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FAP02:第15弾 "プロデュースする者とされる者"


皆様、おはようございます♪


本日は通勤時間アップの暮灘です(^^;


いよいよ、ミコ達は王都ヘルシンキに到着♪


さて、彼女達を待つのは……


ミコ

「ハァ……」


ミコ、出オチならぬ出溜め息は止めれ。

頼むから(^^;


ミコ

「これじゃあまんま道化だよ」


いや、それだと戦車赤くしないと駄目でしょうが(笑)


まあ、今回の一件は"プロデューサー"が悪質(?)だからね~。


しかも、史実のどちらかと言えば悪名高い人物の愛弟子って設定だし(^_^;)


ミコ

「えっ? もしかして……また新キャラ?」


そういうこと(;^_^A

あと、ミコのレアな姿も出てきます(笑)


ミコ

「ちょっ!?」




さてさて王都で何が起きるのか?

お楽しみ頂ければ幸いです♪








場所はフィンランド王国の"王都"ヘルシンキ……そのど真ん中には、史実には存在しない"王城"が聳えていた。


それはまるで生まれたての雪で出来たような、白亜の宮殿……

そのヘルシンキ……いやフィンランドを象徴する城は、


【新雪城(シュロス・ノイシュネー:別名"ノイシュネー城")】


そう呼ばれていた。




☆☆☆




おそらく世界で最も新しい王城だろうが、全体のデザインは明らかに【ノイシュヴァインシュタイン城】の影響を受けた新古典主義的な華やかさと優美さを兼ね備えた城だ。


20世紀に入って……というより【王国としてのフィンランド】の象徴として、ほんの20年前から建城が始まり、完成してからまだ10年も経ってない。


城名がドイツ語なのは、城主兼国主【カールレ一世】……嘗ての名【フリードリヒ・カール・フォン・ヘッセン=カッセル】の出自を考えれば、疑問の余地すらない。


実際、世界で最も新しい王として即位した"義弟"への贈り物として、立憲君主となった皇帝の意向によりプロイセンが建築費を立て替えたのだから、このぐらいのサービスは当然だろう。




さてさて、その謁見の間にて……


(これは夢だ……悪い夢なんだよ……きっと)


ミコは必死に現実と戦っていた(笑)




☆☆☆




ちなみにミコ、テーラーメイドながら無骨な冬季戦用野戦服【asetakki m/36】をベースにしたパンツァー・ユニフォームに制帽を組み合わせる(時にはこれに私物のダッフルコートやPコートを組み合わせる場合もある)といういつものスタイルではなく……


(この格好、なんかスースーするし……)


中は夏服のように薄い生地で、胸元の空色のリボン・タイと襟の形からセイラー(水兵)服をベースに(こしら)えたらしい光沢ある白地の服をインナーとして着用し、それと組み合わされるアウターは胸のポケットにフィンランド王国の国章である赤地に黄色の【シュベルト・レーヴェ(剣獅子紋)】をあしらった、鮮やかな青のウールブレザー・タイプだ。


ちなみに、このブレザーに階級章や各章が飾られる。


更にブレザーと同色の、部隊章が小さく入る白いリボンが巻かれた青いベレー帽が組み合わされるのが正式である。




下半身に目を移せば、スカートはインナーと同じ白のプリーツで、何故か膝上10cmのミニ。

これに黒のロングタイツ(ニーソックス?)とブーツを組み合わせだ。


そう、ミコのスカートとニーソの間には、"絶対領域"が存在していたのだ!!




これこそが……

【パンツァー・フロイライン】大隊専用の式典等で着る、冬季用のいわゆる"正服(正装)"なのだ!!




☆☆☆




薄手のセーラー服にブレザーを組み合わせるのは、いかにも冬の寒さがきついフィンランドらしい配慮を感じさせるし、色合いは、フィンランドの国旗を表現する鮮やかな青と白が基調だ。




蛇足ながら短命に終わった史実のフィンランド王国の国旗は国章と同じ赤地に"シュベルト・レーヴェ"だったが、この世界のフィンランド王国は、『赤地の旗では赤色勢力』っぽいという理由で、


【白軍が勝ってフィンランド王国を立ち上げたことを示す"白地"に、自らが十字教徒であることを示す"青十字"を描き、国章である"剣獅子紋"を組み合わせる】


という現在のフィンランド国旗に近いデザインとなっている。




☆☆☆




その国旗と同じ配色の正服に、国章のエンブレムとの組み合わせは何を言わんとするかは、ミコとて分かるが……

それにしても、


(なんかどっかの女学校の制服みたいだなぁ……)


