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FAP02:第04弾 "フェニックス&コサック"


皆様、こんにちわ~♪


今日も今日とてこっそりアップ(笑)な暮灘です(^^;




最近は筆の滑りがよく、何とか連日アップが続いてますが、ちょっと週末は怪しいです(;^_^A


ん?

今回は何時ものジャック犯(?)がこないな……?


レパンティエフ

「ターシャ君なら来ないよ? 今は荷造りに忙しいみたいだし」


えっ?

なんだか萎びた感じのオッサンが……


ミリヤ

「失礼な! レパンティエフ様は【救民の英雄】……」


レパンティエフ

「まあまあ、ミリヤ君。我々が何者なのかは本編を読んでいただければ、分かる事だから」


ミリヤ

「そうですわね……私がレパンティエフ様の内縁の妻だと言うことが、天下万民に知れ渡ることですし」


レパンティエフ

「ミ、ミリヤ君!?」




何か訳ありっぽい上に濃い目の味付けな二人だなぁ~(^^;


というか、また新キャラ?(汗)


そんなこんななFAP02:第4弾、お楽しみ頂ければ幸いですf^_^;







「"コレ"を見ると、ネスト(拠点)に帰ってきたって気がするわ」


ターシャは戦車を整備増強中隊……

普通の整備中隊に比べ、戦車1両あたりを担当する整備士の頭数が多く練度も階級も高い、ターシャ率いる【バーバ・ヤーガ】が正式には、


"沿海州方面軍(プリモーリェ・ダルメ)司令部直轄"第13特殊戦闘装甲車両実験大隊"


という名を持つ【新型戦車や新装備の実験部隊】という側面を持つからこそ許される、ソ連というお国柄を考えれば贅沢な整備部隊に預けた後、彼女は基地の発令所へ出頭した。




☆☆☆




ターシャこと"タチアナ・ロジェストヴェンスカヤ"特務大尉が拠点にしているのは、沿海州方面軍がポーランドに設営した【ペレストロイカ(改革)】基地だった。


まあ、赤軍最高司令部や共産党等のモスクワ勢力には、【技術改革を起こし、革命政権の更なる発展を促す】と説明しているが、本当のところは"リヴァリューツィヤ(革命)"と似て非なる言葉を選んで基地につけ、軽く嫌がらせをしているようにも思える。


言うまでもなく"沿海州(プリモーリェ)"に住む5000万人超の人間は、革命により結果として冷飯喰いどころか、冷えていようが温かかろうが二度とこの世で飯を喰えなくなる目に合わされかけた人とその家族や末裔で構成されているのだ。


ならば、「お前たちは革命を起こしたかもしれないが、俺達が起こすのは改革だ!」と言いたくなるのは、むしろ痛いほどにわかる。


その象徴ともいえるのがターシャが冒頭で言っていた"コレ"、正面玄関を入ると直ぐに目に入る【沿海州"州旗"】のタペストリーだった。




☆☆☆




いかに半ば独立裁量が認められているペレストロイカ基地であっても、誰からも見える位置にかかってる旗は、赤地に黄色の鎚と鎌……だれもが知ってるソビエト旗だ。


体面や面子を酷く気にするスターリン政権下では当然の処置だ。




しかし、玄関から入ってすぐ見える、女性事務官が陣取る受付机の背後にあるのはソビエト旗と同じ赤地だが、中央にデカデカと"双頭の鷲"をあしらった【沿海州旗(ラ・プリモーリェ)】だった。




"双頭の鷲"と言えば、本来はボリシュビキ達に根絶やしにされた筈のロシア皇帝家、【ロマノフ王朝】の紋章として知られる。


普通ならスターリンも共産党も激怒しそうなものだが、沿海州の"盟主"はしれっと、


『"プリモーリェ"が生者が生きたまま冥府に堕とされた場所……【ニヴルヘイム(死者の国)】と同義なら、亡国の紋章を掲げるなんてピッタリだと思いませんか?』


そして機知に溢れた声で、


『しかも下地はソビエト旗と同じ赤……赤い革命に飲み込まれたのか、はたまた自ら流した血で旗を赤く染めたのか……果たしてどちらでしょうね?』




スターリンは、"彼女"の回答に強い自尊心への満足を得たという。


しかし、ターシャは知っていた。

この旗の赤地はボリシュビキではなく"炎"を意味し……


(双頭の鷲じゃなくて……)


「【双頭の"不死鳥"】か……」


ならばそう、沿海州旗は赤熱の炎より再生し飛び出た不死鳥を象った物……


不死鳥は、炎の中から蘇るのだから……何度でも。










**********




「タチアナ・ロジェストヴェンスカヤ特務大尉、出頭いたしました」


肢体(からだ)は小さいが、折り目正しい教科書に乗せたくなるような敬礼をするターシャに、


「おかえり、ロジェストヴェンスカヤ特務大尉。装備テスト、ご苦労様だったね?」


そう彼女を迎えたのは、大佐の階級章を付けた頭に白いものが混じり始めた壮年の男だった。


そろそろ老眼が入りだしたのか?

