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FAP01:第01弾 "パンツァー・フォー!!"


皆様、こんばんわ~♪


執筆リハビリ中(?)の暮灘です(^^;


ついに始まりました……というか初めてしまいましたPPG外伝の連載(汗)


短編で書いた物が叩き台ですが、後で読み返すとあまりに作りこみと設定の練り込みが甘かったので、大幅に加筆修正をしてリアップと相成りました。


ぶっちゃけ、乗ってる戦車も違えば、ミコのファミリーネームまで変更されてる罠(;^_^A


いや考えてみるとバーンシュタインって、モロに英語読みなんですよね(笑)


そんな訳でプロイセン(ドイツ)系フィンランド人のミコワルツェは、より"らしい"名前で再デビューと相成りました。




多分、【なんちゃってシリアス】な作風になると思いますが、お楽しみ&ご贔屓願えれば幸いですm(__)m








「ミッコミコにしてあげるっ!」




(とある少女装甲将校の戦場手記に残されていた言葉)










**********




1942年12月、冬……


フィンランド/ソビエト国境地帯


ラドガ湖畔、西岸(ウエスト・バンク)近隣


「ハンナちゃん、装填お願い! 弾種【PzGr39(被帽徹甲弾:APCBC-HE-T)】!」


「ヤボールですわ!」


車長用キューポラにしこまれたビジョン・ブロックから注意深く周囲を警戒していた"車長"の声に、打てば響くように……されど優雅さや気品を損わずに答える、長い黒髪を後ろで結わえた長身の少女。


するとジャイロにより縦横の二軸安定化された砲手用照準機を熱心に覗いていたチョコレート・ブラウンのショート・ソバージュの小柄な少女は、


「ウホッ♪ まさに選り取りみどり! 入れ食いとはこのことッスよ〜☆」


どうやらムードメーカーの彼女らしい台詞に今度は操縦席でレバーやペダルと格闘していた如何にも気の強そうな緩くウェーブがかった紅茶のオレンジ・ペコのような髪色の少女は、


「ユッタ! あんま嬉しそうに舌舐めずりすんなって! こちとら雪に足回り取られないように一苦労だっつーの!」




平常運転と言えばまさにそのままの苦楽を共にした仲間……自分と同じくらいの年代の少女達に頼もしさを感じながら、厚ぼったい冬季戦用パンツァー・ジャケットにフィンランド陸軍"少尉"の階級章を付けた、先程より矢継ぎ早に指揮を飛ばす清潔感溢れるハニーブロンドの髪を肩に触れるか触れないかで切り揃えた少女……


"ミコ"こと、【ミコワルツェ・ヴァレンシュタイン】は、新進気鋭の前線装甲将校としては少し迫力の足りない笑みで、


「サラちゃんのテクなら問題ないよ! ユッタちゃん、むしろその意気その意気!」


そう短く返すと首輪のような咽頭マイクに繋がれたテレフケン社製のゲルマニウム・トランジスタ通信機をオンにしながら、


「小隊のみんな、聞こえる!? 知っての通り……今、わたしたちの祖国は、久しぶりのロシアンスキーの大攻勢を受けて絶対絶滅のピンチだけど……」


ミコは、小柄な肢体に反して強い意思を瞳に宿し、


「それがどうしたって言うの! 数の劣勢なんて、わたしたちスオミ(フィンランド)人にとってはいつものことだよ! だから今度も……」


ミコは一度大きく息を吸うと、


「みんなで命知らずの赤色イワンに"冬の戦争"を教育してあげよっ!!」


彼女の気迫が乗り移ったように、トラック/バス用の6気筒エンジンを2基繋ぎ合わせて生まれた、アメリカ製2ストローク並列12気筒ディーゼル・エンジンが、410馬力の勇ましい咆哮を上げる!




「小隊全車、パンツァー・フォー!!」


その命令と同時にまだ真新しい雪原に踊り出す、この時期のスオミの風景に溶け込む冬季迷彩に塗られた30tを軽く超える鋼の餓狼の群れ……



それは少女達の硝煙と機械油、そして血の匂いにまみれた"鋼鉄の物語"はまだ始まったばかりだった……










**********




どうしてこうなってしまったのだろう?


