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FAP02:第07弾 "アンジェリカとヴァレンシュタイン姉妹"


皆様、おはようございま~す♪


通勤しながらの早朝アップは久しぶりの暮灘です(^^;




さてさて、今回のエピソードは一部で何故か"会長(笑)"と呼ばれてるアンジェリカにスポットライトが当たります♪


アンジェリカ

「人の過去をほじくり返して何が楽しいんだか」


いや、まあいいじゃん(^。^;)

ミコとエルフィーを語るにゃ、アンジェリカ抜きには無理だしね~。


アンジェリカ

「そりゃそっか。まあ、ヴァレンシュタイン姉妹とは腐れ縁。かれこれ10年以上の付き合いになるし」


そうそう♪

アンジェリカのそういうサッパリというかざっくりしたところ、かなり好きだぞ?


アンジェリカ

「あ~、はいはい。そういう事にしといてあげるわ」




とにもかくにも、アンジェリカと共にミコとエルフィーの過去が語られるエピソード、お楽しみ頂ければ幸いッス♪








大隊長室から自分の部屋(小隊長室)に戻ってきたミコは、自分の部屋に各車長を集めた。

開口一番に、


「んでミコ、今度はエルフィーに一体どんな無理難題を叩き付けられたのかい?」


とニヤリッと笑いながら先制攻撃を放ったのは、


「ううっ、流石は"アンジー"ちゃん……お姉ちゃんと付き合いが長いだけあって、よくわかってらっしゃる」


"アンジー"こと2号車の車長と小隊副長を兼ねる【アンジェリカ・ヤヴェリナ】曹長だった。


チャーム・ポイントはショート・ツインテールにした【これぞ赤毛の見本!】とか【赤の王】と言いたくなる真っ赤な髪と剥き出しのオデコ(ユッタ曰く"お凸娘")、そして妙に大人っぽい流し目をする切れ長のツリ目だ。


体格はミコやユッタより更に小柄で、現代日本風に言うならまるで小学生(それも精々中学年)のようだが……


実はアンジェリカ、小隊の最年長で【パンツァー・フロイライン】大隊全体でも屈指のベテランなのだ。

というか信じられない事にエルフィーと同い年である。


何しろ初陣を飾ったのが大隊長を務めるエルフィーこと【エルフリーデ・ヴァレンシュタイン】大尉殿と同じ冬戦争(第一次冬戦争)、しかもエルフィーが少尉時代に車長を務めた【III号突撃砲(III突)】の砲手(!?)ときてる!


というのもアンジェリカ、エルフィー&ミコの【ヴァレンシュタイン姉妹】の幼なじみの腐れ縁なのだ。




☆☆☆




少しアンジェリカの事を話しておこう。


彼女は今でこそフィンランドの永住権と市民権、ついに国籍を得ているが、生まれはフィンランドではなくバルト三国の一番北、フィンランド湾を挟んで真下にある【エストニア】の出身だ。




古今東西を問わず、自分が住む母国が弱いというのは悲劇だ。


エストニアはフィンランドとほぼ同時期にソ連から独立したのは良いものの、独立後に【VAPS(解放戦争退役軍人同盟:極右のファシスト集団)運動】が反政府運動を開始して政情不安定化。

日に日に治安が悪くなる一方だった。


アンジェリカの両親はそれを嫌い、フィンランドに移民したのだ。

アンジェリカが8歳の時だった。



基本的には国力増大の為に移民はウェルカムなフィンランドだが、急激な流入はやはり社外を混乱させる。


何しろ最盛期には年間5万人のエストニア系移民が出たのだ。


アメリカの後ろ楯で【気が付けば人口8000万人越えの欧州屈指の大国】に返り咲いてたプロイセンじゃあるまいし、人口600万(それでも史実より遥かに多い)に過ぎないフィンランドの内務省移民局に一気に5万人以上の移民を処理できる事務能力はない。


参考までに言っておけば、日本の県で人口が近いのが千葉県(約620万人)と兵庫県(590万人)である。

どちらかの県にある日突然、5万人の人間がイベントとかでなく居住の為に押し寄せたらどうなるかを想像すれば、当時のフィンランド政府の混乱っぷりが分かるだろう。




☆☆☆




最終的に事態が沈静化するまでの間に15万人を越えたエストニア系移民だが、仮住居と仮居住権利は与えられたが、流石にいつまでも税金でおんぶにだっこという訳にもいかない。

