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FAP02:第03弾 "沿海州方面軍(プリモーリェ・ダルメ)"


皆様、こんにちわ~♪


現在、絶賛昼休み中の暮灘です(^^;


さて、あのロシア産の迷コンビが来る前に……


"フッ!"

"ぷすっ"


うぎゃ( ̄□ ̄;)!!?

こ、これは吹き矢……?

しかむ、なんか……強力な睡眠……薬……zzz……


ターシャ

「にゃははは♪ 縛られるのが好みではないようなのでな? 比較的穏健な手段をとってやったのだよ♪」


マリューシャ

「流石に"チェーカー"推奨マーク入り、ベリヤ絶讚の睡眠薬……効果抜群です」


ターシャ

「さて、また会えたな? 同志読者諸君」


マリューシャ

「また会えて嬉しいです」


ターシャ

「さて、今回のエピソードなのだがな。雪上戦のラストと"我らが故郷"のエピソードが入ってるゾ☆」


マリューシャ

「"プリモーリェ"ですね?」


ターシャ

「更には明かされるマリューシャの過去の断片! ターシャ的にはオススメなのだよ♪」


マリューシャ

「お恥ずかしい話ですが……でも、お嬢様との大切な思い出ですから(ポッ)」




な、なんか作者ガン無視のまま二人で盛り上がってますが、お楽しみ頂ければ幸いですf^_^;








カチューシャは村一番の器量良し


幸せになる為に生まれたような娘


やがてカチューシャは恋に落ちて結ばれる


夫は働くしか能がないような無口な男


でもカチューシャは幸せだった


でもカチューシャは幸せだった




やがて軍靴の響きが近づいてくる


カチューシャの無口な夫にも近づいてくる


カチューシャの夫は戦争に行った


祖国とカチューシャを守る為


黙って戦場にいった


でもカチューシャの夫は帰って来なかった


でもカチューシャの夫は帰って来なかった




【とある部隊の行軍哀歌(カチューシャ・マーチ)

と呼ばれている歌詞より




☆☆☆




ただただ壊滅した自分の装甲偵察中隊……正確には、ほんのわずか前まで中隊"だったもの"を呆然と見つめるカロル・アストナージ……


だが、自分が何をすべきか見失った彼の前に、恐るべき"鋼のレヴァイアサン"が停車する。


そう、それは公式的には【42年式T-34】と呼ばれる戦車だった(微妙に違う気もするが……)。


「やっほ♪」


「あ、ああ」


キューポラから上半身を出し、両手に"バラライカ"短機関銃をつがえた、見た目は10歳にも満たぬような幼女……


アストナージは完全に思考が停止した、しかし発狂している訳ではない半分濁った硝子玉のような瞳でターシャ……【タチアナ・"バラライカ"・ロジェストヴェンスカヤ】特務大尉を見上げていた。


