FAP01:第07弾 "ミッコミコにしてあげる!!"
皆様、こんにちわ~♪
本日は移動に次ぐ移動……というのも強風で電車のダイヤが乱れまくり、にっちもさっちも逝かない暮灘です(^^;
さてさて、今回のエピソードは……
サラ
「珍しくアタシの台詞が一杯あるゾっと」
おおサラ、やはり出てきたか?
サラ
「アタシだけやらないわけには逝かないって空気だったし」
あはは(^^;
常識人には辛いってか?
サラ
「まあ、そんなとこ。それにアタシとハンナのフルネームもさらっと出てくるみたいだしぃ~♪」
そうそう。
ようやく出せたよ~f^_^;
サラ
「それにしてもミコの奴、いきなりあんな無茶言い出してからに」
ああ、アレね?
とりあえず詳細は本編にてって事で(^^;
では、鋼鉄少女達の第7弾、お楽しみ頂ければ嬉しいッス♪
追伸
このエピソードのアップを機会に、タイトルを変えてみました(^_^;)
"ギィィィン!!"
KV-1の分厚い砲塔正面装甲の前に火花と共に弾かれ、雪雲の中に消えたように見えた75mm戦車砲弾……
「フフッ……フハハハッ!! 私の言った通りじゃないですかっ!! 狂信者の戦車など、恐るに足らないのですよっ!!」
この時点での世界中の戦車最高峰の重防御を誇る戦車に座乗していた政治将校は狂ったように哄笑し、
「同志曹長! ただちにあの身の程を弁えない生意気なブリキ缶を、醜い棺桶に変えるのです!!」
☆☆☆
前話、"ヤークト・ユッタ"こと車長車砲手【ユッタ・ヤルカネン】伍長が放った"PzGr40"は、タングステン鋼製の硬度強化弾核(弾芯)を持つ、ミコ達のIV号戦車改型1両につき10発も配給されてない貴重な砲弾……
今フィンランドにある75mm級対戦車徹甲弾の中では、最強の貫通能力を持つ、まさに"虎の子"だった。
この徹甲弾(APCR-T)の75mm用は、そもそも先の第一次冬戦争で滷獲したT-34戦車を徹底的に分析した結果から性能が弾き出されていた。
つまり近い将来、次々に開発されるだろうT-34装甲強化型の正面を、次世代戦車が量産されるまでのしばらくの間、IV号戦車やその改良型に搭載できる75mm砲で貫通する能力を維持させる事を目的として開発された。
それは効を奏し、砲自体も改型では長砲身化され初速が上がり、その相乗効果により41年型のT-34迄なら明らかに優位に、同じく対戦車戦に向いた長砲身砲を装備しあらゆる改良が施された42年(現行)型のT-34とさえ互角以上に戦う力をIV号戦車に与え、その結果として【バルバロッサ戦役】での勝利、防衛成功があったのだ。
☆☆☆
しかし、その威力を散々欧州平原で味わされたソビエト赤軍だったが、当然それに対して無策ではなかった。
(この距離で、簡単に弾くなんて……)
「多分、あれが噂に聞いた【バルバロッサの赤い鉄壁】……最新型のKV-1かな?」
その回答の一つこそが、"赤い鉄壁"と吟われたこの"42年型KV-1"だ。
車体正面でも90mm厚、砲塔正面/側面ならIV号戦車改型の最も分厚い砲塔正面装甲の1.5倍に達する120mmの装甲を持ち、尚且つ全て傾斜構造をしているのだ。
その防御力は凄まじいの一言で、このkwk40/75mm48口径長砲とPzGr40をもってしても、車体で250m以内、砲塔に至っては100m以内(確実さを求めるなら50m以内)で撃たなければ効果は薄い。
逆に言うなら、このKV-1の主砲は現行型T-34と同じ長砲身の76.2mm砲で、タングステン・コアの徹甲弾を用いるなら500m以内なら【クアトロ・スペツァル】の何処に当たってもミコ達四人をまとめて挽き肉にできるだけの威力があった。
現に【バルバロッサ戦役】末期に登場した42年型はその50tに達する重量やアンダーパワーのエンジン、出来の悪いトランスミッションのせいで機動力が劣悪で侵攻戦では足手まといだったが、機動防御に回った途端に主力であったIV号戦車改型に苦杯を舐めさせ、その度に"ティーガー"や急降下爆撃機、あるいは徹甲弾を装填した88mm高射砲に応援を要請するのが普通だったらしい。
【クアトロ・スペツァル】でタイマンを挑むのは、あまりに分の悪い賭け……
端的に言えばそういう事だ。
しかし……
「そうこなくっちゃ……!!」
【ミコワルツェ・ヴァレンシュタイン】フィンランド陸軍少尉はその時、確かに笑っていた……
**********
"ザワッ"
それは車長車内の空気が変わった瞬間……
"クククッ"
多分、騒音に満ちた車内では他者が聞くことは出来ないだろう。
だが、その喉の奥から絞り出すような小さく、そして乾いた低い笑い声は紛れもなくミコが洩らした物だった……
「そう……戦争はやっぱりこうじゃないと、ね。一方的な勝利なんて面白くないもん!!」
"くわっ!"
