!」




☆☆☆




「外れたじゃないですかっ!?」


キャンキャン喚くだけの全く役立たずのチェンコスキーを放置しながら、ウラジミールは冷静さを保ったまま、


「次弾装填、急げ」


と静かに、されど厳格に命じる。


「ダダ、ダー!」


戦慣れしてない事が明白な震える手で、何とか装填しようと年若の兵士は踏ん張るが……


(こりゃ、詰んだかな?)


ぺリスコープに映る姿を見る限り、どうやら敵戦車がKVの安全距離内に突入してくる方が早そうに見えた。




☆☆☆




「サラちゃん! 今だよっ!!」


「ヤボール!!」


サラはミコの言葉に合わせKV戦車激突直前に右に舵を切ると、ノーマル・ブレーキ、エンジン・ブレーキ、リターダで急制動をかけながら"超信地旋回"を行う!




「いっけぇぇぇーーーっ!!」




【クアトロ・スペツァル】は180度横、車体正面をKVの側面に向けるようにしながら"滑走"した。


きっとこれを20世紀末から21世紀の走り屋が見たらこういうだろう。


『……戦車で"ドリフト"きめやがった……』


と。








**********




普通、履帯(無限軌道、キャタピラー)と呼ばれる走行装置は、タイヤに比べて極めて路面にかかる摩擦抵抗値(グリップ力)が大きい。

細かい理論は抜きにして平たく言えば、"滑りにくい"のだ。


だからこそ、普通のタイヤ車では越えられないような場所を平然と踏み越えられるのが、履帯をはいた戦車という兵器の特色と言える。




だが、普通の路面に比べて極めて低μ(低ミュー:摩擦抵抗が小さい)雪上であるならば、履帯にかけるベクトルによっては、グリップを失い滑る……スリップする事もある。


本来なら、グリップを失いスリップするのは姿勢等のコントロールを失い、好ましい状態ではない。


だが、そのスリップ状態をある程度コントロール出来るようにするのが、【ドリフト走法】だった。


そう、前話でミコの言っていた【D走法】のDは、"ドリフト"の頭文字(イニシャル)を取った物だ。




☆☆☆




【D走法】は本来、超信地旋回が理論上でしか無かった時代、砲塔を持たない(主砲を車体と同じ方向にしか向けられない)駆逐戦車が、低μ(ミュー)スリップを利用し、素早く車体を旋回させるアイデアの一つとして考案された走法だった。




だが、マスターし使いこなすのが極めて難しい高等テクニックな上に、前述のように戦車は普通の自動車より摩擦抵抗が大きく使えるシチュエーション(路面状況)がかなり限られる為、メジャーなテクニックにはなり得なかった。


また、超信地旋回が可能なトランスミッションの普及により更に必然が減った(走りながら回転するより、停止して旋回/方向転換して加速する方が使い勝手がいい)のも事実だ。




だが、サラは数少ない【ドリフト走法の継承者(サクセサーD)】の一人だった。


理由は意外な事に……サラの実家【タカラ】家はド田舎に広い敷地に放牧してる酪農家だった事だ。




小さい頃のサラにとってはトラクターや自動車は手近な遊び道具で、同時に農場の中の移動手段だった。


ならば雪の降り積もる冬、サラがこれらを使って【ソリのように滑らせ遊ぶ】事を思いついたとしても、さほど不思議な話ではない。


また蛇足ながら……

彼女は1937年に発売された世界初の市販量産スノーモービル【B7】を、フィンランドで最初に手に入れた一人だった。


勿論、それもサラにとってはいい感じにスライディングする"いいオモチャ"だったようだ。




☆☆☆




「ヲイヲイ……嘘だろっ!?」


こちらの砲撃を横滑りでかわした直後、凄まじい勢いで正面から突っ込んできたと思ったら、いきなり照準器の視界から消えた敵戦車……


(何処に消えやがった……?)


ウラジミールにしては珍しく慌て気味に外部観察窓からではなくハッチを開き、【PPsh1941短機関銃(ペイペイシャー)】片手に車長用キューポラから身を乗り出すが……


「ンがっ!?」




(どんな魔法を使ったか知らねぇが……)


「そりゃ見失う訳だぜよ……」


どういう訳か妙に冷めた思考でウラジミールは、"それ"を見た。


そう……


相対的な位置関係で言うとKV左斜め後ろ20m程の位置に、真っ直ぐにこちら……装甲が比較的に薄い砲塔後部に主砲を伸ばす【チトィーリェbis(クアトロ・スペツァル)】の姿を……


「やばいっ!!」


ウラジミールが反射的にキューポラから飛び出すのと、kwk40/75mm48 口径長砲のマズルが瞬いたのは、ほぼ同時だったという……







次回へと続く







皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m


ある意味、【サラ†無双】だった第8弾、如何だったでしょうか?(^^;




サラ

「あ~、久しぶりにスッキリしたぁ~」


あんだけ派手に【クアトロ・スペツァル】転がせば、そりゃスッキリもするだろうさ(^_^;)


サラ

「そう言うなって♪ アタシはそれでいいとしても、なんかウラジミールのオッサンが妙にいい味だしてたな?」


う~ん(^^;

実はあの中年車長(笑)、最初はあんなに見せ場ある予定じゃなかったんだよ。


でも、書いてる内に妙に……(苦笑)


サラ

「あはは♪ なんだかしぶとそうなオッサンだもんなぁ~」


そういやサラって、酪農家の娘だったんだねぇ~。


サラ

「実はなんもないド田舎出身だったりするのさ♪」



さてさて、次回はいよいよ長い雪上バトルの決着篇!


果たして放たれた砲弾の行方とは……?


それではまた次回、皆様にお会いできたら幸いです(__)





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