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FAP01:第05弾 "見敵必殺(サーチ&デストロイ)"


皆様、こんばんわ~♪


本日、また夜から予定が入ってたりしてるので、慌ててアップな暮灘です(^^;


さてさて、今回のエピソードは……


ユッタ

「ついにミコ隊長が発見した"ラスボス"!」


うおっ!?


ユッタ

「敵は分厚い装甲をもつ正真正銘の"化物"……」


ヲイコラ……


ユッタ

「それを目の前にした時、鋼鉄少女達の判断とはっ!?」


いや、だから……


ユッタ

「今日も雪原に砲声が響くッス!!」


シクシク……

なんかいきなりハッピートリガーの犬娘(わんこ)にジャックされてるし(泣)


とにかくそんな話ですので、お楽しみ頂ければ嬉しいッス♪







IV号戦車改型の車長用キューポラ・ハッチを勢いよく開き、弾かれるように上半身を車外へと出す"ミコ"ことフィンランド陸軍少尉"ミコワルツェ・ヴァレンシュタイン"。


『ミコ! 戦闘中に生身さらすのは流石にマズいって!!』


そう有線の車内通信越しに叫んだのは操縦手のサラだった。


「大丈夫! 遭遇戦に近かったけどアンブッシュ(待ち伏せ)で先手を取ったのはコッチだから、狙撃兵の心配はほとんどない筈だよ」


そう首輪のような咽頭マイクで返す。


『いや、そうじゃなくてさ……』


尚も何か言いたげなサラに、


「それにサラちゃんの運転なら、イワンのヒョロ弾なんかに当たらないでしょ?」


『わあったわあったって! アタシの負け。派手に振り回すから、精々振り落とされんなよっ!!』


「ヤボールだよ♪」


そう返すと、ミコは首から下げた"宝物"……士官学校の入学祝いに父ゲルハルトから貰った自動車並の値段がする私物のカール・ツァイス社双眼鏡を両目に当てのた。


8倍の双眼鏡としては高倍率ながら、無反射コーティングされた大口径レンズのお陰か、視界は軍用官給品とは比べ物にならないくらい明るくクリア。


まさに光学最先進国

プロイセンの面目躍如たる逸品だった。




極端に冷やされ、戦車自体のスピードと重なり合成風力となった北極由来のスオミの風は、容赦なく実年齢より3歳以上幼く見えるミコの童顔に叩き付けられ、切るような痛みすら通り過ぎ、その痛覚すら麻痺させようとしていた。


そんな氷点を遥かに下回る、今や突発的な戦場となった極寒の雪原でミコが必至に探していた物……


それは練度に見あわぬ敵の戦意の高さ、その"理由"だ。




(見つけたっ!!)


"それ"は距離にして1km少々……


そう、雪景色に溶け込むような冬季迷彩に、通信機の数が戦車の生産台数と釣り合ってないソ連戦車にしては珍しい伸びる通信用アンテナ。

そして、


(あのT-34より一回り大きくて、角ばったシルエットは……間違いない!)


「ハンナちゃん! 弾種【PzGr40(APCR-T:硬強化弾核徹甲)】! 装填したら通信機を小隊のオープン・チャンネルに!」


トランジスタ無線機の実用化により、無線通信機材は格段に信頼性が上がると同時に扱いが簡単になった。


ソ連とは逆に通信機が全戦闘車両標準搭載のプロイセンは、その輸出車両も込みで専用の通信手がいらなくなっていた。


簡単に言えば、車長が一人で通信機の操作を出来るようになっていた。

また、今のミコのように車長がキューポラから上半身を乗り出し指揮をとるような場合は、装填手が代理で操作を行う事が一般的だ。


実は乗員5人→4人という減少は、地味にプロイセンの人材的戦力アップに繋がっていた。


何しろ20名の戦車乗りがいるとすると、動かせる戦車台数が4両から5両に増えるのだ。


戦車の生産台数より人員に問題になりやすいプロイセンでは、重要な問題だ。




☆☆☆




蛇足ながら、中隊長以上が乗る通信機材を強化した【指揮戦車】型は、通信先が多く機材もそれなりに高度な物が搭載されている為、旧来通り通信手が乗り込み5人座乗となる。

それはともかくとして……


『"虎の子(PzGr40)"、装填完了♪ あと小隊内通信、繋がりましたわ』


「うん!」


ミコは軽く咳払いして声の調子を確認すると、


「小隊全員、傾聴せよっ!!」


彼女なりに最大限の威厳のある声(だと本人は思っている)をあげ、


「本車より10時方向/距離約1kmに敵装甲偵察中隊の中隊指揮車と思われる【KV-1】を発見! これより撃破に移行する! 支援は無用! 指揮車撃破まで戦闘は各車長の判断に委ねる! 各自の健闘と生存を!!」