思わず、『デザイナーに転生者でもいるのでは?』と疑いたくなるほど、実に"ぎゃるげチック"な正服である。











**********




勲章の元ネタであるマンネルハイム元帥に勲章を授与される瞬間、ミコに向けられた砲列に似たカメラ・レンズの群れが一斉に光った。


(まるでフラッシュの十字砲火だね……)


だが、どうせ喰うなら徹甲弾の方がまだマシだともミコは思っていた。


どうやらフィンランドでも史実より早くテレビの中継が始まったらしく、アメリカ製のテレビ・カメラや記録映画用のムービーカメラまで謁見の間に持ち込まれているのを見た時は、思わず背筋に寒気が走ったものだ。


伝統を重んじる王室なら考えられないフランクさだが、【開かれ王室】を目指すフィンランド王室……自らを民より公に選ばれた王、"公王"であると自認するカールレ一世にとっては、この程度は当然の配慮だった。




実際、カールレ一世は"善政の王(と言っても彼もまた義兄と同じ立憲君主だが)"として知られており、


【カールレ"公王"】


と民も親しみを込めて呼んでいた。


スオミの民は誇りを込めて言う。


『共産主義を盲信したロシア人は神と帝を殺した罰当たりどもだ! だが、スオミ人は違う! 我らは新たな国と王を自ら生み出す民だ!!』


と……




☆☆☆




そして式典は続き、典礼通りに王へと(ひざまず)くミコ。


そして、カールレ"公王"より賜る賛辞の言葉……


ミコ……叙勲と同時に新たに渡された階級章によりミコワルツェ・ヴァレンシュタイン"中尉"に対する愛国と忠誠、勇気に対する惜しみ無い賛辞……


叫ばれる団結と巨大な敵への抵抗……




誰が筋書きを書いたかは知らないが、カールレ一世は中々に演説が上手いようだ。


言い方を変えれば、天性の煽動者(アジテーター)の資質があるのかもしれない。


ミコは画面の向こう側にいるフィンランド市民達が熱狂する姿が見えた気がした……




☆☆☆




(こんな筈じゃなかったんだけどな……)


ミコは唱えられる共産主義に対する徹底抗戦に対する決意に、酷い違和感を感じていた……


(わたしは国の為に戦ってる訳じゃないから……)


自分の戦う理由は、国家や民族や信じる神の為じゃない。


ましてや自由や平等や博愛……ましてや一番あやふやな"正義"の為なんかでは断じてない。


(なら……)


だから、考えてしまう。


(わたしは何の為に戦ってるんだろう?)




だが、ミコは無意識に分かっていた。


だから深くは追求しない。


そう……

自分が戦うのに理由など不要なのだと言うことを。

何故なら、


"戦うこと自体が理由"


なのだから……










**********




ノイシュネー城は最新鋭の王宮だけあり、伝統的な城には有り得ない設備がある。


例えば、"放送室"と書かれた……名前だけならなんとなく学校を連想させる部屋がそうだ。


しかし、前述した通りフィンランド王家(カッセル王朝)は"開かれた王室"を目指しているだけあり、報道にはかなり力を入れている。


なので、この部屋はちょっとした……どころではない本格的な放送/音響機器が詰め込まれた中継/編集スタジオになっていた。


赤色灯以外の証明が落とされ、いくつも設置したモノクローム・モニターのみが光を放つ薄暗い部屋で、


「ミコちゅぅわぁ〜ん♪ お姉ちゃんも良いけど、やっぱり貴女が最高よぉ〜ん♪」


やたらとハイテンションな白人女が身悶えしていた(えっ?)