ミコは大きく瞳を開き、
「ハンナちゃん、再びPzGr40を装填! サラちゃんは、パターンを読まれないようにジグザグ回避しながら接近、KVが発砲したら最高速で突進して!!」
矢継ぎ早に命令を出し、
「みんな覚悟してっ! これより本車はKVに対し、"突撃肉薄砲戦/咄嗟砲撃"を敢行するっ!!」
そしてプロイセン式の制帽を斜に被る。
それはミコがこの上なく上機嫌な時のサインだった。
☆☆☆
「ミコ、あんたが行けというなら別にモスクワまで進軍してもいいけど……正面からあの"鉄板の化物"と撃ち合う気?」
そう確認するのは操縦手の"サラ"、本来のフルネームは【サリアンナ・タカラ】だった。
砲力が同等で装甲の厚さが5割増しの敵に、正面から挑むのは確かに些か勇気を通り越し、蛮勇とさえ言っていい行為だ。
「それに全力走行なら、震動で装填は難しいですし……下手をすれば1発勝負になりますわよ?」
そう言い添えるのは小隊一の長身で力持ち、ついでに家柄もかつてロシアの大貴族"シュヴァーロフ"伯爵家の流れを持つ、装填手の【ハンナ・シュヴァーロワ】。
だが、ミコは脳内が冷徹な戦術コンピュータとして動いている事を示すハイライトの消えた瞳で、
「バルバロッサ戦役で、ごく少数だけどIV号改型が単独でKVを仕留めた記録があるんだよ……」
一言一言を確かめるように、
「KVにはいくつか致命的な欠点があるんだ。一つはあらゆる意味でT-34より劣る機動力……」
有益な情報を頭より引き出し始めた。
「そして、装甲の分厚さで重くなった砲塔は、ひどく旋回速度が遅いの」
実際、砲駆動システム回りは装甲増加分に反してこれといった改善はされていなかった。
もっとも、ミコの言い分は少々ソ連に手厳し過ぎる。
世界水準で見るのなら、強力な電気油圧式を採用しているプロイセン戦車の方が"例外的に速い"と記す方が適切だろう。
「サラちゃん、【クアトロ・スペツァル】のミッションは、ティーガーみたいに"超信地旋回(*)"できた筈だよね?」
*超信地旋回とは?
左右の履帯を等速で前後逆に動かし、その場で車体を水平方向に360度回転させる事。
「あ、ああ。そりゃできるけどさ」
ミコが何を言わんとするのか分からないサラは曖昧に頷いた。
実は、IV号戦車改型のミッションは計画のみで終わったオリジナル【V号戦車】用に開発された原型よりハイグレードなトランスミッション、つまりVI号戦車のスケール・ダウン版が搭載されていた。
☆☆☆
少し補足すべきだろう。
今、IV号改型に代わり急速にプロイセンの主力戦車となりつつある【パンター】は、本来は【V号戦車】と呼ばれる計画で開発されていた戦車が原型だった。
V号戦車の開発は、IV号戦車の量産の目処が立った1938年には始まっていて、名から分かるように純粋なIV号戦車の後継として開発されていた。
砲塔正面80mm(ザウコフ防盾部分110mm)/側面60mm、車体正面70mmという装甲厚が計画されていて、開発時期から考えれば平均水準を超えた高い防御力を有し、操舵装置はM4シャーマンと基本的に同じ構造、エンジンはIV号の出力強化型を予定していてトランスミッションは同時期に開発が進められていたティーガーのスピンオフ、廉価スケールダウン版が使われる予定だった。
だが、V号戦車は基礎技術の熟成が終わり、いざ試作型を制作……という段階で予想外の頓挫を味わう事になる。
言うまでもなく第一次冬戦争で遭遇した"T-34"だ。
まだ試作型だったT-34だったが、その恐るべき潜在能力の高さに気付いたプロイセンは、V号戦車のスペックでは特に防御面でT-34相手に早期に陳腐化すると考え、抜本的に設計を改める事にした。
結果として【V号戦車開発計画】は一度白紙に戻され、開発チームは発展的解消の後にT-34とその強化改良型に数年は対抗できる【V号を叩き台にした新型戦車】、つまり【"パンター"戦車開発計画チーム】として再編された。
☆☆☆
とまあ、ここまでは良かったのだが……