可愛い声で勇ましい台詞を叫ぶミコに、


『『『『ヤボール!! 我らパンツァー・フロイライン、誓って戦果を稼がんっ!!』』』』


多少芝居がかってはいるが、力強い返事が返ってくる!




この小隊の皆は同期、しかも女子機甲科の訓練施設はフィンランドに一つしかなかった為、みな気心しれた仲間、そして"戦友"だ。


だからこそ、各車長達が返す言葉もミコをよく知ってるが故の信頼に満ちたそれだった。




そう彼女達は例外なく知っているのだ。


この【ミコワルツェ・ヴァレンシュタイン】は戦闘的……ありとあらゆる才覚を破壊と殺戮に費やすきらいがあるが、文句なく


"強い!!"


という事を。

強いという事はそれだけ自分達が生き残れるという事だ。


小隊で中隊に挑むなんて普通は無謀もいいところだが、誰もミコの判断に文句も反対も無かった。


『ミコが勝てると判断したら勝てる』


と無条件に思えるだけの信頼をミコは士官学校と戦車教練、そして"第二次冬戦争"開戦から僅かな実戦の間に勝ち得ていたのだ。




☆☆☆




今回もどうやらその信頼を重ねる一例や実績になりそうだ。




自分達も前線の【装甲哨戒(パンツァー・パトロール)】に出た戦車小隊で、最初の状況は遭遇戦に近かった。


制空権がまだプロイセンやアメリカから輸入した防空レーダー網を持つフィンランド側にあり、ソ連偵察機の帰還率が極めて低い現在、敵がこちらの防衛網の穴を見つける為、代わりに繁盛に出没してと報告にあった浸透偵察戦車隊……


だが、遭遇する可能性は考えていても、それが現実になるとは誰も思ってなかったかもしれない。


だが、ミコは敵より先に部隊を発見すると何ら焦ることなく、敵は数に勝るが漫然と走らせてるように見える陣形や雪中行軍の様子から高くない練度を看破し、此方に利がある現在の地形を照らし合わせるて"待ち伏せ迎撃"を指示した。




☆☆☆




前線とはいえ主戦域から外れたこの場所に支援砲撃可能な砲兵隊はいないし、ミコは【独立重駆逐装甲大隊(他国で言うなら独立増強戦車大隊)】の本部に連絡を入れたので、運が良ければ余剰なヤーボ(戦闘爆撃機)くらいは航空支援で飛んできてくれるかもしれないが、航空機の戦場需要がうなぎ登りの昨今ではそれも望み薄だ。


言うならば孤立ではない(戦ってるのはフィンランド領内)ものの無援の状況で、数に勝るロシアンスキーと戦ってるのだが……


『ミコ! 食いちぎっちゃいな!』


2号車の車長、ショートツインテのデコチビという、ある意味萌え要素の塊のような小隊副長の言葉にミコは微笑ながら小さくガッツポーズを決め、


「任せて! ロシア製鉄棺桶、また増やしてあげるんだから!」


未だ数だけなら敵が優勢なれど、ミコが作り出した状況により戦いはフィンランド装甲少女小隊の優位に進んでいた!


ミコが……彼女らの"戦巫女"がいる限り、彼女達にとって勝利は必然なのだ。










**********




(ソ連戦車に供給される通信機の数は少ないから……だから、少し戦域から離れたあの位置にいるって事は)


先にも少し触れたが、具体的に言うならソビエト赤軍でも最良の装備が優先的に回されるエリート部隊でも、精々小隊長車以上の戦車にしか通信機は搭載されてない。


普通は中隊長車、場末の部隊なら大隊長車でようやく……というのも珍しい話じゃない。


史実でも第二次大戦における赤軍戦車隊は指揮のまずさが言われる場合が多いが、アメリカの支援を受けれないPPG世界ではソ連深刻な通信機(あるいは無線技術全般)の不足が余計にその状況に拍車をかけているようだ。