派手な開襟シャツから谷間が覗く胸は標準よりやや大きい位だが、現代日本人基準なら中々に長身。

顔は美人顔で、クセのない長い金髪を後ろで縛り、バッチリとシャネルのパンツ・スーツを着こなしている。


しかし、その左腕にはフィンランド語で、


【宮廷報道局長】


と書かれた腕章が巻かれていた。




瞳は碧眼、本来なら知性を疑わせないような色合いを浮かべてる筈だが……


今はかなり、いやとても残念な事になっているようだが……




☆☆☆




「ああ〜ん♪ やっぱり貴女が"最高のプロパガンダ素材"よ〜♪」


放置するといつまでも暴走してそうなので、とりあえず彼女の紹介をしておこう。


彼女の名は、【マリーネ・ディートハルト】。

一応、誤解の無いように言っておくが天下の大女優【マリーネ・ディートリッヒ】とは何の関係もない。


むしろ関係あるのは【プロイセンのメディア王】……プロイセン皇帝家直属のシンクタンク集団で諮問機関めいた"ゲヒルン"の一員でもある【ヨーゼフ・ゲッベルス】だろう。


正確には、ゲッベルスの主催する


【映像メディア戦略研究会】


の研究生だったのがマリーネだ。

この研究会の目的は……身も蓋もない言い方をするなら、【新しいメディアである映画やテレビの映像媒体をどうやって国家戦略……プロパガンダに生かしていくか?】という機関だった。




マリーネはその中の若手のホープだったのだ。


ゲッベルスとは男と女ではなく額面通りの"師匠と愛弟子"であり、ゲッベルスはマリーネを【ベンジャミン(秘蔵っ娘)】と呼び、同期生達も彼女の熱意と才覚、何よりプロパガンダに対するある種のフェティシズムから、


【ゲッベルスの後継者】


と呼んでいた。




☆☆☆




第一次冬戦争の際は、彼女は戦場特派員として、あるいはスポークスマン(報道官)として抜擢され、そこで遺憾無く才能を発揮した。


ミコやエルフィーに自覚は無かったが、実はヴァレンシュタイン姉妹との関係も決して浅くない……というより、真っ先に独特の嗅覚でエルフィーを嗅ぎ付け、彼女を【華やかで健気な戦場のヒロイン】として報じて、【救国のヒロイン】への道のきっかけを作ったのは、何を隠そうマリーネなのだ。




☆☆☆




マリーネはその功績が認められ、最初はただの【報道アドバイザー】として入場したが、あれよあれよという間に手腕が認められ、出世していった。


だが、使える権限は多くなったのはありがたいが、マリーネ自身としては出世はさほど喜ぶべきものでは無かった。


彼女が欲したのは地位や名誉や給料ではなく"絵になる人物"。


【自分を熱く昂らせるほどに"映える素材"】


だった。

それも出来ればエルフィーと同等かそれ以上の……




そして、彼女は見つけたのだ。


エルフィー以上の"輝き"を放つかもしれない巨大な"可能性"を!!




☆☆☆




もう察して貰えたろう。


如何に"元"プロパガンダ部隊で今は実戦部隊の【パンツァー・フロイライン】の一員とはいえ、あるいは与えられる勲章が今や最も国民が注目される二級マンネルハイム十字章だとしても事象の本質は、所詮は【一尉官の叙勲】に過ぎない。


だが、それを馬鹿馬鹿しいまで過剰な、


【戦意高揚と国威発揚のプロパガンダ・ショー】


まで引き上げた……それを陛下や"殿下"に上申し、あまつさえイベント・プロデュースまでやってのけだのが彼女、マリーネ・ディートハルトなのである。




蛇足ながら、FAP02:第14弾でエルフィーが言っていた"アイツ"とはマリーネの事ではない。


エルフリーデ・ヴァレンシュタインという女性にとり、マリーネは自分に【救国のヒロイン】なんて望んでもいないし柄でもない役柄を押し付けた、


【厄介で鬱陶しい奴】


以上の認識は無いのだから。




☆☆☆




「ミコちゃん、これからも"私のショーアップ"で輝いてもらうからね♪」


言うまでもなく、戦意高揚や国威発揚なんてマリーネにとっては"建前"に過ぎず、本当の目的は……


【公衆の面前で、ミコを最高のプロパガンダとして輝かせる】


事にあった。

そして彼女の手元には、"軍機"のスタンプが押された資料がいくつか……


どうやら、マリーネの"お楽しみ"はこれからも続くようだった。









次回へと続く







皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m




ミコの正服姿と、フィンランド版女ゲッベルスのマリーネは如何だったでしょうか?(^^;


人様に見せられるような物じゃないですが、おこした正服のデザインが割と可愛かったので、結構気に入ってます(笑)




そして、いよいよ出てきたPPGを愛読して下さる皆様にはお馴染みの"ゲヒルン"からの刺客(^。^;)


いや、これだけプロイセンとフィンランドが親密だと、ゲヒルンのテコ入れがあって当然かなぁ~と。




さてさて、ミコにとっては決死の覚悟で戦う現実……受勲式も終わり、次回はまたしても意外な展開?


アップ時期は未定ですが、また次回にて皆様にお会いできる事を祈りつつ(__)





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