「いい歌でしょ?」


「そうだな……」


そう虚ろに答えるアストナージ。


「アンタが、この中隊の指揮官でいいのかしら?」


「ああ……そうなる」


「そう」


するとターシャは何を思ったのかプロイセンの方角を指差し、


「アンタの帰る先はアッチ」


「えっ……?」


鉛を詰め込まれたような鈍った思考のせいだけではない戸惑いが、アストナージの表情に浮かぶ。


「逃がしてあげるって言ってるの」


ターシャはどこか楽しげに、


「ターシャの砲撃から生き残ったアンタの強運、見てみたくなったのだよ。まあ、戯れみたいな物ね」


「戯れ……?」


アストナージの問いに彼女は小さく頷く。


「徒歩で辿り着くにはプロイセンは遠い……先ずは、アンタが雪と寒さに殺されないかどうか」


そしてクスリと笑い、


「よしんば辿り着けたとしても、アンタは部下をターシャに皆殺しにされた"無能な装甲隊長"として生きなければならない」


「うっ……」


アストナージの微かな疼くような感情の揺らぎを見せるが、ターシャはそれを気にした様子もなく、


「ターシャは決してアンタを殺してあげない。"名誉の戦死"なんて死に方を与えてなんてあげない」


ターシャはスゥーっと真っ直ぐアストナージを見ると、


「選ぶといい。雪の中で寒さに震えてのたれ死ぬか、生きて帰ってターシャの"強さの証明"となるか」


彼女は天使のような魔性の笑みで、


「どちらにせよ、惨めな末路しかないけどね」











**********




「お嬢様、宜しかったのですか?」


基地への帰路の途中、何やら色々とターシャとは複雑な事情がありそうなマリューシャこと【マトリューシュカ・キンスコフ】特務軍曹は、ほんの僅かに心配そうに聞いてくる。


「あにが?」


クッキーをポリポリとかじりながら【ヤポン産装備】の目録に目を通していたターシャはきょとんとすると、


「敵を逃がした事です」


「ターシャは狩る価値の無い獲物に向ける銃は、持って無いんだけど?」


「……お嬢様」


たしなめるようなマリューシャの視線に、


「ターシャ達は、あくまでヤポンスキーの作った装備が実戦に耐えうるかテストしてるだけでしょ? なんでわざわざ捕虜連れ帰って政治将校風情を喜ばせねばならんのかね?」


「しかし、きっちりこちらの正体見られましたよ?」


ターシャはフフンと笑い、


「それがどうしたのだ? "この子達"の見かけはあくまで【42年式T-34】。外見で中身がばれる事はほぼないよ」


「ソ連戦車が中隊全車が通信用アンテナ立ててるのは不自然に思われませんか?」


「マリューシャは、本当に心配性なのだなぁ」


「心配もします。お嬢様は私にとって全て……!!」


マリューシャの表情に珍しい事にさっと朱が差すと、


「共産党首脳部への貢がれるだけの、ただの【"入れモノ"人形(マトリョーシカ)】……家や家族どころか、まともな名前すら無かった"浮浪児(ストリート・チルドレン)"が私です」


マリューシャは何かを噛み締めるように続ける……



「共産党の"人狩り"に捕まった私は、散々倒錯性癖者達の性玩具にされ、自我崩壊した後にいずこかへ払い下げられるしか無かった私に外を、光を、未来を!!」


マリューシャはグッと拳を握り、


「【マトリューシュカ・キンスコフ】という名をくださったのは、ターシャお嬢様です!!」




☆☆☆




あまりに無垢な瞳を向けられたせいか、あるいは単に照れたのかターシャが少し赤くなり、


「いや、そこまでターシャに感謝しなくていいってば。ターシャはただ、年下の可愛い女の子が変態どものオモチャにされた後にブタの餌になるのが面白く無かっただけだし」


興味深い事が判明した……


マリューシャの壮絶な過去もそうだが、ターシャの実年齢……


タチアナ・ロジェストヴェンスカヤ

25歳(なんとロシア革命の年生まれ!)


マトリューシュカ・キンスコフ

21歳


驚きの事実である。




「ターシャは自分のやりたいようにやっただけ」


ターシャは真っ直ぐにマリューシャを見て、


「だから、マリューシャもマリューシャの生きたいように生きればいい。それがターシャの望みなのだよ」


「私の望みは、ターシャお嬢様のお側でお嬢様を支え続ける事です。この命果てるその瞬間まで」




迷いの欠片もなく言い切るマリューシャに、ターシャは自分の柔らかい髪を弄りながら、


「マリューシャって結構、頑固だと思うのよ」


「うふふ。誉め言葉ととっておきます」


マリューシャは幸せそうに微笑んだ。




☆☆☆




「と・も・か・く、完全な奇襲だった上にあの茫然自失……万が一にもプロイセンに辿り着けたとしても、細かい情況判断や分析ができてるとは思えないの」


「ですが、こちらが1km以遠から砲撃を加え命中弾を頻発させた事実は?」


「それが雪風がカモフラージュになってる中で判別できるような練度持ちの敵なら、いくらターシャ達も流石に無傷って訳にはいかなかったと思うのだよ」


ターシャに立て板に水の答えに納得したらしいマリューシャは、ようやく安堵の表情を浮かべるのだった。










**********




「おい! 【バーバ・ヤーガ】が帰ってきたぞっ!!」


「【鋼鉄の魔女】達のご帰還だっ!!」


「野郎共! 祝杯の準備だっ!!」




ターシャ率いる【沿海州(プリモーリェ)方面軍司令部直轄"第13特殊戦闘装甲車両実験大隊"】、通称【バーバ・ヤーガ】は、このポーランドに設営されてはいるが、沿海州方面軍の人間だけで構成された特務装甲旅団拠点【ペレストロイカ(改革)基地】の中でも最も人気の高い部隊だった。


見目麗しい美幼女(25歳だが……)に率いられた美少女/美女の装甲大隊なんて、何もしなくても人気が出そうだが、見た目だけでなく実力も揃い踏み……恐ろしく強いのだ。


【バーバ・ヤーガ】は【ポーランド侵攻】や【バルバロッサ戦役】などサタン・クロースから始まる一連の戦いに参戦し続けただけでなく、古くは沿海州方面軍と国民党の突発的軍事衝突【ノモンハン事変】に参戦した女だてらの強者達だ。


オマケに言うなら、生存率や生還率が(赤軍としては)異常に高い。


しかもそれで任務達成率や戦果も高いのだから完璧と言ってもいい……




というのは、表向きの話。


どんな奇跡に見える手品でも手品である以上、必ず種も仕掛けもある。




☆☆☆




実を言えば、これは


沿海州(プリモーリェ)=二度と戻れぬシベリア送り=強制労働+矯正収容所】


という図式が、成立している……少なくとも、モスクワではそう思われてる事が最大の要因だ。


沿海州がいつから機能していたかは諸説あるが、少なくとも1925年には"シベリア送り"、ウクライナを中心に【反革命勢力】の烙印を押された2000万人のコサック達が連行されてきたらしい。