「世の中は常にこんな筈じゃなかったことばかりだ」


とは少年魔導師の弁だが、確かにもし世が平和なら、きっと装甲に押し込められた少女達は、今頃きっと暢気に女子校に通い、とるに足らないコイバナな最新のスイーツの話題で盛り上がっていたのかもしれない。


だが、彼女達の生まれた場所も時代も悪すぎた。



彼女達が厳冬のラドガ湖畔で砲火の只中に身を曝すには、いくつかの前提があった。


一つはプロイセンを中心とするCETO北部戦闘管区総軍vsソビエト赤軍を中心とした赤色連合軍が史上空前の規模で激突し、ポーランド等の欧州中央を血に染めた


【バルバロッサ防衛作戦(バルバロッサ戦役)】


だ。


1941年12月24日のソビエト赤軍によるポーランド侵攻戦、いわゆる"サタンクロース"から始まった戦いは、結果的にプロイセンとソ連の中部欧州での全面衝突に発展した42年最大と称していい一連の戦いは、補給線が短いというメリットが最大限に生きたせいもあり、辛くもCETO側の勝利(防衛成功)という形で幕を閉じた。


確かにソ連は一時的に息切れを起こし、作戦本部をポーランド東部まで移したが、かといって戦争を諦めた訳では断じて無かった。

つまり、


「正面突破が駄目なら、搦め手から攻める」


という戦力判断に切り替えたのだ。




☆☆☆




具体的に言うなら先ず最初に行われたのは、黒海を時計回りに回り込む"南侵"だ。


だが、意外と言ってはなんだが……


南侵は、フランスとイタリアを中心とするCETO南部戦闘管区総軍の敵味方問わない誰もが【予想外の善戦】により頓挫する事になる。




実はこの二国、確かに陸軍に限れば取り立てて見るべき所はないかもしれないが、中々に優れた防空軍を持ち、またプロイセンを凌ぐ海軍力を保有していた。




そう難しいカラクリじゃない。

ロクな海軍力を持たないソビエトに対し仏伊海軍水上砲戦部隊は、アメリカが対日戦で猛威を奮った


【海上からの陸上施設/拠点直接艦砲射撃】


という戦術を、大規模にそして徹底的に敢行したのだ。




艦艇は言うに及ばず、空陸含めてもまともな対艦兵器を装備してないソ連は、地中海からダーダネルス海峡を通り押し寄せる仏伊砲戦部隊に、なんら有効な手立ては打てなかった。


更に手がつけられ無かったのは、後に合流した【バルバロッサ戦役】では脇役に甘んじていた、プロイセン海軍機動部隊だ。


戦艦の数は劣るが、CETO加盟国では唯一まともに空母を運用していたプロイセン海軍は、艦数の関係から本家米国に比べれば威力も迫力もかなり落ちるとは言え、ロングレンジ(あるいはアウトレンジ)からの海上よりの航空攻撃を敢行し、手酷いダメージと出血を強いた。




☆☆☆




南欧州は古来より、とにかく複雑に陸地に入りくんだ海路と沿岸部の補給路を確保しないと、途端に難易度が跳ね上がる。


例えばアルプス山脈は古来より自然の要害として機能しており、当然のように大規模な機甲兵力の展開や自動車を用いた大規模陸運にはとことん向かない。

また機甲化した部隊であればこそ、人馬の時代に比べても格段に消耗する物資は膨大で、輸送ロジックへの負荷は大きいのだ。




そんな状況にありながらもお膝元の黒海すらも制海権を奪われ好き放題に砲爆撃が連日のように続けられれば、流石に数に物を言わせるソ連でも打開策は打ち出せなかった。


ならばいっそ中近東から中東に乗り出す事も考えられたが……


冷静に考えればそれこそ無謀という物で、下手にアフガニスタン辺りに南下して回り込むように西侵すれば、インドや中東に膨大な権益を持つ"かろうじて中立を保って"いる英国が、今度こそ黙ってないだろう。


主に宗教的心情と植民地経営的な経済観点から、CETOと共産主義者達の武力闘争に関わる事を是としないブリテン人も、自らの"財産"が危機にさらされれば指をくわえて見てる事など有り得ないのだから。


そして如何に巨大な赤い帝国でも、まさか単独世界2位の海軍国を加えて敵に回しかねない判断は、流石に躊躇したのだった。










**********




かくてソ連は南ルートを遂に諦めた。


ならば残るは"北侵"……


つまりスカンジナビア半島の付け根を通り過ぎ、プロイセンの【柔らかい脇腹】を直接叩くという戦術を選択した。


そうなれば守るも攻めるのも、もっとも邪魔になるのは先の冬戦争で攻めきれなかったフィンランドとなるのは必然だった……




☆☆☆




こじつけるなら、これが"歴史の修正力"という物であろうか?