そんな事をすれば、世論からは袋叩きだろう。

当たり前だが、たかだか600万人で15万人を養うのは至難の技だ。




かといって放置は論外。

職も食い扶持もない15万人のエストニア人がマフィア化すれば、それこそ目も当てられない。


15万人の犯罪者が食い散らかすには、600万人の生け贄羊は小さすぎる。


だからこその妥協。

仮初めの家と身分保証を与え、臨時でもなんでも雇用を確保し、生活自立を事を促進させる……それしか無かった。




幸い移民が本格化したのは30年代に入ってから、時代はプロイセンが牽引していた好景気の只中、小国のフィンランド王国とて多少の職の創出はできた。




☆☆☆




やがてフィンランド政府の必死の努力と融和政策の甲斐あり、エストニア人はスオミの大地に根を張り生きるようになったが、中々に大変だったのが、


【フィンランド国籍を取りたがってるエストニア人】


に対する処置だ。

先も言ったようにいくらなんでも、電子化の電の字もなかったこの時代のフィンランド移民局が15万人もの人間を一気に審査して国籍や、その前段階と言っていい臨時発行ではなく"正規"の永住権や市民権を発行できる訳はない。


しかも、当時は国家間の経済格差が広がり混迷する欧州状勢……移民申請は何もエストニア人だけではないのだ。




実際、ミコとエルフィーが出会った頃のアンジェリカは、フィンランド国籍どころか永住権も市民権も持ってはいない、不安定な状態だった。










**********




ミコとエルフィーはフィンランド生まれとはいえ、移民の二世。

【スオミの機甲戦の父】と称される父親のゲルハルトに至っては、第一次世界大戦で活躍したプロイセンの戦車兵だ。


そんなバックグラウンドがあったせいで、ひょんな事から知り合った……


というか、ミコとエルフィーが買い食いしていたパン屋の看板娘がアンジェリカだったのだ。




バックグラウンドにどこか似たとこがあったのか、三人はたちまち意気投合してよく遊ぶ間柄となった。


アンジェリカはエストニア人という事で謂われない誹謗中傷や差別は(他国に比べれば細やかな)有るにはあったが、生来打たれ強くさっぱり……というかざっくりした性格のアンジェリカは気にする事は無かった。


ミコやエルフィーもそれは同じ事だ。

アンジェリカは、


【女の子なのにお人形遊びより戦車転がす方がずっと好き】


という控え目に言って変わり者のヴァレンシュタイン姉妹の良き理解者であり続け、一緒に"戦車兵ゴッコ"……と言っても実際にヴァレンシュタイン邸の広い庭で、本物の戦車を乗り回すのだが……をしてくれる"戦友"だった。




☆☆☆




時代は流れ、エルフィーが特例として入校を果たし、卒業して正規軍人(少尉)として任官する時も、アンジェリカはパン屋の看板娘&時折ミコと一緒に"なんちゃって戦車兵"をやっていた。


この頃には両親が定職について勤続5年以上(これが一つの目安になる)が経過し、永住権は降りていたのだが……


だが、事態は39年から40年にかけての"第一次冬戦争"で大きく動き出す。




当時、冬戦争を間近に控えてたフィンランド政府は、


【軍に志願して三年過ごせば漏れなく永住権を、戦場に立てば市民権を、前線で戦功を立てれば国籍を】


端的に要約すればそうなる内容を、移民達に呼び掛けたのだ。


自国生まれの人間なら当たり前に持つそれらの権利を、軍人確保に使うとは何事かと思うかもしれないが、移民というのは常に立場が弱いのだ。


【その場所に居続けるだけでも、色々な意味で闘い続けなければならない身分】


だと言い換えてもいい。


それに切羽詰まった国家は、史実でもこの程度は平気でやる。


例えば、"グリーン・カード"欲しさに入隊してベトナムのジャングルに消えた若者が何人いたことか……




選挙がある国ならどこだって、選挙権ある自国民より選挙権がない移民が戦死する方がマシだと政治家なら普通に思う。


何故なら、戦死した者の家族や縁者は、決して戦争を起こした政府や政治家を許しはしないのだから。


それにどこぞの国のように学生を徴兵して特攻させるよりは、ずっと穏健だろう。




☆☆☆




勿論、エルフィーはそれを知っていた。


そして、いざ始まる第一次冬戦争!


ソ連の猛攻に継ぐ猛攻!