眼鏡の奥の瞳は人好きのする優しげな物だ。


「労いのお言葉、痛み入ります。同志【シャガール】大佐」


どちらかと言えば、軍事基地などより村役場の庶務課あたりの方がよっぽど似合い、大佐というより村の助役と言われた方がよほどしっくりくるような風貌の男だ。


「僕にできるのは、このぐらいさ。それに"同志"はいらないよ。ここはモスクワじゃないんだ」


だが、沿海州方面軍(プリモーリェ・ダルメ)遣西団ペレストロイカ基地司令官【シャガール】大佐はその勇猛さで名の知られたコサックの一人である。


彼の背後に掛かる、かつての故郷から唯一家財として持ち出された物……【青い盾に三叉戟】をあしらった旗が彼……【レパンティエフ・シャガール】大佐の出自を雄弁に物語っていた。




☆☆☆




約20年前……

赤軍や共産党によるウクライナ・コサックに対する弾圧が開始され、人工的な飢饉とそれに伴う疫病が始まった。


レパンティエフの妻と子も満足な薬品どころか明日の食事もままならぬまま、病に倒れた犠牲者に名を連ね、まるで史実のようなホロドモール(大虐殺)が起きかけた時……


レパンティエフは多くの民を率いてウクライナを脱出、沿海州に辿り着かせ多くの同胞の命と未来を救った。


世に言う【コサック百夜行】の立役者の一人……そんな"武勇伝"持ちだった。




☆☆☆




しかし、レパンティエフは【救民の英雄】と讃えられながらも、自らを「妻子が死ぬまで何ら行動を起こせなかった無能者」と自らを責め続け、沿海州でも失意の日々を送っていた。

だが、


「そんなことはありません! 20年前、シャガール大佐は多くの同胞(はらから)を救ってみせた……私もその一人です!」


そう声をあげたのは、雪よりもなお白い……見方によっては病的にさえ見える白磁色の肌に、少し癖のある黒と見間違えるほど深く濃い闇紫色の髪が好対称を見せる、ターシャとは正反対の体つき……長身でやたらとグラマーな、一縷の隙もなく赤い軍服を着こなす妙齢な女性だった。


特に胸部装甲はマリューシャや、全体的にボリューム不足の軽装甲なミコワルツェ・ヴァレンシュタイン自身ではなく相対した42年式KV-1の正面装甲よりなお分厚く、"色々と挟む"事ができそうだった。




「ミリヤ君……」


ミリヤ……ネームプレートには【ミリヤ・カラシニコヴァ】と書いてあり、ついでに言えば少佐の階級章と参謀憲章をつけた彼女は、


「シャガール大佐……いえ、レパンティエフ様。飢えと乾きで死を受け入れるしか無かった幼い私をおぶり、ウクライナから連れ出してくれたあの日からから、レパンティエフ様の事は片時も忘れた事はありません……」


ミリヤはどこか遠い目をしながら、


「あの日感じた暖かい背中の温もり……今でも昨日のことのようにはっきりと覚えてます……だから!!」


ミリヤは、レパンティエフの手を取り自分の豊満過ぎる胸に押し付け、


「レパンティエフ様、どうか私と結婚してください!! 初めて出逢ったあの日から、ずっとずぅ〜っとお慕いしています!!」


そうレパンティエフと初めて出逢った頃から数えて、通算"101回目のプロポーズ"を行うのだった(あれ?)




☆☆☆




「ミリヤ君、君と僕はそれこそ二十歳以上も歳が離れててね、」


「それがなんだと言うのですっ!! 愛の前には年齢も国籍も宗教も性別も、ついでに性癖も無関係です!!」


「せめて最後は気にしようよっ!?」


「無問題ですっ!! 風の噂だとスオミには、実の父親に劣情を抱き、母親から寝盗る事を本気で画策してる女装甲将校がいるらしいですからっ!! それに比べれば二十歳程度の年齢差など障害にもなりません! 社会的にも許容範囲の内側ですっ!!」


「それどこで聞いた噂!? というかそれと比べたら駄目過ぎでしょ!?」




このペレストロイカ基地の名物(迷物?)バカップルのいつもの掛け合い夫婦漫才(笑)を、ミョ〜に冷めた目で見ながらターシャは、


(なんか、基地司令官と専任参謀兼副官というより、田舎の学校の校長と女教師にしか見えないのよね……何となくだけど)

と平常運転の結論に至ると、


(そろそろ止めようかしら? ミリヤも大佐絡むといきなり知能指数がスツーカばりの急降下爆撃するし)


