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FAP01:第06弾 "大きな湖の畔の小さな戦争"


皆様、こんにちわ~♪


本気で春が待ち遠しいけど、花粉は来るなな暮灘です(^^;


嗚呼、杉を見るとチェーンソーを持ち出したくなる(笑)




ハンナ

「花粉症は大変ですねぇ~」


あはは(^^;

なんせ、色々なアレルギー体質(汗)


って、今回のゲストはハンナなの?


ハンナ

「はい♪ そういえば、こうしてお会いするのは初めてですわね~」


だねぇ~。

ハッ!?(;□;)

何故かオイラまでまったりした空気に(汗)


ハンナの呑気フィールド(?)、侮り難し……


ハンナ

「うふふ♪ 今一つおっしゃってる意味はわかりませんが、お茶でも如何ですか?」


あっ、どうも。

というか、本文では洒落にならないガチバトル殺ってんのに、こんなのんびりしてていいんかね?


ハンナ

「宜しいじゃありませんか。慌ててもKV戦車の装甲が薄くなるわけじゃありませんしね♪」


そりゃそうだけどさ……(;^_^A


ハンナ

「いよいよ戦いもクライマックス♪ 敵の顔も見えてくる第6弾……」


お楽しみ頂ければ嬉しいッス♪








ラドガ湖の西岸地区(ウエスト・バンク)には数えられるが、コッラ川をはじめとする主戦域から少し離れたとある地区……


もし、この世界が平和ならば訪れる酔狂者も滅多におらず、時折来るのはケワタガモかそれを狙う肉食野性動物か猟師くらいの、自然が元来内包する厳しさを除けば、そこはきっと平和この上ない場所だったろう。


だが……

今はその幻想的な風景は無粋な機械群により踏みにじられ、本来ならば清浄な筈の空気はディーゼル排煙と硝煙、あるいはその他の人工臭で汚染されてしまっていた。




なんのことはない。

今から小一時間ほど前から、"小さな戦争"が行われていたのだ……




☆☆☆




スオミの空は未だフィンランド人の物である為、陸路からフィンランド軍防衛網の、可能ならマンネルハイム・ラインの穴を探す為にフィンランド領内に浸透したソビエト赤軍の強行偵察戦車中隊……


しかし、彼らは不用意にフィンランドのソフト・ポイントに近付き過ぎていた。


そう、今そこはフィンランド軍の"とある独立重駆逐大隊"の【縄張り(テリトリー)】であり、戦車小隊単位で定期巡回を行う【装甲哨戒(パンツァー・パトロール)】のコースに踏み入っていたのだ。




ならばその戦いは必然と偶然、どちらがより適切な表現か迷う。


しかし、確実に偶然……それもどちらかと言えばソ連側に最悪なそれは、フィンランドの装甲小隊を率いていたのがミコ……【ミコワルツェ・ヴァレンシュタイン】陸軍少尉だという事だった。




☆☆☆




ミコの前線装甲将校としての資質は、やや攻撃に片寄る……端的に言えば戦闘的過ぎるきらいがあるが、極めて高い。


任官と配属されてからの日はまだ浅いが、【第二次冬戦争】の開幕から僅かな間に魅せた装甲指揮の冴えは「まるで歴戦将校のようだ」と、とある将軍の手記に残っている程に。

余談だが、その手記には「やはり血は争えない」との記述もあった。










**********




強行偵察を行うソビエト側は、ほぼ中隊編制の戦車部隊。


守るフィンランド側は、1個戦車小隊。


戦力差は約三倍……


防御側絶対有利の原則がある以上、無謀とは言わないが危険な戦力差ではあった。


ミコは多少の幸運も手伝い先にソビエト戦車中隊を発見すると、漫然と走ってるように見える安定しない陣形や敵地の只中にいるのにやや警戒心の薄い雪中行軍の様子から高くない技量を見切り、また地の利もある為にミコはアンブッシュ(待ち伏せ)による"積極的迎撃"を選択した。




☆☆☆




戦いは熾烈を極めたが、数に劣るものの技量と戦車の個別性能で勝り、地の利を生かして奇襲気味に先手を取ったせいもあり、今のところフィンランド側が優位に戦いを進めてこられた。




☆☆☆




そして、ミコは見つけた。

戦場より僅か後方に離れ、雪景色に隠れるようにされどいつでも味方を"督戦"できる位置に鎮座していた"指揮戦車"。


それは重装甲に守られた、


「聞いての通りだよ。みんな、あの"KV-1"を殺るよ……!!」


「「「Ja!!」」」


短い返事と同時に、ユッタのハンナのサラの気迫が再装填される!


ミコは一度大きく息を吸うと、


「パンツァー・フォー!!」


彼女達の操る【クアトロ・スペツァル】は、一際大きなディーゼルの轟音を響かせると、激しく雪を掻き分けながらKV-1に対して突撃を開始したっ!!