装甲防御を中心に色々とV号より強化したパンターは、要求性能を満たすなら数々の(性能を悪化させない)軽量化技術を使っても、結果として計画重量40t以内だったV号よりかなり重い45t超級の戦車になることが判明したのだ。
ならばいっそスケールダウンではなく、トランスミッション/エンジン等のパワーバック回りはティーガーのそれより量産向きに改良された発展型が使われる事になった。
実は開発時間/コストを削減する為(ティーガーの製造ラインを流用できる)のかなり苦肉の策なのだが……プロイセンはこの博打に勝った。
ただ、せっかく製造コストや製造ラインまで考えて作られたV号戦車のコンポーネントをそのまま捨てるのは惜しいと考えた(更にアメリカ企業も開発に関わっていて、シャーマンとの兼ね合いで既に発注済みのパーツもあった)プロイセンは、それを【IV号戦車強化改修キット】、早い話がIV号→IV号改型への改造キットに組み込んだのだった。
☆☆☆
「ならば、ちょうどいい戦術があるよ♪」
ミコは心底楽しげに、
「サラちゃん……さっき言った事の補足になるけど、敵の初弾発砲後は次弾装填前までに可能な限りの速度でKVに接近、できれば敵と正対したまま相対距離50mを割るまで肉薄して……」
ミコは素早く位置関係を脳内でシミュレートし、
「それから舵を僅かに右に切り、加速度が0になる前に超信地旋回で車体を180度横に向けて欲しいの」
一見すると無茶だが、【クアトロ・スペツァル】の駆動系や足回りなら出来なくはない動きだった。
「ミコ、アンタまさか……」
サラの言葉にミコは頷きながら、
「アメリカ人に言わせると"パワースライド"、わたし達の教本では……」
にっこり微笑み、
「【D走法】って書かれてるアレをやって欲しいんだよ♪」
☆☆☆
「ハンナちゃんはいつでも次弾を装填できるように準備! 近接時の【ターレット・トレース(車体の位置に関係なく砲塔を標的に向け続ける事)】はわたしがやるよ!」
「畏まりましたわ!」
ハンナの返事に小さく頷いたミコは、ユッタに向くと、
「トリガーはユッタちゃんに一任するから、一番適切ってタイミングで撃っちゃって!」
ユッタはドンと薄く平たい胸部軽量装甲……もとい胸を叩くと、
「任されました! ミコ隊長、この"ヤークト・ユッタ"にドォ〜ンとお任せくださいッス!!」
そんなユッタの髪を、満面の笑みでミコは撫でた……
☆☆☆
(あっ……)
その時、ユッタの肢体に目に見えない微かな変化があった。
"とろぉ……"
そう。
滴る粘液が、下着を内側から湿らせたのだ……
(濡れるッス……)
ユッタは顔を赤らめて喘ぎを抑えるように微かに息を荒くしたが、幸い今は戦闘中の事もあり誰にも気づかれなかったようだ。
「みんな、征こっ!!」
今やその戦意が炎となり出現しそうなミコ。
同時に彼女の頭の中にしかないハイビート・メロディが、ミコの脳内で流れ出す……
「ミッコミコにしてあげるっ!!」
次回へと続く
皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m
ハンナとサラのフルネームにミコの覚醒(?)パートが出てきた第7弾、如何だったでしょうか?(^^;
ハンナ
「楽しんで頂けたら嬉しく思いますわ♪」
それにしても、君は本気で凄い生まれなんじゃね?f^_^;
世が世なら"伯爵令嬢"かいな(汗)
ハンナ
「いえいえ♪ ウチは確かにシュヴァーロフ伯爵の一族ですけど、直系というよりどちらかと言えば傍流ですわ。それに……」
それに?
ハンナ
「ロシア革命で家族と動産以外の財産を全て失ったとお祖父様やお父様もおっしゃってましたし……」
そっか……
ん? 財産?
ハンナ
「はい。お父様のお話だと、今でも『小国の国家予算程度の資産なら手持ちにある』らしいですわ」
……そりゃ革命も起こる筈だよ(汗)
ハンナ
「はぇ?」
いや、こっちの話(^^;
それにしても、ついにクライマックスだねぇ~。
ハンナ
「はい♪ でも、覚醒ミコちゃんがいるのなら、怖くありませんわ♪」
いよいよ次回は決着篇?
果たしてどんな結末が待っているのか……
それではまた次回、皆様にお会いできる事を祈りつつ(__)