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FAP02:第05弾 "ヴァルター・ザ・バトラー"


皆様、こんにちわ~♪


思ったより執筆に手間取りましたが、何とか休み中にアップできてホッとしてる暮灘です(;^_^A


ミコ

「わたしも久しぶりにデレてホッとしてるよ~(汗) 全然出番ないから、このままターシャちゃんに主役交代かな?って……」


いや、そりゃないから(^。^;)

確かにターシャは"もう一人の主役"かもしれないけど(笑)


ヴァルター

「そうですとも。ミコお嬢様以上にヒロインらしいヒロインは、【突撃お嬢】には存在しません」


えっ?

誰?


ユッタ

「アーーっ! なんで変態がこんなとこまで出没してるッスか!?」


ヴァルター

「ふん……貴女に変態呼ばわりされるとは、心外ですね」


こらこら!

ここでケンカすんなって(^^;


彼の正体は本編にてって事で!


それでは、またまた新キャラ登場の第5弾、お楽しみ頂ければ幸いです♪








舞台は変わり、またまた1942年12月初旬、ラドガ湖から半径150km圏以内……


大雑把なくくりであるが、詳しくは軍機という所で納得していただければ。




少女&女性だけで編成された、"本来なら"戦意高揚のプロパガンダ部隊である司令部直属独立戦車大隊【パンツァー・フロイライン】……


ミコ、ミコワルツェ・ヴァレンシュタイン少尉が指揮するのは、その中の1小隊5両に過ぎない。


しかし、この5両……パレードどころかついさっき中隊規模、強行偵察で暫定国境線を越えてきた約3倍のソ連戦車と殺り合ってきたばかりだ。


本来ならフィンランド国民に"断固として戦う姿勢"を魅せられればそれで良かった筈の少女達が、本人達の強い希望があるにせよ


【対ソ最前線を構築する一戦力】


として現実の戦闘部隊として数えねばならない……

それが今のフィンランドの偽らざる国情だった。


逆に言えば、それほどに……予備役に徴兵を行なってもまだ足りぬほど、ソ連とは巨大な敵だったのだ。




☆☆☆




ミコ達が基地に辿り着いた時、周囲は喝采と歓声に包まれた。


理由は言うまでもない。

ミコ達が為した3倍もの敵に対する一方的な勝利だ。


戦車の質で勝り、なおかつトハチェフスキーを筆頭に優秀な軍人を大量追放したダメージからまだ完全に回復していないソ連赤軍、それも練度の低い末端部隊だった為、順当勝ちとは口が裂けても言わないが奇跡と呼ぶには少々憚られる結果ではある。


少なくともミコはそう考えていたし、


『勝てる公算が大きかったから戦っただけだよ?』


おそらく、その程度の話だ。




しかし、いつも【ロシア人の圧倒的な数の暴力】に悩まされてるスオミ人にしてみれば、やはり吉報に違いない。


この細やかな凱旋……

第一次冬戦争ですら45万人の兵力を投入したソ連が、


『今回は更に大規模な派兵となるだろう』


と公言してる【第二次冬戦争】……


赤軍特有の自らの政治信条を高らかに叫ぶ勇ましいプロパガンダはさておき、現実に【共産主義という"新興宗教"への妄信】を糧に襲い来る、50万を超えるであろう死兵の群れに対し、内心並々ならぬ恐怖心を抱いているフィンランド人は、このような


【大勢に影響がでない程に小さな勝利】


でも、大きく勇気づけられ、自らを奮起させられる。

そう……


『あんな小さな女の子達にできるなら、自分でも!!』


『可愛い娘っこ達が最前線で命懸けで戦ってるのに、俺達が後方でヌクヌクしてていいのかっ!!』


と……

確かに本来の意図とは乖離してしまったが、なるほど確かに彼女達は正しく、


【プロパガンダ部隊】


なのかもしれない。

何しろ、実際に戦ってる彼女達には問答無用の説得力がある。

今回の"小さな戦い"とて、軍広報部の手により


【美少女戦車隊、数倍の敵を圧倒セリ!! なお当方の損害は軽微!】


のように嘘や誇張ではないが事実以上の華々しい勝利として喧伝され、フィンランド国民全体の士気向上に役立たされる事だろう。


もちろん、皮肉を込めて言っているのではあるが……










**********




本式な軍楽隊ではなく基地有志一同で即興演奏される【フォイクト】……【フィンランド騎兵隊行進曲】でも知られるメロディの中、ミコ達は帰ってきた。


多くの基地住人の祝福と賛辞を受けながら、ミコは小隊長室へと向かう。


戦時下につき細やかな規模だが、非番になる明日は仲間内で"祝勝会"が開かれるらしい。


それが自分達がまだ余裕がある証なのか、あるいは不安の裏返しなのか……




(おそらく後者だよね……)


