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FAP01:第02弾 "救国のヒロイン"


皆様、おはようございま~す♪


実は今、予約投稿の準備をしている所なのでこんばんわ~な時間の暮灘です(^^;




さて、まさかの連日投稿(笑)となった第2話ですが、今回は


【前線少女装甲騎兵】


がPPGフィンランドで生まれた理由にスポットがあたります。


というか、エルフリーデ・ヴァレンシュタインという少女がメインの物語でしょうか?


それは一見すると戦場のヒロイック・ファンタジーなのですが、見方を変えれば……




では、鋼鉄少女達の物語を楽しんで頂ければ幸いですm(__)m







それはおそらく、


「【エルフリーデ・ヴァレンシュタイン】"臨時"少尉」


年端もいかぬ少女達が鋼鉄の獅子を駆り、戦場を疾走する……


「プロイセン本国では時代遅れとされていたIII号突撃砲を自在に操り、赤軍戦車を翻弄してみせた、」


それは"理由"ではなく、


「【現代スオミのジャンヌダルク】……既に貴国は、40年の時点でこれ以上ないほど【救国のヒロイン】という"立派な前例"があるではないですか」


"原因"……




☆☆☆




42年の冬の訪れを待つように火蓋が切られたフィンランドとソビエトの二度目の会戦、【第二次冬戦争】。


それから遡ること約2年前……

まだ、【第一次冬戦争】の余韻が消えぬ頃にある極秘会議が開催された。


いずれ再び起こるだろうソビエト赤軍の再侵攻に対抗する為の、事実上は国防に関するフィンランド最高クラスの会議だった。


【カールグスタフ・マンネルハイム】元帥を座長とするその会議に列席を許された面子の中に、一人の変わり種が紛れこんでいた。


立場的にはオブザーバーという立ち位置の彼の名は、【ワルター・シェレンベルク】。


伊達男という形容詞がよく似合う、"プロイセン統合軍情報部"の中佐だった。




階級だけを見るなら一介の中佐に過ぎないシェレンベルクがフィンランド国防最高責任者主催の会議に出席が許されてること自体が異例なのだが、それはプロイセンが冬戦争で半ば国力を無視した11万もの兵力の派兵と大量の兵器供給も無関係ではないだろう。


少なくとも、第一次冬戦争後にフィンランドにおけるプロイセンの発言力は明らかに増大していた。




他にも色々と舞台裏が有りそうだが……


それはいずれ明らかになるかもしれないし、ならないかもしれない。


しかし、ここで重要なのは、今や【救国のヒロイン】としての知名度がフィンランドにて定着した、


【エルフリーデ・ヴァレンシュタイン】


という少女だろう。




戦後に一躍時の人となったエルフリーデは、マンネルハイムのような"まっとうな"感性を持つ軍人にとっては言い様のない痛みを感じる名でもあった。




☆☆☆




エルフリーデを語るなら、まずはヴァレンシュタイン家とフィンランドの繋がりを書かねばならぬ。


エルフリーデの父である【ゲルハルト・ヴァレンシュタイン】は元プロイセン軍人で、先の世界大戦において生まれたばかりの怪しげな新兵器……まだ海の物とも山の物ともわからない"戦車"に乗りこみ、誰もが手探りで可能性を模索した世代。

つまり、"第一世代の装甲士官"だった。


最初は砲手として入隊し、プロイセン帝国としては事実上、最後の大規模戦である"ソンムの戦い"では車長を勤めたというのだから、ゲルハルトはかなり優秀な戦車乗りだったのだろう。




しかしアメリカに単独降伏し終戦を迎え、帝国から皇国へと再編されたプロイセンは大幅な国家再構築を余儀無くされた。


その一つが大幅な軍縮……本来、大戦の為に国力に見あわぬ程に肥大化した軍備を敗戦国に見合う"適正化"を図るのは、戦勝国(宗旨国)となったアメリカに言われるまでもなく国家再建に向けての最優先事項だった。