「大佐、小官は報告書を提出しにきただけなので、他に別命/案件が無いのでしたら退出したいのですが?」


そう切り出してみると、


「あ……ああ! 大尉すまない。実はまだ君に伝えばならないことがあるんだ。ミリヤ君、その話はここまでだ」


基本的に聞き分けのいい娘であるミリヤは、下手に食い下がらず素直に引き下がる。

ただし、決して諦めない。


【不屈不倒】を信条とするミリヤに、"レパンティエフを諦める"なんて回路がついてる訳はない。


レパンティエフの側にいたい一心で、沿海州の士官学校を卒業して入隊し、大尉になった途端に陸軍大学の門を叩き、参謀養成課程を主席で卒業して、見事に彼の副官の地位を射止めたミリヤの根性を舐めてはいけない。


彼女の【個人的二十ヵ年計画】に対する覚悟は半端ではないのだから。




☆☆☆




「新たな伝達事項ですか?」


言い忘れていたが、独立採算(州から予算が出てる?)の噂のある"沿海州方面軍"は、政治将校は存在しない。


その代わりに、軍服が階級の上から下まで"赤"で統一されていた。


この理由に関しては、先ほどの"盟主"……沿海州州自治評議会"筆頭書記"にして【総督府】代表の言葉を引用するのが適切だろう。


『沿海州兵は、既に偉大なる祖国より排除を賜った、言わば"死人"の集まり。どうして生者の物である政治が関係ありましょう?』


一呼吸おいて、


『ならばせめて革命に殉じる意思をこめ、せめて死装束くらいは赤く染めたのでございます』


……

……

……

何とも頭の回転が早く口の巧い"総督"閣下がいたものである。


死者を統計学の数字でしか見れぬ小男は、"彼女"の忠誠と【廃物利用】の巧みさに大きく感心したという。




「ああ。今回の任務をもって、我々は基地人員の全てを撤収、沿海州(プリモーリェ)へ帰投する」


「どういう事情ですか?」


レパンティエフの言葉に疑問を感じたターシャが聞き返すと、


「"新型"が完成したらしいよ? 見かけは、戦車開発局に言わせれば、【クレムリンの阿呆が85mm載せられて喜んでる鉄屑】とは見た目が似てるだけの別物らしい」


ついさっきまでターシャが乗っていた【プリモーリェ・メイドの42年式T-34】もそうだが、可能な限り見た目が似るような【レプリカ】として作られていた。


本来、この手の擬態(カモフラージュ)は敵の目を欺き、誤認や油断を誘うために行われるのだが、沿海州は主に【身内のモスクワに難癖つけられない為の対策】としてやってる辺り、事情が特殊過ぎた。


結果論から皮肉を混ぜて言えば、


【敵を欺くにはまず味方から】


という図式になってるので、大抵の沿海州方面軍人は納得していた。


悩むのは、【欺く味方が敵なんじゃないか?】というプリモーリェ・ジョークが冗談になってないあたりだろうか?




☆☆☆




「それは素直に楽しみですね?」


なんとなく小さいとも凶暴な猫科肉食獣を連想させる……愛らしくも獰猛に微笑むターシャに、レパンティエフは頷き、


「【44年型戦車】に使う技術も、間に合った物は先行搭載されるみたいだし……開発局にいる友人に言わせれば、【虎や豹の狩人】になれるかもしれない代物らしい」


「それはますます楽しみ」


高揚感を無理に押さえ込むように言葉短く返すターシャを、レパンティエフは微笑ましく見ると、


「以上だよ。早く行って部下に伝えるといい。里心が無いわけではないだろうからね」


そう温和な表情で伝えるレパンティエフにターシャは敬礼を返すと、足早に廊下を歩きさった。


レパンティエフが気になったのはターシャよりも、


「まさかレパンティエフ様は幼くて小さい娘の方が……」


とブツブツ言ってるミリヤの方だったりする。


(ターシャ君は、ミリヤ君より1歳年上なんだが……)


それをツッコんだら不思議と負けな気がするレパンティエフだった。








次回へと続く







皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m


なんかいきなり無茶なのが出てきた第4弾、皆様いかがだったでしょうか?(^_^;)

ちなみに、レパンティエフのファミリーネームの【シャガール】はロシア語で【聖人、聖人を助ける者】という意味があり、なんかどっかで聞いたことあるミリヤのファミリーネーム【カラシニコヴァ】は、本来はロシア語で【白パンを焼く人、パン職人】って意味なんです(;^_^A


それにしても、ミリヤは何としても"47年"迄にレパンティエフと結婚してファミリーネームを変えないと、世界中に悪名が広がる罠(笑)


そして、朧気ながら存在の片鱗を見せる沿海州の"盟主"。


今のところはっきりしてるのは、性別が女性であり、なおかつ奸智に長け頭と口がよく回るという事ぐらいでせうか?(^_^;)




さて、【プリモーリェ・ステージ】もとりあえず今回で一区切り。


次回は誰が脚光を浴びるのか?




では、また次回にて皆様にお会いできる事を祈りつつ(__)





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