**********




「緒元入力、照準誤差修正! 距離約940m! ミコ隊長、いつでも撃てるッス!」


そう犬歯を覗かせ微かに笑うは、その若兵らしからぬ砲撃の巧みさと正確さから【猟師のユッタ(Jagd Jutta:ヤークト・ユッタ)】の二つ名を持ち、"ミコの忠犬"こと【ユッタ・ヤルカネン】伍長だ。


「Ja! ユッタちゃんやっちゃって!」


「これでも喰らうッス! ファイエル!!」


"DOM!!"


長砲身から放たれ、低延弾道を描きながら飛ぶ強化徹甲弾は、吸い込まれるように図体の大きいKV-1の砲塔に命中!


しかし……




"ギィィィン!!"




命中したPzGr40は一瞬の火花を上げると、耳障りな音を立てて中天へと弾き飛ばされたのだった……








**********




時は少し遡る……




「いけませんねぇ……これじゃあ、まるでサボタージュじゃありませんか?」


そう愛用の、軽い"懲罰"に振るう乗馬鞭を、ピシャリと鳴らしながら、ソ連赤軍名物の政治将校"チェンコスキー"中尉は、数的優位にありながら劣勢に見える自らの配下の戦車中隊をペリスコープから見ながら呟く。


その態度にうんざりしたような顔をしたのは、このKV-1の本来の車長"ウラジミール"曹長だった。


("虎の威をかる狐"ってのはこういう奴を言うンだろうな……)


ウラジミールはそう内心毒づくと同時に、我が身の不幸を嘆いた。


(まったくの貧乏クジだぜ……)




☆☆☆




既に三十路を越えてしばし経つ、この現場叩き上げの中年下士官の不幸は【欧州革命作戦】とバカバカしいまでに大袈裟な名を付けた、祖国が行なった西欧州(CETO北部戦闘管区)への全面侵攻作戦あたりに端を発する。


そう、CETOで言うところの【バルバロッサ防衛作戦(バルバロッサ戦役)】だ。




ウラジミールは本来、正規戦闘部隊の一員だったが、スロバキアにて当時の大隊長の指揮のまずさ故に部隊はアハト・アハトの一斉射を浴び壊滅した。


しかし、当時彼が座乗していたのがたまたま35mm厚の増加装甲をあちこちに張り付けた、少し型遅れの【KV-1E(エクラナミ)】だったからこそ、装甲の分厚さと鈍重さ……スピードが遅かった為に味方より遅れ、その分敵砲との距離があったゆえ、彼と戦友達は生き残れた。

ただ、それだけだった。




☆☆☆




しかし、共産党は【欧州革命作戦】の失敗を国民から覆い隠す為に、


『暴虐極まる十字教の狂信者から、同志住まうポーランドを防衛し、それに成功した』


と声高に喧伝した。

つまり、チェコやスロバキア、プロイセンに攻め寄せたのは侵攻目的ではなく、敵侵攻の出鼻を挫く為の【アクティブ・ディフェンス(積極的防衛)】だったと。


その為に【敵地にまで入り込みポーランドを防衛した英雄達】を量産する必然に迫られ、過剰なまでの叙勲が行われた。


ウラジミールもそんな中の一人だ。




(身の丈に合わない勲章なんて貰うもんじゃねぇな……)


叙勲により軍曹から曹長に出世し、最新型のKV-1……KV-1シリーズの完成形とも言える"42年型"を車長の地位と共に与えられた。

そこまでは良かった。


だが、オマケに付いてきた自分より息子に歳が近い政治将校は、本気で勘弁して欲しかった。




☆☆☆




まあ、ロシア革命の後に生まれた世代というのはそもそも別種の人間だと割り切っていたウラジミールだが、チェンコスキーが自分の出世……何人を密告して政治将校になったかを自慢気に語りだした時に人間性に疑いを感じた。


そして、教育と称して何人もの新兵達を愛用の鞭で楽しげになぶるのを見て、「ああ、コイツは権力をカサに着たサディストのガチホモか……」という評価を決定づけた。


正直、「なんでこんなのと俺は同じ車内にいるのだろう?」と思わなくはないが、


(まあ、コイツの悪行を我が身可愛さに止めない俺も、所詮は同じ人間のクズなんだろうな……)