史実では【継承戦争】と呼ばれるフィンランドとソビエトの二度目の戦いは、PPG世界では多少の間をおき、


【第二次冬戦争】


と呼ばれる形で結実した。









**********




史実よりは状況は大分マシとはいえ、それでもフィンランドは苦しい戦いを強いられていた。


何しろソビエト赤軍はかつてより更に大規模に、尚且つ先の冬戦争(第一次冬戦争)では、泥縄式にごく少数の試作型が投入されただけの……だが潜在的には恐るべき力を秘めていた【T-34(正確には後のT-34/76)戦車】を主力とし、それを前面に押し立てつつ怒涛のように侵攻してきたのだ。


その赤軍兵力数はフィンランドの予想を遥かに上回り、単純兵力だけでも6倍強にも達した。


そう、欧州中部や南部での消耗すらも、共産党の驚異的な動員力の前では"致命的損耗"には至らなかったのだ……








**********




しかし、"北の名将"と名高い【カールグスタフ・マンネルハイム】が漫然とこの情況を傍観していたわけではない。


ソビエトの再侵攻は必然と考えていたマンネルハイムは、最大限の準備を行なっていた。


第一次冬戦争でもソ連の侵攻に備え【マンネルハイム・ライン】を建造した彼である以上、一切の妥協や手抜かりは無かった。


それはマンネルハイム・ラインの強化や単純な戦力の増強だけでなく、


【国内をより戦争に適応させる為】


のプロパガンダも含まれていた。


そして、そのプロパガンダを思案中にとあるプロイセン訛りの強いスオミ語を話すアドバイザーは、その一案として……


「戦意高揚の為にプロパガンダ部隊を設営してみては?」


と発言したのだ。

あながち荒唐無稽でも独創的でもない。


何しろプロイセンではとっくに【ブリッツェン・ワルキュリア(雷鳴の戦乙女)】隊と呼ばれる"実戦"を想定した


【美女と美少女だけを集めたアクロバット・エアチーム】


が編成され、日々華々しくプロイセンの空を飾り、プロパガンダに明け暮れていたのだから。




☆☆☆




しかし、同じくエアサーカスを作ったのでは、二番煎じの謗りを受け、宣伝効果は半減しかねない。


そこでアドバイザー……中佐の階級章をつけた伊達男は、


「閣下、別に空に拘る必要は無いでしょう」


「? どう言う意味かね?」


この目鼻立ちに花のあり、知性を他人に疑わせない軍情報部中佐に、若き頃に日露戦争を経験したという戦争の生き字引のような老将が問うと、


「空を華麗に舞う戦乙女も絵になりますが、武骨な鋼鉄の獅子を駆り、地べたで粘り強く戦う乙女もまた、その健気さでスオミ人を心打つと思われますが?」


一瞬の絶句……

マンネルハイムは重々しく口を開き、


「【シェレンベルク】君……君はあらゆる意味で空より悲惨な戦いになるであろう陸戦に、うら若き少女達を戦車に送り出そうというのかね……?」


するとアドバイザーとして列席が許され、半ば幕僚の一人という扱いのシェレンベルク……プロイセン統合軍情報部中佐【ワルター・シェレンベルク】は事も無げに、


「死体は痛みも屈辱も絶望も感じません。何をされてもね」


そう呟きながら真っ直ぐにマンネルハイムを見ると、


「【エルフリーデ・ヴァレンシュタイン】"臨時"少尉」


その名に聞き覚えがあるのか、ビクッと小さく反応する老将にシェレンベルクはうっすらと微笑み、


「プロイセン本国では時代遅れとされていたIII号突撃砲を自在に操り、赤軍戦車を翻弄してみせた"救国のヒロイン"……」


シェレンベルクはまるでタチの悪い冗談でも言うような表情のまま、


「【現代スオミのジャンヌダルク】……既に貴国は、40年の時点でこれ以上ないほど"立派な前例"があるではないですか」




何故に年端もいかぬ少女達は、過酷な戦場に身を投じる事になったのだろうか……?


そして【ヴァレンシュタイン】一族の宿命とは?




それはやがて語られるだろう……


呪いにも似た【血と鋼と硝煙の物語】と共に……






次回へと続く






皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m


中編連載用にリニューアルした【突撃お嬢】は如何だったでしょうか?(汗)


戦車は短編のカスタムではなくノーマルのプロイセンの【IV号戦車改型】になってたりしてます。


ついでにどの作品がモチーフとは申し上げません(笑)が、イメージ的には


車長→車長

砲手→装填手

装填手→砲手

通信手→操縦手


みたいな感じです(^^;




果たしたどこに走っていくか分からない鋼鉄の物語ですが、クナイセンと正反対の主人公適性を持つミコの活躍をご期待いただければ幸いですm(__)m





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