そう戦費を、何より国力を消耗したプロイセンには巨大な軍事力を維持する金など、国のどこをひっくり返しても見当たらなかったのだから。




☆☆☆




その一環として徴兵の速やかなる動員解除と職業(志願)軍人の大幅なリストラは必然だったのだろう。


将来的な軍の基幹要員になる面子以外はほぼ退役、良くて予備役編入……


ゲルハルトも多分に漏れず、軍曹から曹長への出世と僅かばかりの恩給と慰労金を渡され、軍から追い出された。


敗戦による脱力感とも相まって、途方に暮れていたゲルハルトだったが、意外な所から勧誘があった。


それこそが、第一次世界大戦とその直後のロシア革命のどさくさに紛れて独立を勝ち取ったフィンランドだったのだ。








**********




フィンランドは生まれたその瞬間から大国ロシア、そしてソビエトの敵国であり一分一秒でも早く精強な軍が必要だった。


その為に大量退役した元プロイセン軍人はまさに渡りに舟であり、絶好の人材補強機会だったのだ。


実は冬戦争の折にプロイセン軍のフィンランドへの大量派遣や兵器供給の一因になったのは、この頃にフィンランドに流れた大勢の……陸海空合わせて1万人を超えるとされる"軍事移民"だ。




それはともかく……

出来立てホヤホヤのフィンランド政府がスカウト・リスト上位に名を記していたゲルハルトに提示した条件は破格だった。


下級貴族ですらないただの平民出身で、しかも士官学校すら出てないゲルハルトに、入隊してくれるだけで正規フィンランド陸軍少尉の、更にフィンランドの士官学校に入校し正規の士官教育と教導官育成課程を履修して入隊すれば、いきなり中尉の地位を約束するというのだ。


絶賛失業中で、軍という若き日の彼にとっては居心地のいい公共組織に未練たっぷりのゲルハルトには是非も無かった。


即決で移住を決定し、僅かな荷物と共にフィンランドへと向かうのだった。




☆☆☆




晴れて装甲上級士官の仲間入りを果たした彼のフィンランドでの生活は、概ね順風満帆だった。


士官学校を卒業し、フィンランド国防軍へ入隊。

またそれと前後して12歳年下の北欧ロリ……もとい。美少女と結婚もしたようだ。


ちなみにゲルハルトの終戦時の年齢は、二十歳以上/三十路以下とのことらしい。




☆☆☆




結婚した年(正確には式より2週間後)、ゲルハルトは早速子宝に恵まれた。


計算が合わない気もするが、細かい事を気にしたら敗けだろう。


出産は妻が幼……いや物理的な小ささ故に大変だったらしいが、無事に生まれたのはとにかく健康そうな珠のような女の子。


そう、その女児……フィンランド・ヴァレンシュタイン家の第一子(長女)こそが、【エルフリーデ・ヴァレンシュタイン】だった。











**********




さて、


『愛さえあればお父さんでも関係ないよね♪』


『流石に正妻の座をお母さんから奪うのは難しいけど……二号さんなら何とかなると思うの☆』


とのかなりぶっ飛んだ(非公式)発言から極度のファザコン疑惑があるとされるエルフリーデであるが、その真偽はともかく父親の仕事に並々ならぬ興味を持ち、ついには周囲に


【男女の性別とは無関係な程のポテンシャル】


を実力をもって認めさせ、まんまと"特例"として陸軍士官学校機甲科へと入校せしめたのは事実だ。




そこでも首席に立ち続けたのだが……


彼女の卒業直前に【第一次冬戦争】が勃発し、エルフリーデの世代は少しばかり早い卒業式を迎え、正規任官となった。




☆☆☆




本来なら、ソビエト赤軍が押し寄せて来なかったら、機甲科首席のエルフリーデとはいえ、研究開発等を行う後方配置の装甲将校として配属された事だろう。


しかし、相手が悪すぎた。


怒涛のように押し寄せてくるソ連自動車化部隊に対し、フィンランドには購入したりプロイセンから有償供与やレンドリースされたまとまった数の戦車はあったが、いかんせん乗り手が不足していた。




かくてエルフリーデが戦場に赴く条件が整ったのだ。




☆☆☆




当時のフィンランドは女性を前線に出すことを当然ながら是としなかった。


だが、当初の侵攻規模は45万人から述べ人員が100万人を越えたあたりで、エルフリーデは【戦車の乗り手不足】というどうにもならない現実を味方につけ、臨時任官という法的解釈がかなり微妙な扱いだったが……晴れて女流実戦装甲将校として、マンネルハイム・ラインにて華々しく戦場デビューを飾った。




☆☆☆



エルフリーデは水を得た魚のように躍動し、その前線装甲将校としての才能を遺憾無く発揮した。


またせめてもの償いというつもりだろうか?