そう思いながら、ミコは階級に見合う自分の部屋のドアノブに手をかける。


いずれにせよ、今日は部下(特に戦闘後ダメージを確認してる整備隊)の報告待ちと自らの"戦闘詳報"制作に忙殺される。


(明日の事は明日考えよっと……)


ガチャリとドアを開けた途端に、


「お帰りなさいませ。"ミコお嬢様"」




☆☆☆




(鍵が掛かってた筈の)小隊長室の中から、優雅に一礼し声をかけてきたのは、二十歳絡みの青年だった。


白い肌に男にしてはやや長めに揃えられた黒い髪……

整ったどこかオリエンタルさが混じった顔立ちに切れ長の瞳にクールだけど、冷たくはない輝きだ。


長身で線は細いが不思議と華奢な感じはせず、寧ろ実際の体格よりずっと強靭な印象を受けるから不思議だ。


何より特徴なのは、一切の破綻なくピシッと着こなす"執事服"だろう。


というか、どう考えても前線の軍事基地には不似合い、まさに妖しさ大爆発な存在である(汗)


しかし……




「あっ、"ヴァルター"♪ 来てたんだ?」


この有り得ない不自然さをあっさりフル・スルーした。


まるで青年執事(?)……"ヴァルター"とやらがこの部屋にいることに、欠片ほどの疑問を感じないように。

むしろ、少し嬉しげな笑みすら浮かべている。


そんな何かが可笑しいが穏やかな空気も、


「あ―――っ!! なんで"変態執事"がこんなとこにいるッスかっ!? ここはミコ隊長の部屋ッスよっ!!」


そう声を荒らげ柔らかな空気を跡形もなく吹き飛ばしたのは、いつの間にかミコの背後をサイレント・ストーキング(?)していた"ミコの忠犬"、ユッタだった。


流石【ヤークト・ユッタ(猟師のユッタ)】の二つ名持ちだけあり、"獲物"に気取られぬようにコッソリ近付くのはお手の物なのだろう……きっと。




「変態執事とはご挨拶ですね? "犬娘(わんこ)"の分際で」


ヴァルターはフフンと鼻で笑うと、


「私は【ヴァレンシュタイン家の執事】。何時なんどきミコお嬢様のお側にいては不思議ではないでしょう?」


嘘ではない。

彼のフルネームは【ヴァルター・パーガン】と言って、ヴァレンシュタイン家に仕えるゲルマン系イギリス人のれっきとした執事だ。


年齢は『秘密です』との事らしいが。


イギリスで本格的な執事教育を受けたらしく、(少なくとも見た目は)若く優秀な執事だ。


ミコが士官学校に入るまでは、"執事見習い"として当主ゲルハルトではなく、ミコの半ば専属として働いていたらしい。




「そんなこと言って"また"ミコ隊長の使用済み下着をくすねるつもりッスねっ!?」


また……?


「濡れ衣ですよ。主の手を煩わせぬ為に洗濯物を持ち帰り、私自身が自ら一枚一枚洗濯してるだけですよ?」


しれっと言い切るヴァルターに、ユッタは半眼で、


「……じゃあなんで、いっつも使用済みの方の数が合わないんスか?」


「……使用に耐えなくなった肌着を新たに交換するのも執事の勤めです。それより……」


ヴァルターは意味ありげに笑い、


「何故、貴女がミコお嬢様の肌着の数を把握しているかの方が、私はよほど気になりますが?」




"バチバチバチっ!!"




「ミコ隊長、隊長のぱんつをくすねて、絶対にクンカクンカしてたり汁まみれにしてるこの変態を殺っちゃっていいッスか? いいッスよね?」


とフィンランド産P-38が収められた腰のホルスターに手を伸ばすユッタに、


「黙りなさい駄犬。今日という今日こそ、私が躾て差し上げましょう」


そう睨み付けながら、何が収められてるか解らぬ懐に手を伸ばすヴァルター……


「そっちこそ黙るッス! この世でユッタを躾ていいのはミコ隊長だけッス!!」


まさに一触即発!