そう、史実では【コサックの大虐殺(ホロドモール)】で歴史の闇へと消えた人々が、ほぼ丸々沿海州に強制連行されてきたのだ。


日露戦争の旅順防衛成功や奉天逆撃による大陸での勝利により、日本人を大陸から叩き出す事に成功したロシア人は、史実では"満州"と呼ばれた地域を丸々手に入れ、それを沿海州と併合する事に成功した。


ただし、日本海海戦の史実通りの敗北と、大陸より全面撤兵を余儀無くされた帝国陸軍の死に物狂いの攻撃で樺太は全島陥落したが、それでも余りあるほどの土地を得たのだ。




その土地は帝政ロシアからソ連に変わっても健在、史実の沿海州に加えて満州を追加した【PPG沿海州(プリモーリェ)】は、それらの人口を飲み込んでもなお有り余る広大で肥沃な大地を誇っていた。




☆☆☆




勿論、彼らは始まりのシベリア追放者であっても、最後の追放者では無かった。


(1)"ミハエル・トハチェフスキー"元帥をはじめ軍の中心となる【史実では粛清】された筈の"高級将校"が沿海州に追放されてきた。


(2)【史実では粛清】された筈の"インテリゲンチャ(知識階級)"が沿海州に追放されてきた。


(3)【史実では粛清】された"ブルジョワジー(資本階級)"が沿海州に追放されてきた。


コサックに(1)(2)(3)の人々は、モスクワでは【死んだ存在】とされ黙殺された。


何故、このような情況になったのかは、もう一段深い手品(魔法か?)があるのだが……


それはまだ今は明らかにすべき時ではない。


ただ、発端は史実には登場しない【たった一人の人物】から始まったとだけ行っておく。




☆☆☆




とにもかくにもモスクワやスターリン一派にとって沿海州は、【ニヴルヘイム(北欧神話に出てくる"氷と死者の国")】と同義語となり黙殺された。


ただ、時折送られてくるかつて羽振りの良かった将軍や学者や資本家が、ボロをまとい農奴そのままに不器用に(くわ)を振るう姿が映された記録映画を見ながら、笑い転げてただけだ。




勿論、実態は全く違う。


コサックは本質的に勇猛で優秀な(つわもの)の素養を生まれながらに持っている。


彼らを近代的に組織化するのに必要な軍人(将官)も揃っていた。


インテリゲンチャはあらゆるステージでアカデミーを開いて研究開発を促進し、ブルジョワジーは財産や資産は共産党に取り上げられたが、頭の中にある交渉術や金儲けのノウハウは誰も取り上げる事はできなかった。




かくて【モスクワから見捨てられた極東の流刑地】は大車輪で動き出し、1940年には沿海州の人口は5000万人を突破し、沿海州のみで資金を出し、兵器を量産し、兵を鍛えた【沿海州方面軍(プリモーリェ・ダルメ)】単独でノモンハン事変でアメリカの支援を受けた国民党軍をノモンハンから叩き出す戦力を得るに至った。




余談ながら、沿海州は単独で国連から脱退した旧大日本帝国と水面下で繋がっていて、終戦のドサクサに紛れて多くの人/物/金/技術/ノウハウが流れこんだと噂されていた。




☆☆☆




日本との繋がりの真偽はともかく、ターシャはそんな【プリモーリェ・ダルメ】の一員であり、ポーランドへは中隊しか率いて無かったが、本来なら戦車だけで60両以上保有する【バーバ・ヤーガ】大隊の隊長だったのだ……









次回へと続く







皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m




ミコ達に比べて降り積もる雪のように終わったスノウ・ガンファイト(?)とマリューシャの過去、そして【沿海州(プリモーリェ)】という史実に存在してはいましたが、PPG世界では全く意味が違う二人の故郷は如何だったでしょうか?(^_^;)




いや~、実はこの【沿海州(プリモーリェ)】こそが、史実とPPG世界を隔てる巨大な"分岐点"や"乖離点"の一つだったりします(^^;




それにしても、やたらに重いマリューシャの過去はともかく、一体ターシャは何者なんだか?(笑)


個人的にはコサックの大虐殺(ホロドモール)やその他の粛清により歴史から消えた人々のPPG世界における生存受け皿になった事が、プリモーリェの今のところは最大の存在意義だと思ってます(^_^;)


今一つ作者自らも次回の展開が読めません(笑)が、また皆様にお会いできる事を祈りつつ(__)





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