と、最近は日課となった自嘲を浮かべるのだった。




「少々我が軍は戦意が低いようですな。嘆かわしいことです。我らは共産主義の啓蒙を、世界中に広めねばならない崇高な使命があるというのに」


"低いのは戦意ではなく技量だ"とか、"そもそもお前の軍じゃないだろ"とか色々と言いたい事はあったが、賢明であればこそ粛清から免れたウラジミールは黙っていた。


「同志曹長。"督戦"の準備を」


「ダー。でも、宜しいんですか? 発砲炎と発砲音からこちらの場所が割れてしまいますが?」


「それがどうしました? 幸い、厄介な敵の航空機(スツーカ)はいません。ならば純粋な戦車戦……」


チェンコスキーはそれなりに高い教養を身に付けた丁寧な口調ながら、どこか鼻につく言い回しで、


「ならば偉大なる祖国が作り、同志【クリメンテ・ヴォロシロフ】の(イニシャル)を冠したこのKVが、狂信者風情が作った"鉄錆臭い棺桶"に負ける筈がないでしょう……!!」




(その"鉄錆臭い棺桶"とやらに、お前さんや俺の所属する赤軍は欧州平原で大敗したんだが?)


あの地獄から生き残ったウラジミールは思いはしたが、「そういえばこの若造はこの戦いが初陣だったか」と思い出した。


(党のプロパガンダを鵜呑みにしてるのか……オメデタイぜ)


【バルバロッサ戦役】においての自分達もそうだったとウラジミールは回想する。


そして無謀に突撃させられ、ティーガーの洗礼を浴びた。


ティーガーは配備されてる数が少ないのか、一度後方に下がって仕切り直した後は出会わなかったが、当時最も数が多かった【チトィーリェ(IV号戦車改型のこと)】ですらも性能は高次元でバランスされていて、対戦車戦に向いた長砲身の76.2mm砲を搭載をはじめ、実戦を踏まえてあらゆる改良を加えた現行の【42年型T-34】でようやく性能的に拮抗できるかどうかというレベルだったのだ。




☆☆☆




「同志中尉殿。どうやら、督戦の必要は無くなったようです」


「ほう……ようやく兵達が己の使命を思い出し、奮戦し始めたのですかな?」


ウラジミールは無表情で首を横に振ると、


「どうやら敵が我々の存在に気付いたようです。1両がこちらに向かってきます」


「フフッ……いいでしょう。血祭りにしておやりなさい」


だが、車長用のペリスコープに映る閃光。

それは……


「敵戦車、発砲」


ウラジミールは抑揚の無い声で告げると、


「ヒッ……!」


ウラジミールはチェンコスキーのしゃっくりのような悲鳴を聞き逃さなかった。


しかし、


"ギィィィン!!"




☆☆☆




(走行しながらこの距離で当ててくるか……いい腕してやがる)


ウラジミールは声を出さずに感心するが、


(だが、残念だったな……)


彼は満足そうに笑い、


(いくら当てたところでその距離からじゃ、お前さんの主砲で何を撃ってもコイツの装甲は撃ち抜けんさ)


「同志中尉、ご安心ください。この42年型KV-1の防御(だけ)は完璧です」




☆☆☆




ウラジミールの見解は、決して間違ってはいない。


KV-1(42年型)の装甲は、車体の前面と側面で90mm、そして如何にも敵砲弾の滑り(避弾経路)が良さそうななめらかな傾斜を描く、全鋳造の砲塔に至っては、前面も側面も120mmもあった。

つまり、砲塔正面ならばミコ達のIV号戦車改型の1.5倍の装甲厚を誇っているのだ……




「フフッ……フハハハッ!! 私の言った通りじゃないですかっ!! 狂信者の戦車など、恐るに足らないのですよっ!!」


チェンコスキーは狂ったように哄笑し、


「同志曹長! ただちにあの身の程を(わきま)えない生意気なブリキを、棺桶に変えるのです!!」


ウラジミールは短く「ダー」とだけ肯定の返答を返した。






主砲が通じなかった相手に、ミコ達はどう戦うのか……?


いよいよ、雪上タンクバトルはクライマックスを迎えるっ!!








次回へと続く







皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m


さてさて、微妙に名前付き新キャラも登場した第6弾、如何だったでしょうか?(^^;


ユッタ

「くぅぅぅ~~っ! まさか虎の子【PzGr40(APCR-T:弾核硬強化徹甲弾)】が弾き跳ばされるなんて予想外ッス!」


チミは本気で悔しそうだね?


ユッタ

「そりゃそうッスよ! それにしても、流石はソ連戦車……頑丈さにかけては折り紙付きッス!!」


他の性能はともかく只でさえ頑丈なKV-1シリーズ中でも、42年型の防御力はリアルチート級だからね~(^^;


なんせ原型から約6t増加した重量のほとんどが装甲の厚さに転換されたっていう噂が(汗)


ユッタ

「でも……」


でも?


ユッタ

「これぞ萌え……もとい。燃えるシチュエーションって奴ッス!!」


前向きだねぇ~(^^;


ユッタ

「ミコ隊長なら何とかします! そこに痺れる憧れるッス♪」



確かに何とかしそうだけどさ(笑)


それでは皆様、また次回にてお会いできる事を祈りつつ(__)




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