誰か止めなければ、直ぐにも発動条件が低く戦闘レベルはそこそこ高いリアルバウトだかエンカウント・バトルが始まってしまいそうだが……


「相変わらず二人とも仲いいんだねぇ〜」


「「誤解です(誤解ッス!!)」」


ミコのコメントに対するリアクションは、実にシンクロしていたのだった。










**********




「ところでヴァルター、今日はなんの用事? 洗濯物の回収にしては早すぎない?」


実際、ヴァルターが前にミコの部屋を訪れたのはまだ一昨日の話だ。


ヴァルターは自然な動きでミコの背後に回り、彼女が冬季戦用防寒外套を脱ぐのを手伝い、慣れた手つきでハンガーにかける。


不必要に近かったり、うなじや髪のそばでヴァルターが香り……戦帰りでほんのりと汗をかいたミコの体臭を堪能するよう大きく息を吸った気がするが、ミコは全く気にしてない。


それはそうだ。

ミコがヴァレンシュタイン邸にいた頃は、服どころか下着の着替えまでやっていたのがヴァルターなのだ。


もちろん着替えだけでなく小さい頃はおトイレも、未だに屋敷に帰ればお風呂も一緒。


実際、ミコの肢体(からだ)の隅々を世界一知ってる……色々な"穴"の大きさや形状から、ホクロの位置まで一番知ってるのがヴァルターだろう。




まあ、そんなミコから無類の信頼を時間と共に勝ち得てる彼だからこそハンガーをかける瞬間、ヴァルターはユッタにだけわかるよう勝ち誇った笑みを向けられるのだろう。


いや、ミコが絡むと存外にヴァルターも子供っぽい一面が顔を覗かせるのは、全く否定できないが。



まあ、そんな部分こそが"同類"であるユッタの神経を逆撫でするのだろうが……




「はい、ミコお嬢様。お嬢様の【ご注文の品】が完成しましたので、早速お届けにあがりたいと思いたいと」


「えっ!? もう出来上がったの?」


驚きの顔をするミコにヴァルターは頷き、


「はい。こちらに」


そうラゲッジ・スペースから上質な作りが一目でわかる革張りのブリーフケース(?)を取り出し、そっと机の上においた。


「早速、見せて欲しいな?」


期待を込めたキラキラした瞳に、ヴァルターは内心で神に感謝の言葉を捧げながら、ケースのロックを外した。

その中身は……




☆☆☆




「うわぁ……」


ミコの口から思わず感嘆の呟きが漏れる。


「手にとって見て良いかな?」


ヴァルターは苦笑しながら、


「それはお嬢様の為に職人の手により丹念に創られた物……主の吟味を受けなくば、なんの意味がございましょう?」


ミコが頷き、取り出した中身は……




「スゴく……大きいッス……」


思わずそう呟くユッタ。

彼女の視線は、ミコが手にとったそれに釘付けだった。


無理もない。

ミコが持つのは、彼女の為に創られた、世界で今のところ1丁しかない、


「いい"拳銃"だよ。間違いなく、ね♪」


手に吸い付くようにぴったり決まるラバーコーティングされたグリップを握りながら、ミコは満面に微笑んだ。




☆☆☆




そう。

ヴァルターが持ち込んだのは、ブリーフケースではなくガンケースだった。


その中に収納されていたのは、1丁の銀色に輝く"リボルバー"だった。


ぱっと見て解るのは、サイド・スイング式のシリンダー(リボルビング)と、ダブルアクション/シングルアクション(DA/SA)のトリガー・メカニズムを持つ【モダン(近代的)・リボルバー】だと言うことか?


もう少し詳しく言えば、やたらと太く見える銃身を持つおそらくはステンレス製のシルバーボディに、鈍い鐵色(くろがねいろ)に輝くノン・フルーテッド・シリンダーが組み合わされた2トーンカラーのピストルで、グリップはミコの手や指にジャストフィットするようにオーダーされたそれは、もっと未来なら【パックマイヤータイプ・グリップ】と呼ばれたかもしれないグリップと組み合わされてる。


全体的に言うなら、ミコのアクセサリーと呼ぶには少々禍々し過ぎる……よほどの阿呆じゃなければ、恐ろしい殺傷能力を容易に想像できる代物だった……


「ヴァルター……"この子"の事を教えてくれるかな?」


「御意にございます。ミコお嬢様」








次回へと続く






皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m


いよいよ出てきたの……というか、ようやく出せたユッタに並ぶ【ミコ至上主義者】のヴァレンシュタイン家執事(笑)


皆様、如何だったでしょう?(^^;


実は名前こそ色々候補はありました(最初はヴァルター・ケーニッヒという偉そうな名前もあった)が、原案自体は実は


【ミコの非戦場系サポート(お助け)キャラ、ミコマニアな執事(笑)】


と企画段階当初からあったりします。


まあ、ある意味"戦場のユッタ"&"日常のヴァルター"って感じの"対キャラ"なんですよね♪


ミコ

「ホントに二人とも仲良いよね~♪」


ヴァルター&ユッタ

「「誤認です(誤認ッス!)」」




こんな感じにミコの為に働いてくれる事を願ってたりします(;^_^A




それでは、また次回にて皆様にお会いできる事を祈りつつ(__)





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