蛇足ながら、T-34戦車は機動力の高さでも有名だが、細かく分析すると確かに直進のスピードは速いし悪路走破性も高いが、旋回性能や運動性が悪く、小回りの効かない戦車だったようだ。


実は戦車指揮官がきめ細かい指示を出せず、また末端の戦車兵の練度が低く例え細かい指示を出されてもそれを反映できない為、このような設定で良いとされていた可能性がある。




☆☆☆




KV-1は、T-34と同時期に開発された戦車で、T-34を大型化かつ装甲を分厚くし、防御力を跳ね上げたような"重戦車"だった。


その代償として、機動力が著しく犠牲になっていて、T-34のスピードについて行けず、ソ連の全面侵攻から始まり42年最大の戦いになった【バルバロッサ戦役】では、正面攻勢はT-34に譲り、KV-1は今のように"前線装甲指揮車"やあるいはティーガーがそうだったように機動防御の"移動トーチカ"としての使われ方が多かったようだ。


そして、前線装甲指揮戦車として鎮座していた場合、その役割の一つが……


("督戦"砲撃……!!)




【督戦】とは、字面だけみると戦術の一種に見えるが、なんのことはない。

【誤射による味方撃ち(フレンドリー・ファイア)】ではなく、戦意の低い部隊に対して行われる


【背後にいる指揮官からの意図的な"味方撃ち"】


の事だ。

つまり、『背中から敵前逃亡の罪で背中から撃たれたくなければ、必死で戦え』という意味だ。




☆☆☆




ソ連では、例外的にこの督戦を上の階級にすら行える存在がいた。


断じて憲兵等ではない。

軍内の反共産主義思想を持つ(あるいはそう独断で決め付けた)者に対し、問答無用に"現場処刑"すら遂行できる権限を持つ存在……


「みんな聞いて」


敵よりも味方にサボタージュを理由により多くの弾を撃ち込む存在……

それはソビエト赤軍名物、


「位置とかから判断して、あのKV-1には"政治将校"が乗ってると思うんだ」




☆☆☆




その時、車内や小隊に広がったのは紛れもない嫌悪感だった。


見目麗しい、一歩間違えれば女学生と間違われそうな彼女達だが、紛いなりにもフィンランド正規軍人の一員である以上、"政治将校"がどんな存在か知らない訳じゃない。


というより、彼らの悪逆非道ぶりはあまりに有名だった。


「だから、何が何でもわたしはあのKVを撃破する! 政治将校が潰れれば、督戦の恐怖で保っている敵の士気は、一気に瓦解するとおもうんだ……」


小隊通信で呼び掛けるミコの横顔……


「そうしたらきっと我先に逃亡を図ると思う」


その表情は……笑み?


「その時が、一番の"稼ぎ(ハンターチャンス)"だよ♪」




☆☆☆




『『『『ヤボール!』』』』


その声と同時にミコは再び上半身を車内に滑り込ませ、


「聞いての通りだよ。みんな、あのKVを殺るよ……!!」


「「「Ja!!」」」


短い返事と同時に、ユッタのハンナのサラの気迫が再装填された。


ミコは一度大きく息を吸うと、


「パンツァー・フォー!!」




彼女達の【クアトロ・スペツァル】は、一際大きなディーゼルの轟音を響かせると、激しく雪を掻き分けながらKV-1に対して突撃を開始したっ!!







次回へと続く






皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m


なんか電波が混線(?)して、ユッタに前書きをジャックされた暮灘です(^^;


ミコ

「大変だったみたいだね~♪」


あのなぁ……

飼い犬くらいちゃんと躾ろよっ!?


ミコ

「ふえっ!? 別にわたし、ユッタちゃんを飼ってる訳じゃ……」


犬娘(わんこ)である事は否定しないのな(^^;


ミコ

「だって……ねぇ?」


いや、そこで同意求められても(;^_^A


とりあえず、今回は指揮官っぽいことしてたじゃん?


ミコ

「っぽいじゃなくて指揮官だよっ!!」


まあ、それはそれとして雪上バトルも遂にクライマックス♪


次回は今まで隠されていたミコの本性が明らかに……


ミコ

「ちょっ!? なにそれっ!?」




次回アップは未定ですが、また次回皆様にお会いできたら幸いです(__)




追伸

ご意見ご感想を下されば、ホントに嬉しいですm(__)m





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