というか初っぱなから45万の軍勢を送り付けるソ連は異常だが、それに対応して25万の兵力を僅か2週間で送り込んでくるCETO北部戦闘管区(特に単独で11万人を送り込んだプロイセン)も中々に凄い。


しかしソ連の動員が100万人を越えたあたりで、いよいよフィンランドも兵力が足らなくなり、エルフィーにも出番が回ってきた。


「この時を待ってたのよ♪」


エルフィーはそう喜ぶと、真っ先に呼び寄せたのが志願年齢(=徴兵年齢)を越えていたアンジェリカだ。


本人はミコも誘いたかったようだが、年齢的にギリギリアウトだった。




☆☆☆




「ねえアンジー、貴女のスイートポテト・パイは絶品だけど、そろそろパイを焼くの飽きてきたんじゃないかしら? なら、今度は私と一緒に共産主義者をローストナッツにしてみない?」


アンジェリカの記憶するところ、そんな感じの誘い文句だったらしい。


まあ、一悶着あったらしいが、最終的にアンジェリカは、


「まいっか。エルフィーの無茶振りはいつもの事だしね」


と最後は溜め息混じりに了承した。


勿論、エルフィーが自分に市民権やフィンランド国籍がまだない事を気にかけていた事をちゃんとわかっていたのだから。








**********




その後の道筋は、簡単にまとめよう。


第一次冬戦争の後、


【エルフリーデ・ヴァレンシュタイン=救国のヒロイン】


という、やや作為的な臭いがしないでもない動きが活発化した。


しかし、【戦場で男顔負けの活躍をした美少女】というロマンティシズムに溢れたエピソードは、戦争に疲れたスオミの民にとって最良の娯楽となる。


余談ながらエルフィーのIII突の乗員は、実は全員少女と女性だったのだが、ある者はマスコミの熱狂っぷりに恐れをなし、ある者は自分が見世物になるのを良しとせず、またある者は恋人に悪いからとマスコミに出るのを拒否した。


アンジェリカも断った側で、その理由は


「だって、面倒臭いじゃん?」


という実に彼女らしい物だった。




☆☆☆




主に産業界からの要求と経済復興の為、戦後慌てて徴兵と予備役の動員解除した軍だったが、かといっていつソ連が再び攻めてくるか分からない原状では、可能な限り戦力は維持したい……


そこでフィンランド国防軍最高司令官であるマンネルハイム元帥の"客員幕僚"だった一人のプロイセン軍人シェレンベルク中佐の提唱により、少女と女性だけで編成される【実戦を想定したプロパガンダ用装甲部隊】の設立計画……


【パンツァー・フロイライン制度(プロイエクト・パンツァー・フロイライン)


が議会により可決され、成立するのだった。




☆☆☆



とにもかくにも、動き出したパンツァー・フロイライン設立計画の一環として設立されたのが、


【フィンランド王立女子戦車訓練学校】


だ。


軍立やら陸軍やらがつかないのは、現役男性軍人から根強い反対があったからだ。


まあ、最初からプロパガンダ部隊として設立されているのだから、【実戦を前提とした】という一文が建前にとられても仕方ないだろう。

つまり、


【国民向けのパレードできらびやかに行軍できればいい婦女子と、赤色ロシア人とガチに殺し合いする兵士を一色単にするな】


という事だろう。

とはいえ、カリキュラムは普通の男性でも脱落者が出る……正規の戦車兵育成と、基本的には同じ厳しい物だったのだが。




☆☆☆




アンジェリカは戦後、通称"戦女"と呼ばれる(他にも色々と愛称や略称があるようだが)に入学し、改めて戦車と機甲戦を学ぶ事に決めた。


既にフィンランド国籍も得ていたのだが……彼女なりに色々と思うところが有ったのだろう。




しかし、彼女は既に実戦を潜り抜けてきた戦車兵であり、実はエルフィーの砲手を務める時に伍長の、野戦任官で軍曹の階級を得ていた。


そのせいで単純な一訓練生という訳にはいかず、生徒としては生徒会長、時には【ヤヴェリナ軍曹】として教官の補佐や代役を務めたようだ。




☆☆☆




卒業と同時にアンジェリカは曹長の階級を得て、他の卒業生達と同じく【パンツァー・フロイライン】大隊に配属となった。




希望の配置を聞かれた時にアンジェリカが迷わず選んだのは、


【ミコの副官】


だった。

あまり口に出しそうも無いが、アンジェリカにとってもきっとミコは、いつまでも世話を焼きたい"可愛い妹"なのだろう。







次回へと続く






皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m


アンジェリカのあまり出てこなかった人物像やミコとエルフィーの過去エピソードは如何だったでしょうか?(^^;




話は進んでいませんが(苦笑)、ある意味ユッタ達以上にミコ(とエルフィー)に関わりの深いアンジェリカは、一度しっかりと掘り下げてみたいキャラだったんです(;^_^A




ちなみにアンジェリカのビジュアル・イメージは某"会長"さんというより、【加速世界の赤の王(二代目)】だったりして(笑)


まあ、あとは実年齢より容姿に見合った"変わった性癖(えっ?)"がありますが、それはいつか書けるといいなぁ~と(^_^;)




アップ予定は未定ですが、できればまた次回で皆様にお会いできる事を祈りつつ(__)





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