エルフリーデに回された戦車は、疑い無くプロイセンの最新鋭車両だった【IV号戦車】と同じ[75mm43口径長砲]を一回り小さな【III号戦車】の車体に固定砲として搭載した【III号突撃砲】だった。


この通称"III突"は、当時のフィンランド軍保有戦車では最強の攻撃力と最上級の防御力を兼ね備えていた車両だった。


全周囲に指向できる旋回砲塔では無いものの、森林や雪原での待ち伏せからアウトレンジ奇襲砲撃という鉄板迎撃戦法を使う限りそれは極端なハンデにはならなかったようだ。


何故ならエルフリーデの得意戦術……フィンランドの機甲総監補佐までに至った父親譲りの基本に忠実な[機甲待ち伏せ戦術]にも見事に合致していた。




☆☆☆




初陣でいきなり偵察に出てきた3両の赤色戦車/軍用車両を撃破せしめたたのは、戦車の性能というより天性の資質と言えよう。


何だかんだでエルフリーデは最初の10日間で戦車だけで5両を撃破し、早々とエースとして名乗りを上げる。


これはフィンランド軍全体を見ても最速クラスの撃破スピードだった。

まさに"正史"を知る者なら、


『それってどこの乙女版ヴィットマンだよ?』


とツッコミたくなるスコアである。

そして、冬戦争にどうにかケリが付くまでの間に敵戦車1ダースを雪原の前衛芸術(オブジェ)に変え、エルフリーデは一躍【救国のヒロイン】、【現代スオミに蘇った鋼鉄のジャンヌダルク】と国内のあらゆるマスコミに持て囃された。









**********




こうして彼女は、少なくともホームグラウンドのスオミで戦車兵としてなら、非力な女性でも戦える事を"実例"として証明してしまった。



しかしそれは言い方を変えれば、男性主体のオーソドックスな兵力編成のフィンランド軍正面兵力だけでは、ソ連の猛攻の前には戦線を支えきれなかった事を同時に証明したような物だった。


だからこそ、国家非常事態の昨今……


『流石に徴兵は反対だが、志願なら女性が軍に入隊し、お国の為に前線に立ってもいいのでは?』


という風潮が俄に沸き上がり、また一部はより明確な意思と共に尖鋭化し、


『エルフリーデお姉様に続け!!』


とばかりに盛り上がりを見せていた。


当然、マンネルハイムもこの風潮を知らない訳ではなかったが……


「シェレンベルク君、君はハシカのような今の風潮……熱病のような【パンツァー・フロイライン(鋼鉄お嬢様兵)】を公式に認めろというのかね?」


まるで国辱を語るように……いや、守るべき乙女を戦場に出してしまった事を明らかに恥と思うような苦虫を纏めて噛み潰したような顔をするマンネルハイムに、シェレンベルクはしれっとした顔で、


「"鉄は熱い内に打て"と申しますし」


「エルフリーデ・ヴァレンシュタインの一件は例外に過ぎん。戦車に乗れば誰しも【戦場のワルキュリア】になれる訳ではない」


「閣下……」


シェレンベルクは、むしろ爽やかな笑みで、


「スオミには国威発揚も戦意高揚も優秀な装甲将校や装甲騎兵も、直ちに必要なのではありませんか?」




☆☆☆




マンネルハイムがシェレンベルクになんと返したのかは残念ながら残ってない。


だが、それから程無くフィンランド議会において、未婚女性志願兵の実戦部隊への配属/前線配備を非常事態においてのみ議会の承認の元で暫定的に認める制度、世に言う


【パンツァー・フロイライン(Panzer Fraulein)】制度


が正式に可決されたのだった……







次回へと続く






皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m


書いてる内に頭のネジが緩んだエルフリーデは如何だったでしょうか?


彼女は戦場や戦い方はガチで鉄板ですが、頭の中身は平常運転ではゆるキャラだったりして(笑)




最初はプロパガンダ部隊として存在していた【パンツァー・フロイライン】が何故、戦場に立つ事になったのか?


それも何となく追っていけたらなぁ~とか思ってます(;^_^A


それでは、また次回にて皆様にお会いできる事を祈りつつ(__)





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